語り部は由美
大学1年生 淫ら(3)





 二人でラブホテルに行く途中でトシアキは言った。
「由美ちゃんて、もしかして、ものすごくスケベ?」
 わたしはコクンと頷いて、だけどそれには答えなかった。
「早く、行こ」と、トシアキの手をとる。
 それはまるで純情な乙女が大好きな人と少しでも触れていたくてとる行動と大差なかった。ついさっきまで違う男のちんちんによがらされていたとか、もう次の男とのセックスに思いを馳せて濡らしているとか、道行くひとからはそんな風には見えないだろう。ただ、大好きな人に身を寄せているだけ。
 これは演出でもなんでもないの。さっきまでがどうだったかなんて関係ない。今は本当にトシアキに抱かれたいと思っている。
 トシアキは、どう思ってるんだろう。わたしのことを単なる淫乱だと思ってるだろうか。それでも構わない。抱いてさえくれれば。
 それにわたしは多分ホンモノの淫乱だものね。

 トシアキと入ったラブホテルは満員だった。
 待合い用の小さなブースに私達は案内された。
 わざとなのか場所を節約しているのかわからないけれど、とても小さなボックス。身体を密着させないと収まらないほどの二人用のベンチと、窓枠にクラシックな黒電話がおかれていた。外線にはつながらないみたい。部屋が空いたときの呼び出し専用なのだろう。
 電話機のすぐ脇の壁に「0」から「3」までの数字が記された小さなダイヤルがある。今は「1」になっている。ダイヤルを「2」にするとBGMが大きくなった。オーケストラが奏でるイージーリスニング? 銀行やホテルのロビーで静かにかかっている音楽と似ている。
「音を大きくすれば平気だね」
 トシアキはわたしの乳首をタンクトップの布越しにつまんでコリコリといじった。
「あ、あん・・・」
 肩と肩を重ね合うようにして座っているだけで興奮が増してくるのに、そんなことされたら・・・。
 ドアには鍵がない。「ここはまだ交わるための部屋じゃないんですよ」と主張しているみたいだ。
 けれど、トシアキはお構いなしだった。
 頭に手を回してわたしを引き寄せ、唇を重ねてくる。
 舌を絡め合う私達。
 ネットリとした感触が温かくて気持ちいい。
 口の中に性感帯はないというけれど、わたしはディープキスが好き。息が詰まるほどの長くてしつこいディープキス。たいていエッチでつながる場所は、どちらかが入れてどちらかが受け入れる、という形。でも、お口はお互いの舌を自由に絡み合える。だから好き。フェラもそうかも知れないけれど、お口に入れられてガンガン突かれたらたまらない。やっぱり女の子がしゃぶったり吸ったりしてあげないとね。
 舌先で上顎をコチョコチョとくすぐられて、頭がボーっとしてきた。
 ラブホテルまでの道中で既にスカートに手を入れられて悪戯されていたし、それ以前に居酒屋でアナルにぶちこまれていたから、直ぐにでも激しく求め合いたいっていう気持が強かったのだけれど、お部屋が満員だったおかげでマウス遊びに興じることができた。ちょっとラッキーだったかも知れない。すぐにお部屋だったらきっと怒濤のセックスになだれ込んでいたと思う。
 スカートは椅子に座ったときからめくれ上がっていて、下着もとられたままだし、わたしはほとんどモロ出し状態。穴から太腿の付け根に向かってどんどんお汁が溢れてくる。ホテルの人が後で掃除に来たらきっとこれがなんだかわかるだろう。ああ、恥ずかしい。
 トシアキはお尻の方から指を滑り込ませてきた。
 ぴくぴくと反応しながら、わたしは腰を浮かせる。
 トシアキの指使いは絶品だった。
 アナルに親指、ヴァギナに(後で確認したら)人差指と薬指が差し込まれた。親指と薬指でアナルとヴァギナの壁をぐいぐいとつまんだり、壁を挟んだままこすったり。そして人差指は穴の中をぐりぐり動き回る。さらに、伸ばした中指でクリちゃんまで愛撫してくれるのだ。先っぽに摩擦感を与えたり、ツンツンとつついたり、押しつけてきたり。
 ああ〜ん、いい〜ん、う〜ん。
 ア行の発音練習をしているわけじゃないのに、わたしの口からはもだえ声がほとばしる。だめ、ここは小さなロビーの一角の待合室。鍵もない小部屋。いつ誰がやってくるかわからない。誰もやってこなくても、声なんて丸聞こえのはず。そう思うと余計に感じちゃう。
 BGMの音は最大にしてあるけれど、その程度じゃわたしの声は誤魔化せそうに無い。
 わたしは既に腰を完全に浮かして、目の前の壁に両手をついていた。
 膝を曲げてお尻を突きだしている。
 彼にも何かしてあげたいけれど、今にも失神しそうで何もできない。
 でも、何かしてあげなくちゃ。わたしは左手を壁から離し後ろに回した。彼のオチンチンを触りたかった。
 その時わたしは強烈な尿意に襲われた。そういえば結構ビールとか飲んでたんだ。
 うう〜。がまんがまん。こんなところで放尿するわけにはいかない。でも、チョロ、チョロ、と漏れている。
 だけど、どうしてこんなに急に? さっきまでオシッコしたいだなんてちっとも思わなかったのに。
 あ・・・・、尿道口を刺激されてる!
 原因はそれだったのだ。尿道口に押し付けられた指先。わたしはすごく敏感になっている。彼の指紋がわかるくらいに。
 トシアキは微妙に指をこねる。オシッコの穴が少し開いてその内側に指紋のぎざぎざが刺激を与えた。
 チクチクとかすかな痛み。そして、思いもよらぬ快感。
「すごい、すごい〜。こんなのどこで覚えたの?」
 トシアキは「いろんなトコ」と言って、わたしのお尻の下にかがみ込んだ。
「舐めてあげる」
「いやああ〜〜ん、うれしいい〜〜!!」
 思わず叫び声をあげると、壁をドンドンと叩く音がした。
 隣の待合室に別のカップルがいて、私達と同じように部屋が空くのを待っていたのだ。壁のドンドンは「もっとやれ」の合図なのか「お前らやりすぎ」の意思表示なのかわからない。
 構うもんか。だって、ここはラブホテルだもの。
 トシアキは前から後ろまで丁寧に何往復も舌をはいずり回せてくれる。
 わたしはイキそうになり一瞬気が遠くなったけれど、チョロチョロとオシッコが漏れ始めたので我に返った。
「あ!」
 愛撫していた手にオシッコをかけられてトシアキは声を上げた。
 ダメ。こんなところで出せない。
 わたしは慌てて力をいれ、オシッコを止めた。
「すごい・・・。オシッコを止めるなんて・・・」
 トシアキは感心してくれた。
「由美ちゃんて、鍛え上げてるんだ」
「いやーん。いやらあしいこと言わないでエ〜」
 だめ、これ以上攻め続けられたら、もうバラバラになっちゃう。
 わたしは向き直り、トシアキのファスナーに手をかけた。一気におろしてブリーフの穴から彼のものを引っぱり出す。待ってましたとばかりに飛び出したそれは、固くそそり立っていた。わたしはすかさず口に含んでおしゃぶりをする。
 ぷりぷりしたペニスに唇をまとわりつかせ、滅多にやらないんだけど、そっと歯の先で一番感じるところをこそげてみる。
 これは「全てを任せてくれる人」にしかやらない。だって、勝手に動かれたら歯でアレを傷つけちゃうじゃない。でも、任せてくれたらものすごく気持ちいいんだよ。
 トシアキがどんどん興奮していく様子がわかる。歯先と舌でカリをじゃんじゃん攻撃する。
「う!」
 トシアキはわたしの口の中に放出した。
 部屋の黒電話がなった。
 受話器を取ったトシアキが「部屋の用意が出来ましたってさ」と言った。
 わたしは彼のザーメンを飲み込んで、「1回戦、終わっちゃったね」と言った。
 
 指定された部屋は3階。狭いエレベーターがゆっくりのぼっていく。トシアキはわたしの後ろに回り込んで両手で腰を抱え、わたしの中に入ろうとしてきた。
「ええ? うそぉ」
 トシアキはチンポをファスナーからはみ出させたまま、わたしのジャケットで前を覆ってエレベーターに乗ったのだった。
 それにしてもなんていう回復力。さっきわたしの口の中に出したばっかりなのに。
「うそじゃないよ」
 わたしもトシアキに責められて前戯は十分状態だったから、簡単にインサートできた。でも、それからが大変。
 エレベーターが3階に到着してドアが開くと、「入れたまま」とトシアキは言って、わたしを後ろから押し出すようにした。
 こうなったらもうイイナリだ。
 狭い廊下には誰もいないけれど、いつどのドアが開くかもわからないドキドキ感。
 身長差があるのでわたしはつま先立ちになり、トシアキは膝を曲げ気味。でも、その膝がわたしの足を押すとわたしは前につんのめるから、彼は大股開きなのだ。
 その状態で、前進。
 はめ歩きがこんなに感じるとは思わなかった。
 信じられないぐらいドンと突き刺さってくるかと思うと、いまにも外れそうになるじれったさが次の瞬間訪れる。歩調が合えば深く刺さったままだ。ハメながら歩くと全く予想の付かない角度と力でわたしの中が突かれる。超興奮。
 私達の部屋は三つ目。ドアの横のピンク色のランプが点滅している。
 二つ目のドアを通りすぎたときに、そのドアが開いた。
「え!」という男の声と、キャッと言う小さな女の悲鳴が聞こえた。
 悲鳴に続いて「いやあ」という女の叫び声が聞こえたので、わたしは振り返って微笑んでやった。
 「すげー」と、男がため息混じりにつぶやいた。「いろっぽすぎる」
 そりゃあそうだと思う。この時のわたしはきっと目も口元もポワンとしていたに違いない。こんな顔、やった相手にしか見られたことがない。
 気分的には、「今日は泊まったりしないわよ、ちゃっんと帰らないと、色々あるんだから」と宣言しながら彼の部屋に入り、調子に乗って3回ぐらいやってもうどうでもいいや、明日の朝までやりまくろうよ」っていう感じの表情だったと思う。
 部屋入った途端にわたしは激しい尿意に襲われた。彼から逃げるようにしてトイレに駆け込もうとすると、彼にてをガッとつかまれて、引きずり込まれるようにしてバスルームに入れられた。
 今にも漏れそうで、わたしはその場に正座をしてぎゅっとアソコに力を込めた。
「足を伸ばして開いて」と、トシアキが言った。
「でも」
「いいから」
「オシッコ、漏れちゃう」
「ここならいいだろう?」
 トシアキは全裸になって服をバスルームの外に放り出した。わたしは服を着たままだけれど、ほとんど役に立っていないスカートはもうドロドロだ。なんどもちょっとづつオシッコを漏らしていたし、二人のラブジュースも絡みついている。
 わたしはまあいいやという気になって、後ろの床に手を突いて足を開いて延ばし、それから膝を曲げて浮かせた。アソコが丸見えになる。心の片隅には「恥ずかしい」なんて気持もあるんだけれど、いったいいつからだろう、わたしは見られること、そして見せることに悦びを感じる。
 彼は床とわたしの浮いた膝の間に足を差し込んで、ズルズルと前進、トシアキのペニスはまるで沈み込むようにズブリとわたしの中に入ってきた。
 わたしの背中に両手をまわし、後ろに反り気味だった上半身をおこす。わたしたちは密着した。
 腰を動かしにくいので刺激は少ないけれど、この密着感がたまらない。
「おまえ、身体は柔らかいし、アソコはフィットするし、最高だな」
「ありがと」
 ほとんど動くことなくじっと抱き合っていると、わたしは徐々に昇り詰めていった。
 彼も同じだったらしく、熱いものがわたしの中に吐き出された。
 あ〜あ、またやっちゃった。生で中出し。
 まだデキタことはないけど、こんなことばかりやってたらそのうち後悔するんだろうなあ。
 わたしはイクと同時に放尿していた。
 オシッコの匂いとお尻に広がるなま暖かい感触がわたしをまた興奮させる。
 はめたままで重ねた唇の感触に酔いながら、わたしはこのままどこまでも行ってしまいたい気分になっていた。
 しばらくそのままで余韻に浸っていると、再び彼がムクムクと大きくなってきたの。
「すごい回復力ね」
「キミのせいだよ」
 わたしは彼から離れ、服を脱いでソファーにおいた。その間彼はバスルームでバスタブにお湯をはりながら待っていた。
 バスルームはまだオシッコの臭いが充満していた。
 わたしはシャワーを取り上げ、床を洗い流そうとした。
「どうしたの?」
「だって、わたしの、オシ、ッコ・・。」
「このままでいいよ」
「だって、におうし、汚いし」
「汚い? だって、さっきまでキミの身体の中にあったんだよ。どうして汚いの?」
「そんな・・・」
 やばいなあ。わたしはスカトロの趣味は無い。でも、トシアキは・・・、もしかしてそういうケがあるのか?
 これまで気が付かなかったのはわたしのミスかも知れない。第一印象ではそうは思えなかったのに、こいつ、きっと演技していたんだ。あるいは、本性が表に出ていなかっただけなのかも知れない。ううん、たくみにオシッコをさせないままエッチにもつれ込まされた時点で気が付くべきだったんだわ。
「ま、初心者には無理かな?」
 トシアキはそういって、シャワーをわたしから奪って、床を流しはじめた。そして、わたしにもシャワーをかけ、自分でも浴びた。
 良かった・・・。
 オシッコだけならともかく、エスカレートしてウンチになったら、もう・・・。
 ウンチになったら?
 もしかして、それほどイヤじゃないかもしれない。
 わたしはチラとトシアキを見た。
 けれど彼は「初心者には無理かな?」と言った時点で割り切っているようだった。
 そうこうするうちにバスタブが湯で満たされて、わたしたちは仲良く入った。
 
 お風呂ではお決まりのいちゃいちゃごっこ。
 はめたり舐めたりしたけれど、トシアキはもう2回射精しているのでイカなかった。
(わたしはイカされちゃったけど)
 お風呂から上がって身体を良く乾かし、わたしたちはベッドでもう一度交わった。
 トシアキはもう一回ぐらいしたそうにしていたけれど、わたしは順くんとの約束もあったので、これで終わりにすることにした。
 別れ際に連絡先を教えてと迫られた。
 一瞬わたしは迷った。
 オシッコのことがなければ教えても良かったし、エッチそのものの相性は合うと思う。でもなあ。
 とはいうものの、旅先のアバンチュールとかではなく、トモちゃんを介せばわたしとの連絡なんて直ぐにつけられるだろう。だったら教えても教えなくても変わらない。
 わたしたちは電話番号を交換した。
 わたしから電話をすることがあるかどうか、今のわたしにはわからない。
 スカトロプレイを想像しながらオナニーするような事があったら、トシアキに一から教えてもらってもいいかもね。
 
 一人暮らしのマンションに戻ると、約束通り順くんが来ていた。そして、トモちゃんも。
 一瞬「3Pか」と思ったけれども、そうではなかった。
「わたしから彼を取らないで」と、トモちゃんは言った。
 半ば泣き出しそうだった。
「ゴメン。そんな気はなかったの」
 ゲーム感覚。というのでもない。よくわからない。
「あやまらないで、ね、わたしが惨めになる。元はと言えば、わたしがけしかけたことなんだから。でも、いざとなったら・・・」
 いざとなったら・・・。わたしと順くんのトイレエッチを目撃したら、穏やかではいられなくなった。そういうことね。
「じゃあ、そういうことで」
 と、順くんは、ただそれだけ言葉を残して部屋を出ていった。ちっとも惜しそうじゃなかった。そのことは少し不満だけれど、まあいいや。お互いがお互いを大切に思い、求め合う。その二人の仲をわたしはぶちこわしてまでセックスにふけりたいとは思わない。わたしだって特定の彼氏が出来たら大切にするもん。
 不思議なことに順くんが出ていった後も、トモちゃんは立ち上がろうとはしなかった。
「一緒に行かなくていいの?」と、わたし。
「なんで?」
「これから彼とラブラブするんじゃないの?」
「今日はもういいの。たくさんしてきた帰りだから」
 そうか。わたしだってトシアキとやったあとだもの。その時間は十分にあっただろう。まさか、わたしを待つ間にこのへやでなんてことは、と考えて、部屋の仲が全く乱れていないことに気が付いた。いやだいやだ。わたしったら何てことを考えているんだろう。
「じゃあ、コーヒーでも飲む? 泊まっていってもいいわよ」
 わたしがキッチンに向かいかけると、トモちゃんは後ろから抱きついてきた。
「え? なに?」
「ゴメンね、ゴメンね」と、彼女は言った。
「何を言ってるのよ。人の彼氏に手を出そうとしたのはこっちなんだから」
「そうじゃないの。わたしが好きになったのは。。。」
 強引に振り向かされて、わたしは唇を奪われた。
 女同士でまさかそんなことになるとは思っていなかった私は、抵抗する準備を何もしていなかった。
 トモちゃんの不器用なほどの力任せの接吻。ねじ込まれる舌。
 う、ウソオォ〜〜〜〜!
 トシアキとの余韻がまだ私の身体にはあちこちに残っている。
 抵抗できない。それどころか、身体から力が抜けていく。
 このまま身を任せたら甘美な悦びにトロケるかも知れないよと、頭の奥の方でしびれはじめていた部分が語りかけてくる。
 もういいや。本当に、もういい。どうなっても。
 わたしは床に押し倒された。
 仰向けになったわたしの太股にトモちゃんは馬乗りになり、わたしの服を脱がしはじめた。
 タンクトップもスカートも、一枚はがされたら、わたしは裸。
「あたし、本当は滅茶苦茶淫乱なの。男でも女でもいいの」
 トモちゃんはわたしの感じるところに手を伸ばしてきた。
 男とは全然違うツボを押さえた刺激。
 他人の手でオナニーをしているみたいな、悪魔のベロになぶられているみたいな・・・
 ああ、もうだめ。
 わたしはまた新しい世界を知ってしまった。