ビスカリアの花  by 冬二等兵 その2





 









 前回は掲載有難う御座いました。自分は時折、性的な内容の夢を見るので、その都度文章に書き起こしています。
 完全に趣味です。今回のもその一つです。

 むせ返るような暑い夏の夜、僕は父から、姉の中絶を告げられた。聞くと、付き合っている彼氏との子で、その彼氏は責任を取るような事はしない。
 さらには、これまで何度も中絶を行っていて、今回の中絶によって、一生身篭ることが出来なくなったらしい。

 結婚を約束したと聞いた彼氏の裏切りは、僕に怒りを感じさせた。また、幾度の妊娠にも関わらず、安易な婚前交渉を続け、挙句子を授かるという歓びを失った姉に対して、侮蔑の念を抱いた。

 また、その様に変わり果てた姉を、どこか悲しく思った。
 感情を抑えきれなくなった僕は自転車に跨って、昔姉とよく行った近くの海岸に走った。

 昔の姉は清楚で可憐な少女で、今中学生の自分でさえも恋人にしたい位の女性だった。高校から地方を離れて東京に出てからというもの、一度もこちらに戻っていない。今でも心の中の姉の姿は美しく、幼稚園児の僕の手を引いて一緒に散歩をしている。姉は道端に咲いたピンク色の花を摘み取ると僕の前に持ってきて、「これはビスカリアの花って言ってね、姉さんの好きな花なんだ」と言ってくれる。
 姉はビスカリアの花の様に美しい。

 そして海岸に着いた僕は、テトラポッドの上によじ登り、言葉にできない叫びを上げると、その場にしゃがみ込んで泣いた。
 近くにある空港から響く最終便の音に包まれながら、僕はそのまま眠った。

 会社員である姉はその年の冬まで帰ることができず、僕はそれを待っていた。待ちに待ったその日の夜、空港で出迎えた姉は昔見たままで、年の割にはどこか幼くも見えた。しかしその雰囲気は昔とは違って、少し暗く重くなっていた。久し振りの再会に姉は普通に喜んでいた。恐らく、僕が父から聞いたことは知らないのだろう。荷物を迎えの車に積み込んで中に入ると、父と姉は会話をしていた。どうやらあれ以来頻繁に連絡を取り合っていたようで、一緒に暮らしていた時と何ら変わりない内容の会話だった。

 土産に買ってきたという可愛い金太郎飴を僕に渡すと、姉は自分の部屋に行き、すぐに寝てしまった。恐らく、ここに帰ってくることでさえも心労になったのだろう。僕は飴を一つ取り出し、口の中でころころと転がしてみた。初めて生姜の味を経験し、炭酸とも山葵とも違った衝撃に悶絶した。手足をじたばた動かしていると、硬い何かが左手の甲にこつんと当たった。見るとそこには、見慣れない形の携帯電話があった。開いて中を見ると、そこはメールのとあるフォルダだった。その中の一つを何気なくクリックして見ると、そこには如何わしい文面があった。知識の無い僕は最初、唯の悪戯メールかと思った。しかし、ある決定的な文面を見つけてしまった。「もう妊娠しないのなら、これからは毎日呼び出します」。その下の行には、姉の名前があった。僕はもはや声にならないただの呼吸を強く漏らし、背筋を硬直させた。窓の外の暗闇の様に、底知れないものを感じた。

 姉の寝ている間に僕は全てを読んだ。

 メールは高校生の時のものから残されており、読み終わった頃には既に空は青く、自分の疲労は肉体的にも精神的にも限界に達していた。

 大量のメールを要約すると、彼女は16歳、東京に出て直ぐに処女を失い、その二ヵ月後に始めてのSMを体験していた。最初は縄で縛ったり、蝋燭を垂らすだけだったが、徐々にその内容はエスカレートしていった。
 18でアナルを拡張して手が丸々入る様になり、その一年後には初めてのピアスを乳首に通し、そこからは身体改造が主になっていった。

 今では、普段見えない所の殆どに刺青を入れ、乳首は肥大して消しゴム位になり、腰には縄を通す為の金具が埋め込まれているらしい。
 危険日以外は常に呼び出され、常のメンバーである5人に廻された後、その日だけのゲストにも犯される。全てが克明に記録され、姉の元に送られるようだった。

 読んでいる間、僕は吐気と性的興奮の間を、まるでブロック崩しのゲームの様に行き来していた。僕は携帯電話を元あった場所に戻して自分の部屋に行き、夕方にならないと覚めない深い眠りについた。
 眼を覚ますと既に夕方になっていた。随分汗をかきながら寝ていたようで、やけに喉が渇いた。僕が水を飲みに台所に行くと、そこには姉の姿があった。

 姉は夕飯を作っていた。量が少ないのでそれを指摘すると、「明日まで父さんと母さんは出かけているよ」と言い、葱を適当な大きさに切った。
 僕は冷蔵庫からお茶を取り出し、コップに注いでそれを飲み干した。
 全てが嘘、全てが幻であって欲しかった。
 昨日食べた金太郎飴の幻覚であって欲しかった。

 それでも、昨日散々覗いた携帯電話は食卓の上にあり、まるで自分が見たことを姉が知っているかの様にそこに置いてあった。僕は潤いを取り戻しつつあった口を開いて、姉と話をした。お互いの空白の時間を埋めていった。時代は過去から現代へ。中絶の話は姉から話された。内容は彼氏のことについてだったが、僕は事実がそうでない事を知っていた。僕の知った事実が強烈なものだったので、姉が「でも平気。うん。忘れて」と言っても、到底気分が晴れるものではなかった。姉は調理を終え、二人の食事を一つの皿に盛って食べた。途中、姉が食事を運ぶあの口が、数多のペニスを咥えてきたことを考えると、気分が悪くなった。

 この頃から姉は僕の異変に気が付いたらしく、食後に片付けを済ませると、姉は僕に色々と気を使った。「本当に怒っているなら御免ね。駄目な姉で。」「気持ちを傷つけたい訳じゃないから、もう済んだ事にしよう。」 どんな言葉をかけられても、僕は一向に気が晴れない。姉に対して抱いている感情が、とてつもなく揺れ動いているのが分かった。姉がトイレに向かいに席を立った時、姉の着ていたタートルネックが椅子に引っ掛かった。姉がそれを取った時、僕は一生忘れられない物を見てしまった。姉の背中には人工的な形をした6つの板が埋め込まれていて、その中央には何かを差し込む穴が空いていた。
 その下には刺青で「淫乱肉便器」と彫られていた。僕は絶句して、自分の部屋に駆け込み、顔を枕で覆った。

 その後、姉が部屋に入ってきた。僕は携帯電話を覗いた事を告白し、姉に抱きついて泣いた。
 姉も僕に抱きつき、静かに泣いた。姉の体は僕より少し小さく、ピアスが付いていることを除いてもこつこつとして、どこかいい匂いがした。
 それは昔の様な爽やかなも中に含む、挑発的な匂いだった。

 僕はその匂いの中で全てを忘れ、姉にそっとキスをした。姉もキスを返して、ディープ・キスをした。
 その後、お互いの服を脱がせ、僕と姉はベッドに入った。僕は拙いながらも姉の体を優しく愛撫した。大きな乳首を口に含んで転がしてみたり、散々なことを彫られた下腹部を舌でゆっくり這ってみたり、金属のピアスが幾つも付いたおまんこに、指と舌を突っ込んだりだた。

 一挙手一投足に姉は快感を覚えてくれて、僕が挿入する前に熱い潮を吹きながら達した。潮は僕の顔にかかり、姉は心地良い声で僕の名前を何度も呼んでいた。
 大きくなったペニスを入れようとしたその時、姉はストップをかけた。何をするのかと思っていると、先程脱いだ服から鍵を取り出して、性器に取り付けられている錠前に差し込んだ。

 何でそれを持っているの、と尋ねると、「本当の心の底で自由でいるため」と言った。
 姉は続けて、「彼氏が居たっていうのも嘘じゃないんだ。彼は私のこの醜い体を受け入れてくれた初めての人だった。メンバーの5人が知ったらすごく怒って、リンチされちゃったけどね。私も鍵を取り替えられたけど、飛行機に乗るって言ったら貸してくれたの。性癖はMだけど、心の底は普通なの」と真実を語り、手馴れた動作で錠前を外した。

 僕は屹立したペニスを姉の中に入れ、ゆっくりと腰を振り始めた。
 姉の表情が、だんだんと和らいでいくのが見えた。それはまるで、昔の姉に、ビスカリアの花の様な姉に戻っていくようだった。

 僕も姉もほぼ同時に絶頂に達して、お互いにぴくぴくと震えながら暫く繋がっていた。
 姉は屈託の無い笑顔で「ありがとう」と言った。
 室内とはいっても寒いので、僕と姉は一緒に寝た。

「本当に妊娠しないの?」
「しないって言うか、できにくいらしいね」

 その後は他愛も無い会話をして目を閉じた。姉は僕の体に抱きついたまま寝て、僕も抱きつかれたまま眠りについた。姉の寝息が肩にかかって、少しくすぐったかったのを覚えている。

 朝、昨晩のセックスで疲れて早く寝たせいか、外はまだ真暗だった。姉は先に起きていたようで、風呂場からはシャワーの音が響いていた。
 姉の後にシャワーを浴びてリビングに行くと、姉が朝ご飯を用意してくれていた。美味しそうな味噌汁とホウレン草のおひたし、白米。よく覚えている。二人で和気藹々とした雰囲気の中食事を済ませると、突然玄関のチャイムが鳴った。

 姉が玄関に行ってしばらくして、姉の悲鳴が聞こえた。
 僕は洗いかけの食器を放り出して玄関の方に走った。
 そこには、姉と、図体の大きい男が5人、狭い玄関でひしめいていた。
 姉は「来ないで。さようなら」と言うと、その男達と共に家を出た。

 僕は追いかけようとしたが、男の一人に突き飛ばされ、フローリングに頭を打って気絶した。両親が帰ってくる少し前に意識を取り戻した僕は、「仕事があって予定より早く帰った」と嘘をついた。

 その三ヵ月後、姉が自殺をした。目撃者の話では、マンションの5階から自分で飛び降りたらしい。
 姉は女性器を縫い閉じられ、暴行に近い仕打ちを受けていたような形跡があったが、現場には誰も居なかったので、自殺とされた。
 姉はマンションの花壇に落ちて、そこに植わっていたビスカリアは見る影もなくなっていたらしい。

 飛行機に乗って遺体と体面に行く時、耳が悪い僕は土産の金太郎飴を持って搭乗した。ぴりりと辛い飴は、それで最後だった。
(メールによる体験告白より 2011年4月17日)

 
 夢で見た内容? まあ、文章にするときに、相当脚色したりはしているんだろうけれど、それにしても、鮮明に覚えているもんですねえ。感心します。ま、夢といっても、結局は、ご本人の頭の中の世界。つまりは創作作品。作家になれますよ!

 
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