アスワンの王子
王宮の3 案内人





 

 ガブリエルと15号にかわるがわる犯されたヨウシャは、いったい何度イッただろう。身体はヘトヘトに疲れていた。
 昨日の朝、ガズーの店を出てから、ずっと旅を続けてきた。休憩らしい休憩を取らずに辿りついた黄金門。そのまま門の先のトンネルに入ろうとして、結界に弾き飛ばされた。
 やがて夜が来て、食事をとり、ようやくまどろんだ。しかし、ガブリエルと15号による強姦によって目を覚まし、まだ体力が回復していない状態で、それから延々と犯されつづけて来たのである。本来ならゆっくりと眠っている時間に。ヘトヘトなのは無理もなかった。
 しかし、身体は反応し続けている。疼きがおさまらない。起き上がる気力もないのに、ヴァギナを中心として、同心円状に欲求の波が全身を包み、襲って来る。腰がヒクヒクと痙攣する。
 「あ、あ、もっと、もっと・・・」
 地面に寝そべった状態なのに、どこか深いところから湧き上って来る性欲に、口が自然と反応して、男達を求める台詞と吐いた。
 「な、なんだよ、この女。あぶないな・・・。俺だってもう立たないぜ」
 15号が後ずさりしながら言った。
 「何かにとりつかれている」
 ガブリエルはヨウシャの顔を覗きこんだ。
 その表情のなんと淫靡なこと。全てが潤み、全てがトロリと溶けている。
 そのことは、ヨウシャ自身も気がついていた。
 (ああ、とうとうその時がやってきた・・・)
 運命の、時。
 身も心もセックスの虜になり、寝食を忘れて、貪欲に快感をむさぼり、そしてそれは死ぬまで続く。
 ヨウシャの目から、涙がじんわりと溢れ出す。
 母に言われた、言葉。
 「旅の目的は何なのか、忘れてはダメよ。日々あなたはセックスの虜になっていく。やがて、それだけのために生きるようになるわ。理性だけがそれを引き留める。理性で身体を制御して、時間を稼いで、全ての理性を無くす前に王子に会いなさい。でも、身体の求めに応じることも大切よ。そうしないとあなたはまた別の意味で狂ってしまう。あなたの感度は日々増していき、身体の欲求も強くなる。それを無視すること、それは自我の崩壊を招くのよ。だから、やりたいときは、やりなさい。そして、そうではないときは、理性を強く持って、本来の目的を見つめなさい。見失いそうになったら、思い出しなさい。そして、全ての理性がさいなまれてしまうまでに、王子と交わるのよ」
 わたしの中に理性は残っているか?!
 「あ、もっと、早く、ねえ、次は、誰?」
 自分の口からついて出る言葉をヨウシャは冷静に受け止めていた。
 (本能のままに、男を求めている・・・とまらない・・・)
 セックスを拒否して、起き上がって、衣服を整えて・・・
 それだけのことが出来ない自分が悲しかった。
 「誰でもいいの、ねえ、早く、きて・・・、ああ、燃えている、身体が燃えているの。ねえ、早く・・・」
 アスワンの王子のいる王宮はもはや目の前。それでも理性を奮い起こすことができなかった。
 もはやこれまでか。
 このままわたしは、こんな所で、死ぬまで男を求め続けるのだろうか。
 あと少し。あと少しのはずなのに・・・

 ほとんど消えかけてもはや熾き火となった焚き火。黒くくすんだ炭の奥のほうでチラチラと明るいものが見える。
 東の空からゆっくりと朝がやってくる。
 狂おしげに身悶えするヨウシャ。それを見守るガブリエルと15号。2人でヨウシャの口とヴァギナとお尻を散々弄び、何度も何度も放出した身には、ヨウシャがいくら望もうとも、もはやヨウシャをいたぶるだけのパワーは残っていなかった。
 これだけ放置されれば、いくらなんでも普通は冷める。だが、ヨウシャは冷めない。たったひとりで地面を這いずり回りながら、卑猥な言葉を連発し、周りの者を狼狽させた。誰も何もしていないのに、道端の石や草に身体が触れただけで異常に興奮曲線を上昇させ、勝手にイッてしまう。それでも足らなくなると、疲れ果てた筋肉を無理やり動かしてオナニーをする。

 女の門番、127号が目を覚ました。
 「なにやってるのよ。もうすぐ役人達がここを通過する時間じゃない」
 「そ、そうだな」と、25号。
 「ふん、俺は知らん。関係ないね」
 ガブリエルは昨日の昼間そうしていたのと同じように、門番達のテントがあるのとは道をはさんだ反対側に座りこんだ。一晩眠っていないとはいえ、さっきまで自分がやっていた所業など忘れたかのごとく、開いているのか閉じているのかわからないようなうつろな目をして、地面を見つめた。
 「こ、この女、どうするよ」と、25号が焦りの表情を見せた。
 「壊れるまでやったね? その辺に放り出しておけば?」と、127号。
 「そうだな」
 25号はヨウシャを抱え込み、そして、道から外れた草むらに、放り投げた。
 久しぶりに男の肉体に触れたヨウシャは歓喜の声をあげ、懸命に身体をねじったが、その力はもはや弱々しく、25号の作業になんら支障を与えなかった。身体のあらゆる所を植物達にいたずらされて、ヨウシャはひいひいと官能の声をあげる。実際は植物達がいたずらしたのではない。転がるヨウシャにまとわりついた植物達との接触でヨウシャが勝手に感じているだけだ。ハックンがヨウシャに近づこうとして、傍に寄ったが、そのあまりもの惨状に足を止めてしまった。葉や棘に裸のヨウシャの肌は傷つけられ、あちこちから血が滲んでいた。
 そこへ、馬に乗った役人が通りかかる。
 「また一人、狂ったか。案内人など、いつまで待っても来るかどうかわからんぞ」
 そそくさと彼らの前を通りぬけ、結界などものともせずに、トンネルに入っていく。
 都合20人程度の馬に乗った役人が往来したが、誰も彼もが同じような反応しかしなかった。
 王政が廃止され、それまで王宮に努めていた役人達は、もはや明日の自分の身すらどうなるかわからない。逃げ出した者、商人に転じた者、搾取に明け暮れる者、新しい世で自分の身分を確保しようと陰謀に奔走する者と様々であり、その中でかろうじてまじめに王宮に仕える者も、もはや他人のことなど心配している余裕はない。人数が減った分、超多忙な日々に追われているのである。

 役人達の朝の往来がひとしきり終わると、黄金門の前は再び静けさを取り戻した。じわじわと体力を消耗しつつあるヨウシャの動きは、徐々に小さくなってゆく。だが、失神したとか、眠ったとかではないようだった。ガサゴソと草むらを揺らす音や息や声が聞こえてくる。
 そんな頃、トンネルの中から、ゆっくりと一頭の馬が姿を現した。背中には2人の人間を乗せている。
 「おお、案内人が現れたよ」
 老婆がかすれた声で言った。「待ちかねたよ、お前さん」という思いを全身から発散させていた。
 老婆が一目見ただけで馬上のその男を案内人と判断したのには理由がある。その独特の衣装のせいである。形を整えるためにたくさんパットを入れているらしく、あちこちが直角にしつらえられた衣装。肩幅は人間の本来のそれより2割は大きい。肩から90度にまっすぐ地面に向かった衣装は、腰でまた90度折れて身体の方へ向かい、腰に触れたあたりからまた90度の角度で地面に向かう。その裾は足首にまで達するが、馬にまたがるために中央に切れ目があり、馬の背の両側にだらんとぶら下がっていた。ズボンも太腿よりも2割ぐらい太く、足首で一気に細くなっていた。もちろんそれも直角に足首に向かい、足首で再び直角に地面に向かっている。
 色は深い緑だ。そして、王宮のエンブレムが背中に金色の刺繍でほどこしてあった。
 門番達の前で馬を止めた案内人は、後ろを振り向いて「降りろ、ここまでだ」と、言った。
 髪の長い女が落馬するように力なく地面に落ちた。疲労しきった少女のようにも見えたし、もともとそんな顔をした中年女のようにも見えた。

 「次は誰だ?」と、案内人は言った。
 ガブリエルと老婆は顔を上げた。
 「どちらが先だ? 早くしろ。もはや案内人は俺しかおらぬ。王子は次の謁見を待ちかねている」
 順番から言えば、ガブリエルが先である。だが、ガブリエルは老婆を見て、そして顎をしゃくった。
 「いいのかい?」
 「俺はまだ一月やそこらでは死なん。だが、あんたは今にも死にそうだ」
 「ふん」
 そう言いながらも、老婆は腰を浮かせた。
 「だが、ひとこと言っておく。王は先日亡くなられた。行っても王子にしか謁見できぬ。それでもよいな?」
 老婆の動きが止まった。
 「な、なんと、王が亡くなられたとな」
 「そうだ。高齢であったし、心労も重なっておられた」
 「なら、遠慮しとくよ」
 「何を言う。床に伏せったきりの王に代わって、実質王子が取り仕切っておられたのだ。何も問題はない」
 「問題ありだね。あたしゃ冥土の土産に王のお顔を拝顔したいと思っとっただけじゃ。別に政に関心はねえ」
 「そうか。なら、遠慮せよ。そちらの、男・・・」
 と、言いかけて、案内人は口をつぐんだ。
 ガブリエルの後ろの草むらで、瀕死の状態で蠢いている傷だらけの裸の女に目が止まった。
 「その女は、なんだ」
 「待ちくたびれて気が触れたようですよ」と、25号が言った。その女をガブリエルと一緒に犯したら気が狂った、などとは言えない。厳しい刑罰が待っているからだ。そのためには、ガブリエルが何かを言う前に先に自分の都合の言いように発言する必要があった。
 「なぜ、裸でいる」
 「結界に弾き飛ばされて、その勢いで・・・」
 「ふふん。果たしてそうかな」
 案内人にギロリと睨まれて、25号は身を硬くした。
 「まあいい。俺はそんなに暇じゃない」
 言外に「不問に付す」と言われ、25号は胸をなでおろした。
 「その女、若いのか?」
 「はい。20にはまだ届かぬことは明らかで」
 「なら、その女だ」と、案内人は言った。
 そして、「男、お前はあきらめろ」と、ガブリエルに向かって宣言した。
 ガブリエルは何も言わず、案内人から視線をそらしただけだ。自分のほうがはるかに前から待っていたのだと言っても、通用しないのがわかっていたからである。

 案内人は門番に命令を下した。
 「その女、上半身だけ身繕いをさせろ」
 「上半身だけですか?」
 「そうだ、下半身は裸でいい」
 馬にまたがった姿勢のままで、案内人は、自分のペニスを取り出した。天に向かってそそり立つ、太く長く逞しいモノだった。
 「まさか・・・」
 「まさかとは何だ。若い女はこうして案内することになっている」
 ヨウシャは草むらから引っ張り上げられ、上半身だけ服を着せられると、馬の上に引っ張り上げられた。もちろん、案内人の後ろではない。前だ。ヨウシャは声を漏らしたりかすかに身を震わせるが、ぐったりしていてされるがままである。
 案内人はヨウシャのヴァギナに指を滑らせた。
 「お前は運がいい。ちゃんと濡れている。嫌らしい夢でも見ているのか? 濡れてなければ、これから地獄の苦しみを味わうところだった。もっとも、そういう時でも、たちまち出血して、濡れることになる」
 そりゃあそうだろうと25号は思った。あの大きさのものをぶち込まれたまま、馬の上で振動を浴びるのだ。
 ヨウシャは案内人の上に座らされた。ズブリズブリと案内人のペニスがヨウシャの穴の中に吸い込まれてゆく。
 「おお、こいつはいい。深いし、締まりがいい。なぜこの女はぐったりしてるのだ?」
 男の挿入を受けて、ヨウシャは声を漏らした。だが、弱々しく、何と言ってるのか誰にも聴き取れない。
 馬の足元に、ハックンがまとわりついている。
 「幸運の白猫か。お前も一緒に来て良いぞ」
 同行が許可されて、ハックンは嬉しそうに飛びまわった。
 「おい、そこの男!」と、案内人はガブリエルに向かって言った。「いったい何があった? この女はなぜこんな状態なのだ?」
 だが、ガブリエルはあっさりと答えた。
 「わかりませんね」
 老婆は既に背中を見せて町のほうへ歩いていっている。この場に残されるのは、二人の門番とガブリエルである。こんな状態で正直に本当のことを話せば、案内人の去ったあと、門番達に痛めつけられるのは目に見えていた。正直に答えられるはずがないのだ。
 「まあいい。さて、そろそろ行くか。お前もあの婆さんを見習って帰ったほうがいいぞ。俺が再びこの場に戻って来れるかどうか、保障はないからな。いま、案内人狩りが王宮では流行っている。残りは俺一人だ。生き残れるとは思っていない」
 「待ってるさ。達者でな」
 ガブリエルはこう言うと、興味なさそうに地面を見つめた。
 「へ、お前なんぞ、生きて帰ってきても王宮に案内などしてやらん」

 案内人は、馬をトンネルの中に進ませた。
 案内人は馬をまたぐために、大きく足を広げている。そして、ヨウシャは、その案内人のペニスを受け入れるべく案内人の上に座り、案内人の広げられた足よりもさらに大きく股を開き、案内人の足の外側に自らの足をぶら下げていた。
 案内人は最初、馬を思いきり走らせようとしていた。だが、ゆっくりと歩かせた。並の女なら、動いている馬の上で挿入されているという過酷な状況に悲鳴を上げ苦しみ、そしてその苦しみの奥底に潜む快感に抗うことが出来ない状況になっている。それを楽しみ、かつ、より強烈な刺激をペニスに受けるため、案内人は馬を走らせるのである。そんなことをしているうちに、すこしばかりの刺激ではエクスタシーを感じなくなってしまった、というのもある。
 だが、この女は、どうだ。ほとんど意識がないというのに、ただ挿入しただけのペニスを、膣が執拗に攻撃する。馬の振動をかりた上下動などなくても、存分にペニスをいたぶってくれる。ねじり、しめつけ、吸い寄せ、そして、ドロドロに溶かしていく。
 自分のものが女の中で役立たずにされるのではないかと思うほどの幻覚的な快感に、案内人は何度も恐怖を覚えた。この女を馬から振り落として、すぐにでも結合を解除しないととんでもないことになりそうだと感じた。だが、それは今までに経験したことのない快感のために、意識が一瞬、あるいは数瞬、現実から遠のいているのだけなのだと気付く。
 体力の全てが自分の中心の棒に流れ込んでゆく。はちきれんばかりに硬く大きく膨れ上がったモノは、それ以上のパワアで締めつけられ、失神しそうになる。これが寝床の上なら明らかにそうなっただろう。騎乗中であることが、かろうじて意識を保たせているのだった。

 性の虜となったヨウシャ。
 全ての理性を失い、もはやこのまま、朽ち果てて死ぬまで、ただただ快感に身をゆだねていることしか出来ないのだろうか。
 草むらに放り投げられて、身体の表面をあちこち傷つけられながら、その傷つくことにすら、性的な快感を伴って、墜ちてゆく。
 自分の表面を這いずり回る快感が、野生の植物のそれから、懐かしい人の肌に代わった。ああ、また誰かが自分を犯そうとしているのだろうか。
 そうではなかった。自分は服を着せられている。誰かが手を引っ張った。また誰かがお尻を押し上げた。どこか高いところに持ち上げられているのだとかろうじて認識した。
 そして、挿入される。
 あ、この感触は、男の人、そのもの・・・・
 ああ、ああ、ああああ〜〜〜!!!
 本来入れるべきものを入れられて、ぐんなりしていた背筋が伸びる。
 ヘトヘトに疲れ果てていたはずなのに、快感の一片たりとも取りこぼすまいと、神経が冴えてくる。
 ああ、だめ。
 この状況から逃れる術を見出さなくては本当に死ぬまでこのままの状態になるというのに、自分の中から搾り取るようにして取り出した力の全てが、セックスに集中して行く。
 馬・・・・
 そう、わたしは馬に乗っている。その振動が、そのまま自分の中に差し込まれた男の本体によって、ぐんぐん内臓の奥に突き刺さる。
 このままだと、イクだろう。
 そして、イッた瞬間に、失神してしまうに違いない。
 その後は・・・・
 自分は再び目を覚ますことが、出来るのだろうか。

 王宮は山腹にある。その山を守るがごとく存在する自然の要塞、それが厚い岩盤だ。岩盤にはトンネルがくりぬかれている。そのひとつは、王宮と狂都をつなぐものだが、それ以外にもトンネルはいくつもある。それらは岩盤の高い位置に通じ、出口には祠がしつらえられ、そこに潜んだ兵士が、外的の侵入を阻止するべく防衛にあたるようになっていた。
 岩盤のない所ももちろん多数ある。そこは訓練された兵士でも方向を誤るような暗く深い原生林であったり、足を取られれば生きて脱出できない湿地帯であったり、芳しい芳香と共に毒を放つ花の群生地であったりした。人が通ったらしい踏み後を辿れば、巧みにカモフラージュされた古井戸に落ちた。
 そのほかにも王宮の回りには、未知なる障害が多数存在した。王家に仕える精霊も存在したし、魔物使いによって、本来なら人の為に行動を起こしたりしないような高位の魔物ですら、王家に味方した。
 そういった強固な護りに囲まれた王宮は、いざ一歩中へ入ると、その護りの禍々しさなど微塵も感じられないほど美しかった。
 王宮のある屹立した威厳のある山。それは、独立峰として孤高を保ち、堂々たる広がりを持った裾野を従えていた。裾野には、緑の草原が広がり、青く澄んだ水をたたえた池がところどころに点在し、木々には果実がたわわに実り柔らかな風に吹かれていた。
 自然や精霊や魔物といったものはもはやここでは人の敵ではない。しかし、警備が決してないがしろにされているのでもなかった。王宮のある山の美しい裾野は、訓練されつくした屈強な兵士によって、警備されているのである。
 いや、正確には、警備されていた、というべきだろう。
 王政の廃止により、将来に不安を抱いた兵士達が、次々と王家を離れてゆく。
 これは単なる荒廃ではなかった。王がそれを望んだのだ。「王家に仕え、王家に養ってもらう時代は終わったのだ」と、身の振り方を自ら決めるように宣言したからだ。これは王の望んだことであった。
 しかし、王政から議会民主制への移行は必ずしも順調ではない。民の代表による合議制で全てを決めれば良いという王の意志にそむいて、新しい時代の利権確保に乗り出す輩の為に、あらゆる事態が混乱したからだ。
 従って、王家はまだ完全に幕を下ろすことが出来ず、しかし、王家を離れて行った多くの役人や兵士達。残された者達は、人手不足という決定的な危機の中にいた。
 そのようなわけで、何を目的としたものかは判然としないものの、案内人狩りが行われていたのである。
 残るターゲットは、立った一人。ヨウシャと交わりながら、その一人が、トンネルを抜けて、いま、裾野に踏み出した。

 矢が飛んだ。
 矢は、案内人の背中に命中した。
 背中から胸に貫通した矢は、ヨウシャの背中すらも傷つけた。
 ふたりは落馬した。
 馬は、前足を大きく上げていななき、次の瞬間に猛然と走り出した。
 その後には、案内人とヨウシャが倒れていた。
 

 

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