語り部は由美
大学1年生 淫ら(6)





 わたしと羽原クンは、わたし達よりも5分早く出発した2人組みに追いついてしまった。
 わたし達は決して早足で歩いていたわけではなかった。普通の肝試しなら、所定のルートをさっさと辿り課題を果たし、一刻も早く恐怖から逃れようと早足になるかもしれない。けれどわたしと羽原クンは肝試しにつき物の「恐怖感」など微塵も感じていなかった。むしろゆっくりと歩いていた。お互いにちちくりあいながら。
 歩くスピードが速くなる道理などない。
 にも関わらず、前を行くカップルに追いついたのだ。先行の2人組みがどういう状態なのか想像するのは容易だった。

 隣を知らん顔をして通り抜けるのはおろか、近づくのさえはばかられるような雰囲気だった。
 わたしと羽原クンは足を止めた。お互いにしっかりと手を握り合った。
 わたし達の足音が途絶えると、風が木々を揺らす音がまれに聞こえるだけ。あとはピチャぺチャと先行2人組みが発するいやらしい営みが耳に届いた。
 フェラチオの真っ最中だ。
 2人の足元には懐中電灯がひとつ。その灯りが暗闇の中で彼と彼女をぼんやりと浮かび上がらせる。
 たまらなく淫靡だった。
 性器の奥からゾクリとした感覚がこみ上げて、すぐに全身を取り囲んだ。愛液がじくじくと分泌されるのが自分でもわかった。

 木々の間を縫って常にやわらかなアップダウンを伴いながら続いている逍遙路。昼間なら森の香りで肺を満たしながら歩くのにぴったりだ。
 でも、わたしの鼻腔の奥に侵入してきたのは、そんな爽やかな香りではない。性器特有の匂いがつんとわたしを刺激する。
 先方の2人が発するものなのか、わたし達のものなのか判断がつかない。この下世話な顔をそむけたくなるような臭気も今は興奮を高めるエッセンスだ。

 羽原クンはわたしのパンティーの紐を解いた。ふわりと布が下がり、わたしの膝で止まった。羽原クンは中腰になってもう一方の紐もほどいた。羽原クンはわたしのパンティーを掌の中で丸め、自分の尻ポケットにねじこんだ。わたしは無防備になった。
 羽原クンはズボンのジッパーを下ろし、わたしの手をその中へと導いた。彼はパンツをはいていなかった。燃えるようなペニスがそこには直立していた。鋼鉄のように固くなったそれをわたしは無理やりズボンの外に引っ張り出した。その途端、彼はわたしの腰を両手で掴んで引き寄せ、力強く突き上げられた。あっというまに挿入されたのだ。
 タップリ濡れていたとはいえまだ十分に開らききっていないわたしのアソコは、無理やりっぽい挿入にミシミシと悲鳴を上げながら、しかし同時にわたしのまんこは彼を引っ張り込んでいた。

 急激にせりあがってくる女としての快感。けど、いつもと違う・・・。

 夜とはいえ、わたし達以外には人通りがないとはいえ、屋外の、それも往来のある道の真ん中。そんな異常なシチュエーションのせいもあったが、それだけではなかった。
 わたしはどこか冷めた感覚を残しながら視界の片隅に5分前に出発したふたりのフェラチオの様子を観察していた。いつものわたしなら、身体が浮き上がらんばかりの勢いで突き上げてくる羽原クンの攻めに夢中になっていただろう。
 なのになぜ先の2人の行為から視線を外すことができないのか、わたしにはわからなかった。手の届くほど近い距離ではない。けれど、動きのディテールがわからないほど離れているわけではない。声をかければ十分に届く間隔。そこで営まれている肉欲な行いはたまたま同じ場所を選んだカップルなどではなく、普段から顔を合わせている仲間。
 そういう色々な要素が加わっていたからだろう。
 
 緩やかなカーブとアップダウンで構成された木々の間をぬう逍遙路は、大人3人が手をつないで歩ける程度の広さしかない。
 その真ん中に立ってチンポを出しているのは、2回生の参堂さんだ。背はあまり高くないけれど、がっちりした体つきがパワフルなセックスを連想させる。
 わたしと羽原クンはここまでの行程でいわば前戯に相当する触りっこをしていた。そして、とりあえずこの先へ進む事が出来なくなったところで最後の一線を越えた。
 けれど、前の2人はここではじめてエッチな行為に及んだのだろう。二人の着衣は乱れている様子がない。ただ参堂さんがペニスを露出させ、同じ2回生の愛子ちゃんがそれを一生懸命咥えていた。
 彼女は地面に膝をついて参堂さんの腰の高さに自分の口を持ってきていた。大っきな瞳と厚めの唇がいつも潤んでいて、妖艶だ。エッチなことばかり考えているとあんなふうになるのだろうか。最近、わたしもそうなってきているらしいけれど。
 彼女とは以前一緒にシャワールームを使ったことがある。服を着ているときはどちらかというと痩せているのだが、裸になると女の子らしい皮下脂肪がちゃんとある。艶のある肌がぷるぷると震える。触れればひたっと吸い付いてきそうな肌だ。こんな肌、男の人にはたまらないだろうなと思う。小さいけれど形のよいオッパイが身体の振動にあわせてプルプルと震える。
 
 羽原クンがペニスを抜いた。立ったままパワフルに突き上げ続ければ男の人だって疲れてくるだろう。
 わたしは四つん這いになって彼を受け入れようと思った。
 けれど羽原クンはわたしが地面に手をつく間もなく、男根から開放されたアソコに指で悪戯を始めた。
「あ、ふう〜ん」
 思わず声が漏れ、彼の肩に顎を預けてしまう。
 これでわたしの感じるところを指でクチュクチュされたらたまらなくなっちゃうよ。
 そうおもったけれど、彼は一気に攻めてくるようなことはしなかった。言葉を操り始めたのだ。
「いきなりだったから入らないかなと思ったけど、もうドロドロなんだね」
 わたしのアソコのいやらしさを彼は指摘する。
 わたしは彼のを手で愛撫しながら、「羽原クンもすごく濡れてるのね」と言った。液体の絡みついたペニスの先端はぬらぬらと懐中電灯のかすかな光を反射し、先端からタラリと垂れ下がる糸粘液のすじはまるで納豆の糸。
「俺、濡れやすいんだ。だからまだ濡れていない女のアソコにぶち込んでもやれるんだぜ」
 思わず「今度それでレイプして」と返事していた。
 わたしは糸状のぬめりを掌ですくい上げ、それをペニスに塗りながら指で彼のものを弄んだ。
「うう。たまんねえ」
 彼はわたしのお尻の方から手を回し、指先を前後に動かし始めた。
「あ、ああん、感じるう」
 気持ちいい。とても気持ちイイ。
 だけど、後ろから指をまわしたせいなのか、それともわざとそうしているのか、クリトリスに届かない。そのかわり執拗にアナルをマッサージしてくる。
 お尻の穴狙いだな。
 アナルはいじられるのも挿入されるのも大好き。だけど、男の人から攻撃してくれないと、なかなかこっちからは言いにくいものだ。
 触れるか触れないかの微妙な感覚でお尻の穴を指紋が円を描いて滑っていく。
 かと思うと、クンと力が入って肛門が押された。
「う、あ」
 わずかに指先が穴に滑り込む。肛門壁に微妙な振動を与えながら指はすっと外に出て行く。
 いやああん、そんなに丁寧に愛撫されたら、お尻の穴がすぐに開いちゃうよ。
 わたしのアナルはいったん開くと、おちんちんを受け入れる程度には開きっぱなしになってしまう。アナル慣れしているのを男の人はすぐに察知できる。・・・・恥ずかしい。これまで一度もしたことのない相手にそれを悟られるのはとても恥ずかしかった。
 愛撫の際に与えられる刺激は少しづつ強まっていく。
 かすかな指の出し入れが繰り返される。その都度、わたしの肛門は開き加減を増してゆく。
「う! あ!」
 ぐーん、と指が押し入ってきた。
 一本・・・二本・・・、指がわたしの直腸に入ってくる。
 
 参堂さんと愛子ちゃんはフェラを中止して「おーい」なんて言いながらゆっくりこちらに近づいてくる。わたし達の存在にいつ頃から気がついていたのだろうか。羽原クンのちんこを握っているのはいいとして、一方でわたしはお尻の穴に指を入れられて感じている。その姿を見て二人はどう思うだろう。
 思考が頭の中をぐるぐると回るけれど、もちろんちゃんとしたなんらかの帰結にたどり着くわけではない。
「見せつけてやろう」と、羽原クンは言った。
「え? いいけど・・・」
 野外、人前。
 とっても興奮するシチュエーションだけど、ベンチもなければ、舗装道路でもない。
 こんなところに転がされたりしたら、砂利や小石で痛そうだ。
「どうするの?」と、わたし。
「俺の上に座れ」
 羽原クンは胡座をかいて座った。彼はズボンを穿いたままだったが、それでもお尻は痛いだろう。わたしと地面の接触がないように気遣ってくれるのが嬉しかった。
 ズボンのファスナーからはギラギラ濡れたペニスがそそり立っている。
 なるほど、この上に座るのか。
 参堂さんと愛子ちゃんはとっくに私達の所にやってきて、濃厚なキスをしながら横目で私達のことを見ている。乱入しては来ない。けれどそれもタイミングを見計らっているに過ぎないだろう。こんな状態でいつまでも相互観察ではすまされまい。
 わたしは羽原クンの上に座り、ヴァギナの入り口に彼のちんちんの先端が触れると、ゆっくりと腰を沈めた。
 参堂さんと愛子ちゃんはキスをやめた。視線の先はわたし達の結合部分に注がれている。
 ああ、もっと見て。これからわたしたち、挿入するの。
 ズブリ、という音が回りに響きわたるような錯覚がしたのは、既に恍惚状態に入りつつあるからだ。膣壁に彼のチンポがにゅっちゃりと絡みつき、わずかな摩擦が快感となって駆けめぐる。
 
「ひ、あひい〜〜」
「なんだよ、この程度で感じてるのか?」
「うん、気持ちいいよう」
「だったら、自分で動いてみな」
 わたしは腰を上げたり下ろしたりした。
 羽原クンも声を出し始める。
 悦楽が意識をもうろうとさせる度に、足と腰から力が抜け、ドスン、と彼の上に座り込む。ペニスの先端が子宮口をぐいと突き上げる。
「あ、はあん、いい、ああ、感じるう〜」
 下になって動きにくいはずの羽原クンも、必死になって腰を前後動させる。微妙なペニスとヴァギナの擦れ合いが震えるほど気持ちいい。
「ね、ねえ、出そうになったら言ってね、お願いだから」
 この態勢では、男の子の意志で膣外射精はとてもしにくい。女の子の方が立ち上がるのが無難だ。
 
「白けたこと言ってるなよ。中で出すに決まってるだろ!」
 ドスの効いた声で言ったのは羽原クンではなく、参堂さんだった。
 わたしの目の前に参堂さんはぐいとペニスを突き出してきた。
 わたしは参堂さんの両手で頬を挟まれ、ペニスをくわえ込まされた。
 いきなりだった。
 ああ、何てひどいことをされるんだろう。
 そう思うと、ますますエキサイトに興奮してくる。
 もう、どうなってもいいや。

「わたしをペニスとザーメンでぐちょぐちょにしてえ!」

 わたしは思わず叫んでいた。
 叫んだ為にくわえたチンポが口から勢い良く跳ねた。歯に引っかかった後、ペニスはわたしの歯茎と上唇の間をなぞってから唇をまくり上げるようにして飛び出し、鼻を下から上へ叩いて、外へ出た。しぶきが右目にはいった。
 まばたきをすると、上下の瞼にスケベ液のブリッジが出来て、視界が悪くなった。
「お、これはなかなか」
 目の上下にスケベ汁の橋が渡された様子を見て、参堂さんは興奮したらしい。
 ペニスを下から上にしごき上げて愛液を先端部分に集結させた彼は、わたしのもう片方の目にちょんちょんとあてがった。
 わたしは両目をつぶされた。視界をすっかり奪われてしまった。
 ああ〜、なんて官能的なの。
 目がセックスの道具になるなんて思ってもみなかった。
 腰から突き上げる快感と、再び口に戻ったペニスをしゃぶる幸せを全身に感じながら、わたしはめくるめく恍惚に細胞をバラバラにされそうだった。