狙われた帰宅途上のOL(2)

Novel:峰しずく   Photo:fairy-tale 淫夢  Model:AYAKO

 

 男の行為はあたしが思ったとおりに進捗した。
 ホックをはずす。ファスナーをおろす。
 指先に若干の力が込められた掌がお尻に触れる。

 いやらしく這いずりまわった男の手はあたしのパンティーの形状をしっかりと認識しただろう。朝、身に付けたそれはその後、整えてはいない。時間とともに食い込むに任せている。
 一枚の布は一本の紐状になり、クリトリスから尿道口を経て、膣からアヌスへと刺激を続けていた。おまけにたっぷりとあたしのラブジュースを吸い込んでいる。

 こんな女が男の手技にいっさいの拒みを示さなければオッケー以外の何ものでもない。
 もちろんあたしはもう男が欲しくてたまらなくなっていた。


 男は紐状になったあたしのパンティーを摘み上げた。食い込みが激しさを増す。
 開ききった襞がそれを受け入れ、膨らみきったクリトリスが抵抗した。

 男は少しの間だけあたしのパンティーの上を指でなぞっていた。それは布越しのソフトな愛撫にはなりえなかった。
 紐状になってピンと張り詰めたそれは、あたしの各所にビンビンと電気を走らせた。直接的でねっとりとした刺激ではない。断続的に不意に訪れる快感だ。

 あたしは思わず腰を浮かせた。

 刺激がある度に、下腹部に発生した愉悦が水面に広がる波紋のように全身に広がってゆく。
 脳細胞の記憶に刻まれた性の快感が次のさらなる快感を予感して振るえた。
 しかしパンティー越しの愛撫では限界がある。背骨が跳ねるほどの感覚を味わったかと思うと、男は再びパンティーにそってゆっくりと指を動かすばかりである。
 あたしは焦れた。
 いっそのこと、下着を脱いでしまいたい。
 その時だった。男はあたしのパンティーを指でひっかけてぐいと脇へおしやった。

「あ、来る」

 身体が反応する暇も無い。
 パンティーの上からの探索で男は的確にあたしの性器の形状を把握していたらしかった。

 速攻で指がヴァギナに叩き込まれた。
 それほど奥までは届かない。けれどあたしを悦ばせるには十分だった。ラブジュースが男の指に絡みつく。 ほとんど入り口に近い膣壁に指先が触れただけだったが、あたしは声を漏らすのを我慢できなかった。
 男性器の一番太い部分が今まさに挿入されようとしている瞬間に膣壁の入り口が押し広げられながら擦れる快感。アレを巧みに男の指があたしに与えてくれた。
 力が抜ける。

 浮かせていた腰が座席に落ちた。その分、男の指が奥へと侵入する。
 それが合図だったかのように、あたしの中に差し入れられた小さくて器用に動くそれが激しく律動を開始した。もう限界だった。あたしは不気味男に車内で蹂躙される妄想をやめた。

 ここから先は妄想では進めない。あたしの肉体は直接的な刺激を求めていた。熱くなったそれをぶちこまれて激しく突き立てられたかった。
 それが叶わないならオナニーでもいい。肉と肉の擦れあいが必要だった。

 その願望はかなえられた。
 目を開けたあたしの前に、向かい側に座っていた男が立っていたのだ。他の乗客からは見えないように巧みに下腹部をコートで覆いながら、しかし、あたしの目の前ではだけていたのである。
 あたしが男に対してどんな感情を抱いていたか、全て男はわかっているようだった。
 唇の端を不自然に曲げながらけれど優しい視線であたしを見つめていた。
 そして、腰を前にそっと押し出した。予想以上に立派なモノがあたしの顔に近づいてくる。
 あたしはそれを口に含んだ。


 もう、どうでもよかった。
 深夜、終点近くまでやってきた空いた列車の中で、変態カップルがフェラチオしているのだ。目をそむける者はいても誰も咎め立てなどするはずもなかった。
 関わりたくない、と思うのが普通だろう。
 それどころか、もしかしたら、あたしたちの行為を喜んで見ているかもしれない。

 男はさらに一歩前に進んであたしに近づいた。
 両手を左右それぞれのコートの脇を掴んで広げ、あたしと男の接触部分を隠した。あたしはもう何の遠慮もしなかった。
 口腔内の空気を抜いて男のソレをあたしの口の中の粘膜に密着させた。
 男は何事も無かったかのようにじっと立っている。
 舌を絡ませる。浮き立った血管が舌先に次の行為を合図してくれる。
 本当は男の睾丸もアヌスもたっぷりと弄んであげたかったけれど、それらはズボンの中だ。仕方が無いのでペニスの根元を中心にあたしの右手は活躍した。
 あたしの口の中で男のモノがひくひくと動いた。
 跳ねたがっているのだろうと思ったあたしは、締め付けるのをやめた。
 口の中に少し空気を入れて空間を作る。途端に男のソレはびっくんびっくんしはじめた。あたしは上半身を前後に動かし、ピストンをしてあげた。

「うう…」

 あたし以外の誰にも聞こえない程度の音量だったが、確かに男は声を発した。発射が近づいている合図らしかった。
 けれども、あたしは男の要望にこたえることは出来なかった。降りる駅が近づいていたのだ。終点からみっつ手前の駅。列車はもうスピードを落とし始めている。
 あたしはそっとペニスを口から放し、そっと立ち上がった。

 何事もなかったような顔で網棚の上に載せていた紙袋を取る。今日買ったばかりのセーターと、会社の近所のスーパーで買った食糧が入っている。最寄り駅の傍にもスーパーはあるがこの時間ではもう閉まっているのだ。

 今夜はシチューにしようと思っている。
 列車が停まりドアが開いた。ホームに片足を差し出しながらあたしは振り返った。ポカンとした表情で男はこちらを見ていた。そこまでやっといて途中で放り出すのか、といった表情をしてる。そりゃあそうだ。普通あそこまでやれば、少なくとも口の中で射精にまで導いてあげるのが礼儀(?)だろう。しかし今のあたしの頭の中は、今夜のシチューのことだけでいっぱいだった。チキンとマッシュルームのスープ。

 ホームから改札口に向かいながら、あたしはもう一度振り返った。
 そこには信じられない光景があった。閉まりかけたドアに身体を半分挟まれながら、男が必死で電車から降りようとしていた。

 チラと見た男の下腹部はきちんとズボンの中にしまわれていた。その行為のためにあたしを追うのが遅れたのか、それともドアが閉まりかけてからあたしという獲物を失うのが惜しくなったのか。
 ともあれ降りる気配さえ見せなかった男が必死になってドアから身体を引っ張り出そうとしているのは、明らかにあたしを玩具にするためだった。
 さっきまで妄想にふけり、それどころかこの口で男を受け入れていたあたしだったけれど、その必死の形相に怖くなった。エッチモードから「早く帰宅して夕食を作って」と普通のOL感覚に戻っていたあたしにとって、その男とセックスすることは「和姦」ではなく、もはやレイプだった。
 あたしはダッシュした。

 自動改札機に定期券を放り込み、取り出し口から出てきたそれを慌しくポケットに突っ込む。
 丁寧に定期券入れに仕舞い込む余裕などない。電車のドアの拘束から放たれた男も同様にダッシュしてくる。自動改札機も何事も無くスルーパス。遠方への駅までの定期を持っていれば清算の要もない。

 駅前にいくつかある商店はどれもシャッターを下ろしており、駅舎からの光と数本の街灯の光があるばかりの暗い駅前だ。田園風景の中にいくつかの住宅がある典型的な郊外。自宅のマンションまでは歩いて15分。駐車場完備が売り物のそのマンションは国道沿いに立っているから、電車通勤者には不利だ。あたしももともとは車で通勤するつもりだったのだが、渋滞のひどさに放棄したのだ。そのおかげで暗い夜道を15分も歩かなくてはならない。
 同じ電車から降りた人たちは、男と扉の格闘に目を奪われていたらしく、その後ダッシュしてあたしを追う男に抜かされている。改札口付近に数人の存在が確認できた。
 助けを求めるべきか。それとも一気に自宅まで走るか。
 一瞬で判断しなくてはならない。駅から一歩離れれば、乗客たちはちりぢりになってしまうだろう。助けを求めるなら今しかない。

 しかし「助けてくれるとは限らない。ぐずぐずしていたら手遅れになる」。そう判断したあたしは、自宅まで走る決意をした。幸いスニーカーを履いている。パンプスは会社のロッカーだ。毎日履き替えているのだ。
 判断を誤ったことに気が付くのは、それから間もなくだった。

 あっという間にあたしは男に追いつかれ、手首を握られた。
 そしてそのまま、来年の田植えの時期まで放置されるのであろう地面の上にひきずり倒された。



 遮蔽物が無いので道路からは丸見えだが、野外プレイをしているカップルだと思えば誰も何のリアクションも起こさないだろう。それどころか、そこに人がいることにすら気付くかどうか。ともかく暗い。いや、それ以前に、通行人があればの話である。確実なのは次の電車の到着だ。何人かは降りるだろうし、この道を通る人だって皆無ではないだろう。けれど、それまでに30分はある。


 事実上前戯を終えているあたしたちにとって、それだけの時間があれば十分だった。
 日ごろの運動不足がたたって、田んぼに押し倒された時点であたしはもう息も絶え絶えだった。抵抗する気力も声を張り上げる力も残っていなかった。



 紙袋の中から「ハウスクリームシチューのもと」が地面に落ちた瞬間、あたしはもう夕食のことなどどうでもよくなっていた。再びエッチな感覚が全身に蘇ったのだ。
 地面に叩きつけられたあたしはかろうじて仰向けになって上半身を起こした。

 男は容赦なくあたしに踊りかかってくる。胸を鷲づかみにされ、同時にスカートの中に荒々しく手が突っ込まれた。
 ああ! もう!
 抵抗どころか、あたしはこの後に男から受けるであろう乱暴な行為の数々に期待が膨らんでいくのを感じていた。

 そんなあたしの表情は淫靡に彩られていたはずだ。行為のときにしか見せない一番いい女の表情。男はそれに気付いたのだろう。力任せの行為はそれっきりだった。
 男はあたしのスカートのホックを外し、ジッパーを下げた。乱暴に衣服を剥ぎ取られるシーンを予想していたあたしは拍子抜けだったが、正直言って助かった。服をだめにされたら経済的な損失を伴ってしまう。
 そうなるとあたしも現金なもので、全ての服を守りたくなった。上着を脱いで傍らに置き、シャツのボタンを外した。
 ノーブラの乳首が露になる。服の上から乳房を握られてシャツが皺だらけになるより、直接触られたほうがいい。第一、そのほうがより感じる。
 自ら胸を露出させた女など、レイプの相手としては最高だろう。
 男はコートを脱ぎ捨て、スラックスとトランクスも下ろし、下半身丸出しの状態になった。
 モノは相変わらず熱く屹立している。
 あたしを追って走っている間もしぼんでいたとは思えないほどパワフルな状態だった。


 思わずあたしは股を広げた。

 ううん、「思わず」なんかじゃない。明らかな意思を持って広げたのだ。

 「入れて」と。

 

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