杜の庵
エピソード3 振り向けばいつもあなたがいた

 

 ログハウス「杜の庵」はバスの終点。片道2時間。雄大で深い森の中にバス停と「杜の庵」がある。
 バスは一日3往復。最終バスの運転手は「杜の庵」で宿泊し、翌朝の始発便として帰っていく。
 朝が早いので「杜の庵」の主(あるじ)と妻は、始発バスを見送ることはしない。
 しかし数日前から愛らしい少女のお見送りが始まった。
 山科恵、19歳。だが第一印象は15か16に見える。
 熊のようなあるじに見送られるのはゴメンでも、恵が一生懸命手を振るのをミラー越しに見るのは運転手にとっても思わず笑みが漏れそうになる一時だった。
 数日前、恵は先のことを考えずに「一番山深くまで行くバスは?」と訪ねてこの路線に乗った。
 まさか終点で宿泊して、もう戻らないとは考え及ばなかったようだ。
 その時運転手に口添えしてもらって「杜の庵」の客となった。ドライバーが口添えしようとしまいと、その日は満員でなかったから泊まることが出来たし、満員だったとしたら泊まれなかった。
 でもそれなりに感謝をしているようだった。毎朝の見送りは恵のささやかなお礼の気持なのかも知れない。
 半ば遊びながら青春を謳歌し、ノートのコピーを友達とやりとりして出席と単位を要領よく取る。そんな大学生活に疑問を抱き、せめて自分で選んだ授業だけはまじめに出席しようと決意したものの、勉学や研究にも没頭できるだけの興味を得られず、中退を決意した恵。
 不器用と言えば不器用だし、正直と言えば正直だった。
 自分に対して嘘をついたり誤魔化したり出来ず、妥協点を見いだすこともできなかった。
 純粋だが、純粋すぎて傷つくほど弱くもない。
 その純粋さと向き合いながら、不純なことばかりが多い世の中で、この先どうやって生きていくのか。
 それを探すための旅。
 恵の1人旅を「杜の庵」の妻はそんな風に解釈していた。だから好きなようにさせていた。
 「あなたの何もかもを包み込んでくれるような彼が出来るといいのにね」と、妻。
 「それは無理ですよ。だって、自分でも自分のことが理解できないんですから」
 「理解じゃないの。ただ、大きなもので包み込むだけ」
 「よく、わかりません」
 「いいのよ。しばらくここにいたらいいわ。ここは大自然があなたを包んでくれる」
 「杜の庵」の主要な商いは「喫茶」「軽食」である。ドライブの途中、深い山中にログハウスを見つけて立ち寄る家族連れやカップルが、客のほとんどだ。泊まりの客はあまりない。
 宿泊用の客室もたった三室。そのうちひとつはバス会社が年間を通じて借り上げているから、実質2室しかない。
 さらに残りのうちの一室を恵が占拠してしまった。
 毎日の稼働率が66%という、「杜の庵」とっては驚異的な数字が続いた。
 それはそれでめでたいことだけれど、あと一組しか客を受け入れられないとなると不安でもある。
 場合によっては相部屋でもいいと恵は言ってくれているが、まさしく恵のように予約もせずバス事情もわからず、ふらりとやってくる客もまれにあるからだ。
 「長期滞在はいいけれど、宿泊料だって安くないし、どうだろう、恵ちゃん、居候ということにでもしないか?」
 主が珍しく懐具合を心配する台詞を吐いた。妻に言われたからだ。
 心の奥に沈殿したものを客が自ら語るのは聴くが、主にとってはそれ以上でもそれ以下でもない。人は語れば心が軽くなる。主はそれを無意識のうちに客商売に応用しているだけなのだ。だから主から客の方に何かを積極的に提案するのは、妻に言われたからとはいえ、とても珍しいことだった。
 「それはとてもありがたいんですが。いいんですか?」
 「構わんよ。そのかわり、居候らしく仕事も少しは手伝ってもらうが」
 「いいですよ。退屈しはじめていましたし、お金も心細くなってきて、明日あたり街に出てお金をおろそうかとか考えていたところでしたから」
 妻は恵の財布の中を覗いたのではないか、と主は思った。
 「じゃあ、さっそく裏のコンテナ倉庫を整理してくれ」
 「わかりました。。。。でも、どんな風に?」
 「コンテナ倉庫はふたつある。片方は俺の書斎にしようと思って窓も開けたし水道も引いたしエアコンもある。けど、結局倉庫になってる。そこのがらくたをもうひとつの倉庫に放り込んでくれればいい。そうすれば、恵ちゃんの部屋として使えるだろう?」
 恵の表情がパアッと輝いた。
 「部屋がもらえるんですか?」
 「そうだ。火事にさえならなければ、どう使ってくれてもいい」
 「ありがとうございます。じゃあ、さっそく」
 「鍵はこれ。左側の書斎コンテナが、ええと、どっちだったかな。ま、開く方で開けてくれ」
 キーホルダーに下げられたふたつの鍵。どちらも似たようなものだった。
 「はい、わかりました」


 その日やって来たのは、あまり存在感の無い線の細い女性だった。
 恵は生き様に対して確信が持てなくてフラフラしているが、とてもしっかりした存在感がある。
 それにくらべてその女性客は存在そのものが何かの拍子に揺らいでしまいそうなほどだった。
 「ご予約の通り、2泊でいいんですね」
 バスから降りた彼女に主は念を押し、線の細い女性は消え入りそうな声で「ええ」と答えた。
 一瞬背筋が凍り付くような感覚に襲われたが、それはまあ主の錯覚だろう。
 宿泊業というのはありがたいもので、宿帳というのが存在する。住所、電話番号、氏名、年齢などの他、勤務先などの記入欄まである。空欄のまま提出されれば問いつめたりしないが、あまりそういうことはない。
 それよりも全くのデタラメを書かれることの方がやっかいなのだが。
 いずれにしても「正しい」申告であるとするならば、客の素性がある程度わかる。
 車で来たくせに酔っぱらってしまい、酔いが醒めるまで水ばかり飲んで長居をする客や、何者かわからない不気味さを漂わせながらからんで来る客など、日帰り客の方が千差万別。その素性など知りようもないから、やっかいなことが多数ある。
 通常の倍も手間がかかったからと言って、コーヒーの料金を倍額もらうわけにもいかず、ただもう憤懣を抱えて飲み込まざるを得ない。
 そう思えば、たとえ幽霊のような存在でも、宿帳が正しく記入されている限り、確かに存在する客である。
 第一印象による先入観で客を判断するなんてもってのほか!
 というのは客商売の基本的な心得なのかも知れないが、長く続けていれば「第一印象」でほぼ「普通の客」か「やばい客」かの区別は付くものである。
 それにしても、と主は思う。
 本当に幽霊でも見ているようだ、と。
 いわゆる「普通の客」でも「やばい客」でもなさそうだった。
 彼女は「山本陽子」と宿泊者カードに記入した。年齢は28歳だった。
 主は「陽子」という名前に皮肉なものを感じた。


 受付後は、山本陽子の世話はもっぱら恵がした。
 主に命じられたわけではないけれど、「今日から居候させてもらうんだ」という気持がそうさせているのだろう。
 妻は好きにさせておこうと思った。
 恵は陽子を部屋に案内し、食事の時間を告げた。
 食事の時間になると、配膳もした。
 妻は厨房から食堂をそっと覗き込んだ。配膳は妻が思ったとおりになされていた。恵は既に何度か「杜の庵」の夕食を食べている。食器の向きや並べ方など、すっかり覚えているようだ。
 「どうぞ、お召し上がり下さい」
 そういって恵は引っ込んだ。
 今夜から恵は厨房の片隅の食卓で、主や妻と一緒にまかないを食べる。今日からは客ではないのだ。
 「あの。。。」と、陽子が恵を呼び止める。
 「はい」
 「あの、人に聞いたんですが」
 「なんでしょうか?」
 「ここでは、ご主人が、色々な話を聞いて下さるとか」
 「そうなんですか」
 恵にはどう答えていいかわからなかった。確かに主はひとに話させるのが上手だと思うし、それがこの宿の魅力のひとつだとは思う。けれど、それを売り物にしているわけではないような気がするのだ。ここは、単なる宿屋、だ。
 「どうぞごゆっくり」
 そう言い残して恵は立ち去ろうとした。でも、出来なかった。陽子がすがるような目をしていたからだ。
 「え、あう。。。」
 恵は金魚のように空いたままの口をぱくぱくさせた。仕事を手伝うにしても、これからは裏方に徹しようと思った。接客に出たことを後悔した。どう対応していいかわからない時はどうすればいいんだろう、何てことまで考えてしまった。
 「いらっしゃいませ」
 助け船のように主が現れた。
 相変わらず髭もじゃのむさくるしい面相だが、恵には登場のタイミングが実にスマートに思えた。
 厨房の中で妻が主の背中を突っついたなんて事、恵は知らない。
 「食が進まないようでしたら、まずこちらを食前酒にどうぞ。当店からのおごりです」
 ワイングラスに薄緑色の液体が揺れている。
 「これは。。。?」
 「ヨモギのお酒です」


 山間の盆地だった。
 見上げた空は見事な夕焼けだった。太陽そのものは山影に隠れてもう見えない。
 わたしは弟を探していた。
 見慣れない田舎の風景。わずかな時間の流れと共にどんどん影が濃くなり、暗闇が忍び寄ってくる。
 急に風が強くなり、ざわめく音達。草と草、枝と枝、葉と葉。色々なものがこすれ合い、聞いたこともない動物や鳥達の泣き声が地を這うようにして耳に届く。
 わたしは肩をすくめた。
 弟はどこへ行ったんだろう?
 ここは都会じゃない。日が暮れると本当に真っ黒になる。
 わたしと弟は両親に連れられて、おじいちゃん家に遊びに来ていた。
 わたしは高校3年生。弟は、生きていれば中学2年生。
 何故その時、わたしは弟が生きているような気がしたのだろうか。
 錯覚にとらわれていたのだ、と言えばそれまでかも知れない。わたしは家を出たときから親子4人ずっと一緒だったと思いこんでいた。おじいちゃんの家につくやいなや弟は自然あふれるこの地を駆け回り、そしてとうとう夕方になっても帰ってこない、だからわたしは近所を探し始めたのだった。
 あ、神社。
 直感とでも言うのだろうか。私は不意に「神社」という単語を思いついた。弟は神社で遊んでいるに違いない。一人かも知れないし、いつの間にか友達を作って一緒にいるのかも知れない。ともかく神社へ行こう。
 神社は町の終端にある。そこから先は山道だ。だからもし弟が神社にいなければ、そこから引き返してくればいい。 そう遠くはない。歩いて15分程度のところだ。しかしいったん家並みが途切れることと、道がわずかながら細くなりそして上り坂になること、また境内そのものがうっそうとした森に囲まれていることなど、色々な要因でとてもそこは心細い場所だった。
 神社まで確かに15分でついた。 夕暮れと共に吹き始めた風が頬と髪をなぶり、私は背筋をブルルと震わせた。
 境内には誰もいなかった。誰もいなかったけれど、目には見えない魔物がそこここにたむろしているような気がした。
 わたしは2・3度大声で弟の名前を呼んだ。
 返事はない。
 (やっぱり神社ではなかったんだ)
 私は引き返そうと思った。
 ただ、その前に。社の後ろを覗いてみようと思った。
 社の裏側はこれといった広場はなく、人影もなかった。けれども、気配だけを感じた。
 遠くの方でザワザワと木々のうごめく音がして、それが徐々に大きくなりながら近づいてきた。
 突風だった。
 両足を踏ん張ってあわや持っていかれそうになる身体をしっかりと支える。
 一瞬目を閉じたせいだろうか、突風をやり過ごして再び目を開けると、暗闇がさらに迫ってきていた。
 その時、わたしはフト気が付いたのだ。弟が死んでいることに。
 ところがわたしは弟の声を聞いたのだ。
 「お姉ちゃん」
 「カオル?」
 「僕だよ」
 「どこ? どこにいるの?」
 「お姉ちゃんのすぐ側にいるじゃない。わからないの?」
 わからない。
 見回したけれど、わからない。
 「探しに来てくれたんでしょう?」
 「そうよ。もうこの世にいないカオルくんをね」
 「ありがとう、思い出してくれて」
 「ううん。思い出したんじゃないの。カオルが死んだこと、わすれていたの」
 「へへ、変なの」
 わたしは中学2年生のカオルを知らない。でも、わたしは明らかに中学2年生のカオルを捜していた。
 今は中学2年生のカオルを想像することは出来ないけれど、さっきまで、カオルを捜していたときの私は確かに中2のカオルを頭の中にごく自然に思い浮かべながら探していた。
 ざわざわ、ざわざわ。
 暗闇が夕闇を浸食してくる。
 「お姉ちゃん、元気してる?」
 「うん。一応ね。大学受験が時々元気を奪うけれど」
 「僕は元気だよ」
 元気だよって、カオル、あなたは既にこの世にいない。
 それとも、わたしの認識が間違っているの?
 「志望校に合格出来そう?」
 「さあ、どうかしら」
 「お姉ちゃん、勉強している時間は長そうだけど、集中力無いから」
 「カオルは要領よかったからね」
 「青芝さんとの仲はどうなったの?」
 「残念ながら、別れてしまったわ」
 「そう。新しい彼氏は?」
 「それも、残念ながら。でも、演劇が続けられそうだから、彼氏作っている暇は、なさそう」
 「演劇? 演劇部?」
 「うん。3年生になって引退なんだけど、就職とか進学が決まって落ち着いたら、アマチュア劇団作ることにしたの」
 「へええ。それはいいけど、お客が来るかなあ?」
 「来なければ、カオルにもチケットをさばいてもらうわ」
 「僕には友達いっぱいいるけど、客席は埋まらないよ。みんな魂だけだから。それでもお金取る?」
 「当たり前よ」
 「じゃあ、行かない」
 「どうせ勝手に来るくせに」
 「気が向いたらね」
 「お姉ちゃんの友達に、めちゃくちゃ霊感の強い子がいるから、来たらすぐわかるわよ」
 「でも、僕たちお金なんて持ってないよ」
 「あ、そうか」
 会話を続けているうちに、わたしはすっかり弟の死を認め、受け入れていた。
 といっても、一時的に弟が生きているという錯覚に陥っていただけで、弟が死んだという事実はとうの昔にわたしは認識していたはずだった。
 暗闇はどんどん深くなり、深くなるにつれわたしは弟との距離感が無くなっていった。
 「ねえ、お姉ちゃん」
 「ん?」
 「がんばってね」
 「え? 何を?」
 「何をって、全てだよ」
 「あ、全てね」
 「月並みだけど、僕の分まで」
 「わかってる」
 「ありがとう」
 ありがとうって?
 どうしてそんなことをいうの?
 わたしにとっては、それは、当然のこと。
 。。。。。あれ?
 急に弟の気配が消えた。
 ただの深い暗闇だけがわたしのまわりを取り囲んでいた。
 神社の、裏の、暗闇。
 風の、音。
 急に気温が下がり、さらに風が体温を奪う。けれども、わたしが身震いしたのは、たったひとり暗闇に取り残された恐怖に寄るところが大きかった。
 不安が心の襞に忍び寄る。
 帰らなくちゃ。
 早く帰らないと、お父さんもお母さんも心配している。
 一人で帰れるだろうか?
 人気のない、暗い道を。
 一歩動くと、恐怖がわたしのまわりにまとわりついてくる。
 ネオンと友達に囲まれた夜遊びとは違う。こんなにも暗闇が本質的な恐怖を包含しているなんて、今までまるで気が付かなかった。
 足音が、自分の足音が、不気味に響く。
 帰らなくちゃ。いつまでもこんなところにいたら。。。。
 わたし自身が抱く恐怖心に全身が包まれてしまう。そのうちきっと一歩も動けなくなるだろう。両親だって心配している。
 弟は、すぐ側にいたはずの弟はもういない。
 あって当然のものが何の前触れもなく消えてしまったときの虚無感。心にぽっかりと穴が空いたという感じ。
 弟が死んだときに抱いたのと同じだ、とわたしは思った。
 日々の暮らしの中で、次第に記憶から薄れていく弟。
 カオルは「忘れないで」というメッセージを届けにやってきたのだろうか。
 ああ、早く帰らなくては。本当に一歩も動けなくなってしまう。
 右足をあげる。地面から足の裏を上げるときに音がする。靴の裏についた砂がはがれる音がする。その砂が地面に落ちるとまた音が。
 そのひとつひとつの音が、もののけのようなものを誘うような気がして、わたしはその度にビクビクした。
 そして、足を地面におく。また、音。
 次は左足。
 だめだった。もう足が上げられない。
 踵をわずかに浮かそうとしたときに、聞こえるかどうかわからないほどのかすかな物音が、わたしを凍らせた。
 とうとうわたしは動けなくなってしまった。
 月が雲に隠れて一部の隙もない真の闇が訪れ、雲が流れてまた月明かりが漏れた。
 忍び寄る闇の最後の一線を月は守っていてくれたのだった。
 今しかないと思った。
 神社から15分。走れば半分くらいになるだろう。再び月が雲に隠れるまでの間に動かなければ、わたしはもう機会を逃してしまうだろう。
 息を潜めて身体に力をためる。
 足を踏ん張る。
 さあ、走るぞ。
 気合い十分に地面を蹴った。
 つもりだった。
 一歩も動けなかった。


 両親の声がした。いつまでたっても戻らないわたしを探しにやってきたのだった。
 その途端、金縛りが解けたように、わたしの足は普通に動いた。

 「本当は弟さんはやっぱりその場にいたのよ」
 恵が言った。右手にはクッキーが、左手にはワインの入ったビールグラスが握られている。
 「それでね、死んだ自分がいつまでも生きているお姉ちゃんと喋っていたらいけないと思って、一度は去ろうとしたのよ。でも、名残惜しくて、結局、ご両親が探しに来るまで引き留めていたんだわ」
 主はにやにやしながら恵の話に耳を傾けながら、やさしげな視線を陽子に注いでいた。
 「不思議な体験ね。夢で見たお話を伺っているみたい」と、妻が言った。
 「そうなんですよ。まるで夢のよう」と、陽子は応じた。
 「山本さんが高校3年生、弟さんが生きていれば中学2年生。それって、どれくらい前の話なんですか? あ、歳がばれちゃいますね、ごめんなさい、差し障りがあったら教えてくれなくていいです。興味本位で聞いただけだから」と、恵。
 「いいえ。差し障りはないわ。けれど、信じてくれるかしら」
 「え? それって、どういう?」と、恵。
 「きっと、信じて下さらないわね。つい、三日前のことなんですよ」
 「み、三日前?」
 陽子は妻が入れ直してくれたコーヒーを一口すすった。
 「わたし、今、28なんです。でも、三日前、確かにわたしは高校生だったの。その体験の前後の記憶はないんです。だけど、寝ていて夢を見ていた、というのでもないんですよ、もちろん」
  


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