語り部は由美
大学2年生 純愛(6)





「くううぅぅぅ〜」
 せつなげな声を直也は上げた。肛門舐めの快感に、彼は戸惑っているのだ。それは彼にとって、初めての経験に違いない。
「う。あ、く!」
「どうお? 気持ちいいでしょ?」
「あ、う……、自分でも、びっくりする……」
 アナルセックスをしたがる男はいても、わたしの経験では、自分自身でアナルのよさを体験したことのある男は少ない。男達は、単にケツの穴に突っ込んでみたいという欲求だけでアナルを求めてくるのだ。わたしとしては、アナルの快感を理解したうえで求めて欲しいんだけれど……。
 でも、これは女も悪いんだよね。ちゃんと舐めてあげないから、男達はその良さを知りようも無い。
「き、汚いよ…。そんなとこ…」
「ううん、直也のなら、汚く、ない」
 わたしは直也のアナルを舐め続け、舌が疲れると、指先をあてがった。舌先でするのと同じように表面をザザザと舐め、たまに揉み解すように押さえつけた。
 直也は、「うう……」と、なんとも言えない声を出す。
 もしかしたら、指を突っ込まれるんじゃないかと言う恐怖と、これまで知りえなかった快感とが、半々に彼を侵食しているはずだ。
 でも、今日は指入れはしない。そんなことをしなくても、何度目かのセックスで、きっと直也は自分から「指を入れて」と懇願するはずだ。
 わたしは舌先にタップリ唾液をとり、そしてまた彼のアナルを舐める。

「ああ、もうダメ!」
 ガバっと起き上がる直也。わたしはそっと彼の胸と背中に掌をあてがい、「まって。まだよ」と言う。
 彼をゆっくりと、仰向けに横たわらせる。彼のペニスの先は爆発寸前。ドクドクとラブジュースが流れ出している。わたしのテクは、普通程度の男の子にはたまらないはず。童貞だったら、既に2〜3回は射精に導かれていてもおかしくない。
 直也は我慢強い。多少はコントロールできる程度の経験値はあるみたい。
 直也のことだから、プライドもありそうだ。男は女をイカせて当然、みたいな。

 だけど、そんなプライドは粉々にしてあげる。全ての意志が崩壊するような快感の中で、タップリ放出させてあげる。でも、なくしたプライドなんかより、飛び散る快感の果てに、その何倍も何十倍もの幸福感を感じさせてあげるの。

 わたしはタマタマから続く皺の周囲を、指先でなぞった。玉を迂回して、ペニス本体にも触らず、ギリギリのラインを通って下腹部に至る。
「う、うう〜」
 直也はじれったそうに身体をよじる。
 乳首を舐めたり、吸ったりしながら、指先は同じ動作を繰り返す。
 余った手で、よしよしするように彼の頭をなでたり、耳の穴に指先を入れたり、瞼の上をそっと這わせたりする。唇に触れると、彼はパクっと食いついてきた。
「まだ、わたしにさせてね。直也がわたしを触ったらダメよ。わたしが一方的にしてあげるの」
 そう言っておいたから、彼はガマンして手を出さない。唯一、口元にやってきたわたしの指をしゃぶるのが精一杯なのだ。

 焦らされているのは直也だけじゃない。わたしだって、されたくてされたくてたまらない。だって、こんなに直也に奉仕してるんだもの。
 彼に咥えられた指先が、まるでクリトリスのように敏感になっている。
「ああ〜ん。や〜ん」
 ペニスの先がびっくんびっくん震えている。それは彼が、「ここ。ここに来て。早く!」と絶叫せんばかりの合図だった。彼自身の揺れが彼そのものに快感を与えてもいる。女の子の与える刺激に比べたらたいしたことはないだろうけれど、これが続けたば射精もたやすい。
 彼は自分自身をヒクつかせることによって我慢してるのだけれど、それは強い刺激を欲しているのにそれが叶わないための代謝行為であって、そこにはいくばくかの刺激が確かにあるのだ。
 こんなことで彼をイカせはしない。わたしは彼の高揚を落ち着かせるために、フェラをしてあげた。
 硬く太く熱いそれを、わたしは基本に忠実に愛撫した。竿を強く弱く握り、もっとも快感を与える擦れ具合に調整しながらピストンする。その間、舌はネットリと亀頭を舐めあげる。
 直也は深いため息をついた。きっと、このままザーメンを放出させてくれると思ったに違いない。この先のことを期待した、希望的観測による安堵感と満足感。でも、もちろんわたしはそんなことはしてあげない。
 落ち着きを見せたところで、フェラを中止した。

 フェラをやめても、直也は特に不審がったりはしなかった。最後までイカせずに女の子が口を離した場合、その後に待っているのは「入れて」か、さもなくば「わたしにも、して」だと直也は思っているのだろう。つまり、直也が主導権を取れる。
 イニシアティブを握れば、男の子ってそれだけで安心するみたい。自分の欲望をぶつけて身勝手な快感にふける男もいるけれど、自分がリードする立場にさえなってしまえば、女を悦ばせるためにひたすら我慢をする男だっている。直也は後者だ。それほど経験はないにしても、わたしを何度も何度も昇天させてくれるだろう。
 だけど、わたし達は今、お泊りの旅行に来ているのだ。
 そんなに簡単にイッてしまったらもったいない。
 イクのもステキだけれど、それまでの快感もたっぷりむさぼって、セックスの罠に身も心も堕ちきってしまいたい。時間はタップリあるの。

 わたしは直也の太腿にキスをした。
「え? ん?」
 上半身を起こしかけた直也。わたしは無視して、太腿の内側を舐める。焦らしすぎても悪いので、わたしは直也のペニスのカリの下のところを握った。そして、指先で微妙に先端部分に刺激する。溢れ出たラブジュースを指ですくいとって、ニュるニュると滑らせてあげるのだ。
「あう〜、うう」
 男の子のヨガリ声って、好き。
 再び直也は布団に横たえ、わたしの好きにさせてくれた。

 溢れているのは直也だけではない。
 わたしだって、相当のものだ。
 太腿をお汁が伝い、陰毛の先から雫が落ちる。

 私もこんなになるのは初めてだった。ここまで徹底して一方的にしてあげたことはないし、そうしようとしても、いつのまにか我慢しきれなくなった相手がわたしに襲い掛かってくるからだ。
 もちろんわたしも、タップリされたくてセックスしてるわけだから、「あ〜ん、もっとしてあげたいのに」と思いつつも、意志は快感に凌駕されてしまう。
 挿入などされようものなら、わたしの中の肉棒に快感を与えるのに夢中になる。締めたり、緩めたり。それは男にとってだけでなく、同時にわたしの快感になる。だからすっかり挿入に夢中になってしまうのだ。

 けれど、直也はわたしのしたいようにやらせてくれた。
 膝の裏も、向う脛も、足の甲も、好きなだけ舐めさせてくれる。
 直也はのたうってうる。
 男に責められているときのわたしだ。
 全身が性感帯と化したわたしは、何をされても感じてしまう。快感電流が全身をかけめぐる瞬間。
 そうかあ。男の子だって、全身性感帯になっちゃえるんだ。
 わたしは直也の足の指の間を舐めながら、心の中で絶叫した。
「直也! なおやあ〜! わたしにも、わたしにもいっぱいしてね。お願い!!」
 
 彼のモノを握ったわたしの手に、合図が駆け抜けた。
 どうやら限界らしかった。
 頭で感じるより、わたしの本能が気付くほうが先だった。トロトロと湧き出していたわたしのラブジュースが、一気に溢れ出したのだ。

 口で? アソコで?
 考えるより先に、身体が動いた。わたしは直也の上に跨り、ペニスをアソコに導いていた。
 じゅっぽ……。
 愛液で満たされたアソコは、直也のものを受け入れると、押し出されるようにビシャーっと水分を吐き出した。
「あ、すご……」
 直也はわたしが潮を吹いたと勘違いしたかもしれない。けれど、それは全くの勘違いではなかった。実際、わたしはその瞬間に、潮を吹いたのだ。脳天まで突き抜ける恍惚に身体が溶けた。
 わたしは夢中で腰を上下させた。
 バシー、バシー、バシー!
 わたしのお尻が直也のボディーに叩きつけられる。その都度、直也のペニスがわたしの子宮をぐぐぐーと押し上げる。内臓全てがかき回される感じ。これがたまらない。わたしの中が直也で満たされる。
 もう何も考えられない。
 ただ、本能に従って、腰を振る。
 バシー、バシー、バシー!
 清流が接続部分から迸る。
 ビシャー、ビシャー、ビシャー!!
 直也が2度ほど射精するのがわかったけれど、イキまくっているわたしは、もっともっと欲しくて、腰を上下にピストンし続けた。欲しい、というより、とめられなかった、と言う方が正しいかもしれない。
 頭の中は真っ白で何も考えられなかったし、わたしを間断なく襲う快感は、真綿のようでもあり、槍のようでもあった。
 
 二人とも気を失っていた。でも、それほど長い時間じゃないと思う。
 見ると、直也のモノは、硬さや太さは失っていたものの、ダランと長いままだった。しかも、ふたりが離れた後からも射精したのか、それともペニスに残っていたザーメンが流れ出したのか、彼の股間部分の布団にネットリとした液体が残されていた。
 直也もほぼ同時に目を覚ましたらしく、わたしの股間を指差して、笑った。
 大洪水になっていた。直也の吐き出したものと、わたし自身からあふれだしたもの、そのふたつが混ざり合って、小さな池を作っていたのだ。直也の残り香なんて、これにくらべたら可愛らしいものだった。
 わたしはノロノロと上半身を起こし、朦朧とした思考の中でなんとかティッシュをさぐりあて、二人の愛の排泄物を拭い取った。あとには、シミと湿気が残った。

「お風呂、行こうよ。ふたりだけの、露天風呂…」
 直也に促されて、わたしは、うん、と頷いた。
 立ち上がると、クラクラした。わたしを支えるように抱きしめる直也。わたしのお腹には、もう屹立した直也のモノが当った。
「まだ、足らないの?」と、わたしは耳元で囁いた。
「もう十分。痛いくらい。だけど、由美は足らないんだろ?」
 彼の指がわたしの割れ目に差し込まれる。新たなラブジュースが分泌されるのが、自分でもわかる。
「わたし、淫乱だから……」
「由美が満足するまで、何度でも立つよ」
「うそ。自分だってやりたいくせに」
 肩に手をまわされて、キス。
 舌が差し込まれて……、キューン。あ、この感じ、好き。性器が擦れ合う快感じゃなくて、心が痺れる感じ。

 全室離れといっても、都会のど真ん中だ。多くの土地を贅沢に使うというわけにはいかなかったのだろう。部屋から見た感じほどには庭は広くない。しかしその分、植栽や生垣などがうまく配置されており、プライバシーが保たれていた。
 すぐ横が隣の客室と知って、「声、丸聞こえだったかもね?」とわたしは言った。
「隣もエッチの真っ最中だったよ」
「嘘!」
 わたしは叫んだ。隣の声が聞こえたということは、こちらの声も届いていた、ということだ。
「嘘だよ」と、直也はニンマリ笑った。
 こいつう〜。なんだかすっかり余裕だな。

 露天風呂の洗い場は狭く、一人がかけ湯をするスペースくらいしかない。身体を洗うのは大浴場で、露天風呂では風情を味わってください、ということらしい。
 それでも、一人分のカランとシャワー、洗面器と椅子はあり、シャンプー・リンス・ボディーソープなどは置いてある。
 脱衣所はない。部屋で脱いで、裸のまま庭を歩いてここまで来てください、ということか。
 風呂そのものはさして狭くない。ふたり並んで座って浸かることが出来る。けれど湯船は円形に近いイビツな形なので、ふたりが足を伸ばして入ろうと思えば、身を寄せ合うことになる。家族風呂としては小さく、カップル向けだ。それも、お忍びのカップルが喜びそうである。
 わたし達は正真正銘の恋人同士なので、お忍びなんかじゃないけれど、それでもこういう雰囲気はステキだと思った。
 
「もっと、のびのび入ろうよ」
 直也が言った。
「どうやって?」
「重なれば、手足を伸ばせるよ」

 わたしが立ち上がると、直也は両足を広げた。その間にわたしは腰を降ろし、直也の胸に背中を預ける。
 背中に彼のモノが当たる。
 直也は後ろからわたしを抱きしめ、オッパイをさわさわと触っては、下腹部と往復させた。必死になって鷲掴みにするならまだしも可愛げがある。でも、彼はそうはしない。微妙に摩擦を与えては乳首をつかむ。わずかに痛みを感じるか、感じないかの力加減が、わたしを狂おしい気分にさせる。
 しかも、その手をすぐにお腹へ往復させるのだ。
 そのまままっすぐ一番敏感なところに移動させるのかと思いきや、陰毛を弄んでは、すぐにまたオッパイへ。
「ねえ、ちょっと、焦らしてる?」
「さあ?」と、とぼける直也。
「でも、これくらいしないと、由美ちゃんの彼氏は務まらないでしょ?」
 わたしはちょっとばかり「こんちくしょー」という気分になった。夢中にさせてやろうと思っていたのに、逆に余裕を与えてしまったみたいだった。ま、お互い焦らしたり、余裕をかましたりっていうのは、深くつながってる証拠。悪くは無いけどね。
 それに、「こんちくしょー」という思いとはウラハラに、わたしは少し嬉しくもあった。
 女の扱いというか、わたしの扱いというか、直也には遠慮がちなところがあったように思うのだ。でも、やっぱり「お前は俺の女」みたいな扱いも受けてみたい。きっと、さっきの深く濃いセックスが、直也とわたしの、最後の壁をとっぱらったのだろう。
 これで増長してしまうような男はごめんだけれど、直也はそんなことはないだろう。
「お前は俺の女」
 直也がわたしのことをそう思ってくれたら、きっともっと大胆に、そして大きな包容力で、自信たっぷりにわたしを受け入れてくれるに違いない。

 乳首と陰毛を何度か往復した直也の指が、わたしのクリに触れる。
「あん。ソコ……」
「気持ちいいの?」
「うん。気持ちいい。もっと、して」
「じゃあ、入れちゃおうか?」
「それでも、いいよ」
 背中に当った直也のものは、ますますギンギンになっている。わたしは腰を浮かした。

 でも、直也はすぐには入れてこなかった。
 指先をヴァギナにかすかに挿入し、それとは異なる指をアナルにあてがった。わたしのお尻はエッチな気分になるともう自然と開くほどに開発されているので、彼にそのつもりがなくても、第一関節あたりまではふっと入ってしまう。アナル慣れした女だとわかってしまうのが恥ずかしかったけれど、アナルの良さを教えてしまったからには彼だって遠慮はないだろう。もとよりわたしは、どちらの穴にも入れて欲しいと思ってる。
「前と後ろ、どっちがいい?」
 訊かれて、わたしはまたコノヤローと思った。本当に余裕をかましてくれる。
 だけど、言葉遊びって楽しいな。「おらおら、どっちの穴に欲しいんだ? 正直に言ってみろよ」みたいな言われ方をしたことは少なくないけれど、直也の囁きは全然違う。エロい気分を盛り上げるためだけじゃなくて、わたしとのやりとりを本当に楽しむため。
 わたしは、「どっちでも、好きなほうへどうぞ」と言った。
 ヴァギナもアナルも、十分に濡れて、開いていた。