アスワンの王子
凶都の5 舞台公演 1





 

 二日後に舞台公演を控えて、ヨウシャとサナの特訓が続いていた。
 ヨウシャは歌を唄い、サナは剣の舞を踊る。
 サナは剣士、戦士としてのトレーニングを受けているから身が軽い。しかも感覚がすぐれている。ロセリの透明感あふれる歌唱に合わせて舞うのだが、練習の度に上達しているようにヨウシャには思えた。舞いの形については手ほどきは誰からも受けていない。ただ、心のままに身体を動かすのみ。時折スズナスがアドバイスをするが、「もっと優雅に」とか「そこは繊細にやってみようよ」などという抽象的なものばかりだ。
 それにくらべてヨウシャへの注文は色々と具体的だった。「そこは喉を震わせて」とか、「声のだし方にメリハリを付けて」とか。それらはまだましな方で、ひどいときには、「いったいどこで息継ぎをするつもりなんだい? そんな唄い方じゃ窒息して死んでしまう」とまで言われてしまう。ヨウシャは「私には唄う才能が無いのね」とまで思った。
「休憩しよう」
 ヨウシャ達が練習しているのは、宿から離れた川辺リだった。街と山の中間にあたる所で、猟師が行き来に使うだけである。声や音を出しても誰にも迷惑はかからない。川原は砂利で敷き詰められていた。しばらく立っていると足の裏が痛くなる。だが、誰も不平は漏らさなかった。
 砂利の川原の両側には、山が迫っている。川はくねくねと曲がっているので、少し離れればやまかげに入って、他のメンバーの視線が届かない。ヨウシャは誰の目にも触れないところまで上流に向かい、そして座り込んだ。
「ふう」
 ただ唄うだけのことが上手に出来ない。ヨウシャは落ち込んだ。ヨウシャの立つ舞台では、ヨウシャが主役である。しかも、一番好きな歌を唄って良いと言われている。それにあわせてロセリが踊り、スズナスが銀竜を弾き、ホトケノの土太鼓を叩く。本当に大変なのは、ロセリであり、スズナスであり、ホトケノなのだ。ヨウシャは馴染み深い歌を唄うだけ。なのに、練習はヨウシャばかりだ。本当は他のメンバーこそが練習しなくてはならないのに、ヨウシャの歌があまりにも出来が悪いので、そこから先に進まないのだ。
「迷惑、かけてるなあ」
 そこへ、ホトケノがやってきた。
「あ、いたいた」
「うん・・・・」
 ヨウシャは申し訳なさから、ホトケノの顔を見ることも出来ない。
「何してるの? オナニー?」
そう問われて、はっとした。自分の右手がいつのまにかヴァギナを触っている。
「ううん、こうすると、落ち着くの」と、ヨウシャは適当な言い訳をした。けれど、どうして無意識にそんなところを触っていたのか、自分でもわからなかった。
「したいの?」
 ヨウシャは思わず頷いていた。ここ数日、していない。欲求不満になっていたのかもしれなかった。

 ヨウシャとホトケノは立ったまま抱き合った。足元が砂利なので身体を横たえようとはしなかった。重ねた唇の間を割って、ホトケノの舌がヨウシャの口の中へ進入してくる。舌と舌がねっとりと絡み合う。ぐにゃぐにゃしているくせに、押し流されずに、しっかりと意思を主張する。こうして2枚の舌は求め合った。
 唇を離し、お互いの肩に顎をのせあう。背中に回した手で相手の身体をしっかりと抱きしめる。その力強さと身体のぬくもりに、ヨウシャは今にも溶けてしまいそうだ。ヨウシャの鼻をくすぐるホトケノの匂い。汗の乾いた体臭の中に、石鹸の香りがまだ残っていた。
 ホトケノはいったんヨウシャから離れ、上半身に巻きつけた布をそっと脱がせる。
 春のそよ風のようにやさしい手さばき。壊れやすい骨董をそっと持ち上げるようなかすかな力。
 次に下半身。あわせた布の隙間から、ヨウシャの陰毛があらわになる。両手で下半身を包んでいた布を持ったまま、ホトケノはひざまずいて、ヨウシャの下腹部に唇を触れた。
「あ!」
 毛の生え際を舌先でチロチロとなぞられて、ヨウシャはのけぞった。甘美な震えが触れた部分におこり、静かな池に小石を投げたときのように、甘美の波紋がゆっくりと全身に広がっていく。
「ああ、ああ!」
 ヨウシャの衣服をきちんとたたんで川原に置いたホトケノは、2・3歩、後ろに下がる。そして、ヨウシャの全身を眺めた。
「綺麗だ。とても綺麗だ」
 ホトケノの声がヨウシャの耳の奥をしびれさせる。こんなに心地よいささやきは聞いたことが無い。いや、一度だけあった。恋人アクアロスと寝たときだ。どんな台詞だったのかは思い出せない。ただ心地よく溶けていったことだけを覚えている。
 ホトケノがキスをする。ヨウシャの耳たぶに、顎に、まぶたに、頬に、肩に、腕に、指先に。乳房を下からそっと持ち上げられて乳首を唇で挟まれたときは、全身に電気が走った。右の乳房と左の乳房、右の乳首と左の乳首。それぞれゆっくり丁寧に唇と舌で愛撫する。
 唇がお腹からさらに下へと這い、その動きに合わせて背中に回された手も降りてくる。神経が研ぎ澄まされていないと感じ取ることが出来ないであろう微かな震えが伝わってくる。指紋のひだのひとつひとつを感じるくらいだ。
 やがてホトケノの唇はヨウシャの一番感じるところへ。唇がひだを押し広げ、舌が割れ目に沿って動く。指先がアナルとその周囲を刺激する。
(ああ、立っていられなくなりそう)
 ホトケノの触れたところには間違い無く快感が走り、ホトケノが次の場所に移動した後も、ジーンと余韻が残る。余韻どころか、快感は増し、ちっとも醒めない。いつまでも触られつづけているようだ。ヨウシャの得る快感は、大勢の男たちにいっせいに抱かれているのと同じ状態になっている。激しくて刺激的な愛撫は強烈な悦びをもたらすがその場限り。対して、微妙なタッチングは後に尾を引くのだ。
 ついにホトケノの舌先がヴァギナに差し込まれた。内部で一番感じるところを瞬時に探し当てたホトケノは、これまでに無い力強さでそこを舐めまくった。
「ああああーーー!」
 膝ががっくりと折れ、立っていられなくなる。
 だが、ホトケノはヨウシャを支え、その場に崩れることを許してくれなかった。
 かろうじて体勢を立て直したヨウシャ。ホトケノはヨウシャの前にかがんで、今度は足の指先からまた愛撫をはじめる。ただの1ヶ所も残さず、丁寧にキスをする。唇の触れた場所が、ポッ、ポッ、と熱を帯びる。ヴァギナを舐めさせるために開いた両足の間から、ポタリポタリと愛液が滴り落ちた。
 右足全体を熱くさせ、ようやく脚の付け根の一番深いところに辿りついたホトケノ。
(ああ、早く来て、早く来て! わたしの最後の場所に!)
 だがホトケノの愛撫は、左足の先に移った。
 ホトケノにすれば、ヨウシャをじらすつもりなど無かったのだろう。ほんの1ヶ所も残さず舐め尽くそうとしただけだ。だが、責めつづけられるヨウシャにとってそれは地獄でしかなかった。少しぐらいの舐め残しなど構わない。早く核心に迫って欲しかった。もう熟れきっていた。ダラダラと垂れる愛液でそれはホトケノにもわかったはずだ。だが、ホトケノは律儀だった。何もかも。そう、まさにヨウシャの何もかもを我が物にしようとしていた。ヨウシャは気が狂いそうになった。
 左足を終えたホトケノは、大きく足を開いたヨウシャの、前から後ろへと、何度も何度も舌を往復させた。その範囲は徐々に狭くなり、強さは増してくる。ついに舌はヴァギナを捉えた。穴の深部に舌先が届いたとき、ホトケノはクリトリスとアナルをも指先で責めていた。抜け目の無い愛撫だった。
 質量も空間も無いやわらかくて暖かい場所にヨウシャは放り出された。熱くたぎったホトケノのものがヨウシャの芯に突き刺さり、ぐるぐるとかきまわしていた。身体の深いところから熱さと恍惚が広がり、ヨウシャの全身を包み込んでいく。あまりものじれったさに地獄の苦しみを味わったヨウシャは、一瞬にして天国に昇天してしまった。

 ヨウシャは唄っていた。
 その声は、大地を包む大空さえも包含するような、遥かな響きだった。風の流れと、鳥達のさえずりが、ヨウシャの声にハミングした。人の小さな悩みなどあっという間に吹き飛ばしてしまうほど崇高だった。しかし同時に、人々の苦しみや悲しみといった俗っぽい感情のひだにも入り込み、そのひとつひとつを癒していった。
「すごい、天才だ」とハコベがつぶやき、「どうだ。俺の目に狂いは無かった」と、スズナスが胸を張った。
 仲間たちの盛大な拍手に、ヨウシャは正気に戻った。
 自分の下にはホトケノが横たわっており、その股間にまたがったヨウシャは、彼の挿入を受け入れたままの状態で、歌を唄っていた。
「きゃ!」
 エッチをしながら声を響かせている自分に気がつき、ヨウシャは赤面した。ホトケノの上から飛びのいた。
「ホトケノに愛されて、抑圧されていたものが全て発散したのね」と、ロセリが言った。
 ヨウシャは服をまといながら、(そうかもしれない)と思った。練習に疲れて眠る日々。セックスをする暇も無い。いや、それよりも、まじかに控えた公演のために必死になっている仲間たちの前で、自分の欲望のためにわがままを通すことなどヨウシャには出来なかった。我慢するしかなかったのだ。さらに、どれだけ一生懸命レッスンしても認めてもらえないことが大きなストレスになり、かえって持てる力の発揮を邪魔していたのだ。
「よし、ヨウシャのステージはこれで行こう」と、スズナスが言った。
「これって?」と、不思議そうに聞き返すロセリ。
「決まっている。セックスをしながら唄ってもらうんだ」
「ええ、やだ、恥ずかしい」
「ロセリ、お前の踊りは無しだ。俺の銀竜とハコベの土太鼓だけでいく。照明も無しだ。漆黒の暗闇の中でセックスしながらヨウシャは絶唱する。闇の中では俺とハコベの奏でる音楽がヨウシャの歌声をひきたてる。これでいこう」
 真っ暗の中。それなら、まあ、いいか。
 脳天気にもヨウシャは、ステージでセックスをしながら快感に包まれて歌を唄う、そのシーンを思い浮かべながら、また濡れてくるのだった。
 だが、一方で、スズナスは心配をしていた。都での公演は10日間続く。果たしてヨウシャの身体はそれまで持つのだろうか?
(せめて)と、スズナスは思った。
 (せめて、ヨウシャがアスワンの王子と会う段取りだけでもつけてやりたい)と。

「ロセリ、なんとかならないのか? 王家という概念がこの都市国家からなくなったとしても、お前は間違い無く王の娘なんだろう? ヨウシャが探しているアスワンの王子、所在はつかめないのか?」
「難しいわ。父は王家の解体を決意したとき、子供たちを野に放ちました。私だけはそのときを待たずに、先に家出してしまいまったけれど」
「ああ、独自に調査したところによると、ロセリ、お前の家出が、王家解体を決意させるきっかけだったとも言われているらしい」
「わたしも、噂に聞きました。古い体質を守るために子供たちの自由を奪うのは許されない、と」
「しかし、それでも親子だ。子供たちの居場所ぐらい、親として知っているんじゃないのか?」
「わからないわ」
「とにかく、今はこのことをヨウシャには黙っていよう。王子を探し当ててから教えてやっても遅くない」
「そうね」

 1年ぶりの公演とあって、銀竜詩人のステージには、大勢の客が押し寄せた。満席だ。
 会場は都の中でもとりわけ大きなホールである。壁は石を切り出したブロックを積み上げて作られている。そして、壁の最上部と最上部を結んで木の板のが載せられていた。樹齢数千年という古くて大きな木を板状にしたものだ。昨日、この会場を使って最後の遠し稽古、すなわちリハーサルが行われたときに、ヨウシャはざっと客席を数えている。縦横それぞれ30席ずつ、合計900の椅子が備えられていた。椅子席のさらに前には干草を堅く敷き詰めた大座敷があり、そこにも300人くらいは座れそうだ。さらに椅子席の後ろには何も無いスペースがあり、ここにも立ち見の客が入るらしい。ヨウシャの村の人口に匹敵する客達に歌を聴かせるのだと思うと、緊張せざるを得なかった。ずっと村にいたのではもちろんこれだけ大勢の聴衆の前で唄うことなど無かったであろう。
 ヨウシャにとっての初体験は、もうひとつあった。電気の存在である。知識としては知っていた。だが、見たことは無かった。ヨウシャ達の宿にも電気は引かれていた。スイッチを入れると明るく輝き、夜の部屋をも明るく照らした。しかしもちろん宿にマイクなど無い。ヨウシャが驚いたのは、あの明るく輝くのと同じものが、自分の声を増幅させて、会場の隅々にまで行き渡るシステムだった。
「この客席が人であふれかえる」と、スズナスに言われた。
「はい」
ヨウシャの声は凛と張り詰めていた。
 スズナスが言った通り、舞台は初日から満席だ。暗くて見えないが、舞台の袖に立つヨウシャは、むんむんと伝わってくる人の熱気でそれがわかった。観客たちは、今まさに始まろうとしている銀竜詩人のステージを心待ちにしていた。
 ホールにも電気を使った照明装置はあるが、彼らは使わない。昨年までの公演は、まず開始のドラがホール全体に鳴り響いた後、ステージ上の随所に設置された蝋燭に照明係のホトケノが火を入れてまわった。3分の一ほど火を入れたところで銀竜の演奏が始まる。最初は悲しげな旋律がポツリポツリと奏でられ、それが徐々に大きく激しくなって、やがて会場全体を支配するほどのリズムに昇華する。土太鼓が拍子を刻む。ロセリが舞台に登場し、ホトケノと絡み合う。絡むといってもホトケノは実はほとんど踊ってはいない。たいまつから蝋燭に順番に火を入れているだけだ。その単調な動きと、ロセリの複雑な踊りが奇妙にマッチングして、観客の目を釘付けにする。この時点でもちろん心も奪われている。
 何年も前からずっと続けてきたオープニングだ。
 だが、今回は違う。暗闇の中で男と交わりながら唄うヨウシャのために、火入れよりも先にヨウシャのステージがあるのだ。つまり、オープニングで観客のハートをつかむのは、舞台慣れした銀竜詩人のメンバーではなく、ヨウシャである。
 ヨウシャはさっきからずっとホトケノの愛撫を受けていた。緊張感のため、高揚する快感に溺れずに済んだ。
 トロリ、トロリと太ももを愛液がつたわってくる。
「もういいわ。ほら、こんなに濡れているもの」
「黙って、任せて」と、ホトケノが言った。「開演と同時にイカせてあげるから。キミはイッたまま唄うんだ」
「はい・・・」
 ドラが鳴った。
「行こう」
 ステージの中央に二人は向かった。定位置まで来るとホトケノは仰向けに寝た。その上にヨウシャが座ることになっている。だが、ヨウシャはそうせずに、ホトケノのペニスを口に含んだ。
「おい、打ち合わせと違う」
「いいの。だって、あなた、私をイカせるばかりで、ちっとも自分では出してないじゃない」
「いいんだ。僕はそういう役目の男」
「そういう役目って?」
「二人の女が死ぬまで、彼女達のセックスを満たしてやっていた。旅芸人には必要なことなんだ。ロセリは男たちの相手をしていた」
 客席がざわめきはじめていた。いつもならドラが鳴り終えると、ひとつ、またひとつと蝋燭に火がともる。だが、今日のステージはいつまでたっても火がともらないからだ。
「ほら、早く僕の上に」
「もう少しよ」
 ただでさえ人並みより堅いホトケノのペニスがいっそう硬直した。そして、ぴくぴくと振るえる。
「入れるわ。中で出してね。でも2回や3回でしぼんじゃダメよ。何度も何度も出してね」
「半日以上入れたままで20回が最高記録。歌の一曲や二曲、平気だよ」
「じゃあ思いきり締め付けてあげる。5回は出させてあげるんだから」
 ヨウシャはホトケノの上に腰を沈めた。
「ああ!」
「うっ」

   月と太陽、あなたはどちらを愛しますか?

   月と太陽、あなたはどちらに愛されたいですか?

   わたし? わたしはあなたを愛しましょう。

   月よりも深く、太陽よりも明るく、

     わたしはあなたを愛しましょう。


   空と海、あなたはどちらを抱きますか?

   空と海、あなたはどちらに愛されたいですか?

   わたし? わたしは自分を愛しましょう。

   空よりも高く、海よりも広く、

     だって空も海もわたしの中にある。


   わたしはわたしから旅立ち、

        わたしのところに戻ってくる。

   あなたもあなたから旅立ち、

        あなたのところに戻りなさい。

   わたしの中にあなたがいて、

        あなたの中にわたしがいる。


   わたしはわたしから旅立ち、

        あなたの中に戻ってゆく。

   あなたはあなたから旅立ち、

        わたしの中に戻ってくる。

   わたしはあなたを包んでいて、

        あなたはわたしを包んでいる。


 観客の中に、サナの幼なじみ、ソワンがいた。自分の全ての能力と気配を封じ込めて、まるで死人のように。なぜこの舞台に引き寄せられたのかわからない。普段は身を隠すようにして、人ごみを避けていたのに。
 ソワンは3年も前に、騎士団の魔道部隊から姿を消していた。脱走したのだ。いつサナが迎えに来てもいいように。すぐに一緒に逃げられるように。けれど、都には能力者はゴマンといる。普通に身を隠しているだけなら、ソワンはあっという間に発見されてしまう。だから能力も気配も封じておかねばならなかったのだ。
(あ、サナ・・・、サナが近くに来ている。だから、わたしはここに来てしまったのね)
 ソワンは無意識のうちにサナの気配を感じ取っていたのだった。ということは、ソワンはやはり無意識のうちに能力と気配をわずかながら開放していた、ということである。

 3年という長い月日、サナを待ち焦がれる思いが、「封じ」にかすかなほつれを生じさせていたらしい。ソワンは慌ててそれらをもう一度しっかりと封じた。
 しかし、その行為はわずかに手遅れであった。人目を避け身を隠しているのならともかく、これだけの人ごみの中には、そのわずかの能力と気配を感じ取るきわめてすぐれた能力者だっている可能性が高くなる。
「ゴーギ様、どうやらこの中に・・・」
「ああ、ラグジャー、確かに脱走隊員がいるようだな」
「気配が、消えましたが」
「ふん、気配には、残り香のようなものがあるんだよ」
「申し訳ありません、ゴーギ様。私ではそこまでは・・・」
「かまわん。それはオレがなんとかする。お前には大切な仕事がある」
「捕獲、ですね」
「そうだ。お前は空気を操ることが出来る。その技で空気網を形成して、目標を間違い無く捕獲するのだ」
「御意」
 
 

 

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