語り部は由美
高校1年生 夏の火遊び(2)





 わたしは不覚にもコーサンとのセックスに溺れてしまった。
 コーサンはこれまでの男の子達とは明らかに違っていた。女の子を悦ばせる事をきちんと意識していた。わたしがそのことを言うと、「当然だろ」と彼は言った。
 「相手を悦ばせてあげて、わけわかんなくなるほど感じさせてやればいいんだ。そしたら、女の子も、何だってしてくれる」
 「ギブアンドテイク、ってことね?」
 「若いくせに、そんな白けることを言っちゃダメ。気持ちのいいセックスと、そうでないセックス、どっちがいいかってことさ。お互い気持ち良い方がいいだろう?」
 悟ったことを言うくせに、売春の元締めはしっかりとやっていた。
 「由美ちゃんならきっと常連客がつくと思うけどなあ。オッパイもお尻も大きすぎず小さすぎずで万人向きだし、感度は良いし、積極的だし。裸になって寝てるだけなんて女は紹介したくないんだよね」
 コーサンと知り合って、色んな男と経験したいと強く思うようになった。セックスはひとそれぞれ違うからだ。けれど、ウリだけは嫌だった。売春をしている女の子を批判する気はない。お金が絡むかそうでないかだけの話であって、わたしはもうとっくに汚れていた。「愛し合ったひととしか肌を重ねたりしない」なんて主張するには、わたしは不純なセックスをこれまでに経験しすぎていたと思う。逃げられなかったこともあるけれど、避けようと思えば避けられたこともあった。にも関わらず、わたしはセックスがしたいために、流されてきたのだ。今更売春を責められない。愛の無いセックスという意味では本質的に同じだ。
 けれどもわたしは、ウリはしたくなかった。
 「お金払うんだから、当然やらせてくれる」と思っている男とすることは、違うと思った。
 どれだけたくさんの男が、わたしの魅力を認めて、「おまえとやりたい」って求めてくるか、っていうことなのだ。何もかもを抜きにしてセックスの底無し沼に沈んでみたいと思った。
 わたしがそう言うと、コーサンは「別に無理強いはしないよ。それに由美ちゃんは俺好みだしね。客に抱かせるのはもったいないよ」
 リップサービスなのか本気なのかわからなかった。
 「けれど、これは受け取っといてもらおうか。俺の店の秘密を知ったんだ。自分だけいい子きめられて、チクられたら困るんでね。由美ちゃんにも同じ穴の狢になってもらう」と、わたしはコーサンから1万円札を3枚渡された。わたしのアイデンティティが崩れるような気がして断りかけたが、コーサンの目が一瞬怖くて断れなかった。修羅場をくぐったやくざはこんな目をしてるに違いないと思った。
 わたしは黙って受け取った。
 ポケットにお金を突っ込んだあと、もう一度コーサンの顔を見ると、穏やかな目に戻っていた。

 「最近、コーサンのところに通ってるでしょ」
 美由紀が詰問口調でわたしに言った。夏休みを3日後に控えていた。
 短縮授業の午後を持て余すように、わたし達は学校帰りに公園に立ち寄っていた。歩くだけでもふらつくような小さな子供が母親の手を引いて前へ前へと進もうとしていた。手がほどけたらその場で前のめりに倒れてしまうだろう。
 わたしはコーサンと毎日のように身体を重ねていた。そのことで何か美由紀の気分を害してしまったのかとドキリとした。馴染めなかったクラスでの初めての友達。失いたくなかった。
 「ゴメン」と、とっさに口から出た。
 「なーに謝ってんのよ。でも、ま、隠し事は良くないわ。アドバイスのひとつもしてあげられなくなっちゃう」
 「アドバイス?」
 「上手でしょ、彼」
 わたしは黙って頷いた。
 「彼、そうやって女の子に色々仕込んでおいてから、商品としてウリに出すのよ。そういうことしたくないんなら、気をつけないとね」
 「ありがと。でも、もうやっちゃった」
 言ってから、わたしは何を言ってるんだろうと思った。
 確かにコーサンからはお金をもらった。この身体と引き換えに。だから、全くのデタラメではない。けれど、客をとった、ということでもない。いわば口留め料をもらっただけだ。たった一回。たった3万円。
 嘘つき! そういうんじゃないだろ!
 もう一人のわたしが、わたしを責めた。
 だけど・・・
 「そう・・・。由美ももうわたし達と同じなんだね」
 ため息と諦めをないまぜにしたような力ない微笑。意外な美由紀の反応だった。
 「・・・ごめんね」
 「馬鹿! 謝るくらいなら、最初からそんなことしなきゃいいんだ!」
 仲間だと思って欲しくてついた嘘。それに対する「ごめんね」だったのだけれど、もちろん美由紀に伝わるはずも無い。彼女は別の意味でわたしに「馬鹿!」と言ったのだ。心で噛み締める。もうなにも言い訳は出来ない。
 「済んだこと、仕方ないじゃない」と、それまで黙っていた梓が言った。
 「だって、由美まで引き返せない所に踏み込むこと無かったのよ」
 「しょうがないじゃない。もう引き返せないんだから」
 どちらかというとキツくて強引に見えた美由紀だったが、わたしのことを実はきちんと考えてくれていたんだと、この時初めてわたしは感じだ。
 一方、美由紀の強引さにブレーキをかけつつあった梓の方が、どちらかというと表面的なポーズをとる子だと知らされた。この子には気をつけなくちゃと何となく思った。
 「妊娠、病気、踏み倒し。気をつけなくちゃね。それから、お金の使い方も。急に派手になったりしたら、すぐにばれるわよ。それで学校やめた子だっているんだから。お金が使いたければまともなバイトもすることね」
 本格的になった夏の陽射しも、セミの声も、くっきりと地面に落ちた木の影も、時折髪をなぶる生暖かい風も、どこか意識の遠いところへ押しやられていた。売春は遊びでも幻想でもない。もてあますほどの厳しい現実を伴っているのだった。

 わたしはコーサンに客を紹介してもらった。宿泊料はタダでも、それ以外にお金がかかる。これらを稼ぐ必要があった。けれどもそれ以上に、美由紀に対する罪悪感があった。嘘をついて仲間ぶったことへの罪悪感だ。
 「いくら欲しいの?」
 5万円とわたしは言った。そして、付け加えた。ずっとこんなことをしたいとは思っていない。旅費が欲しいだけ。だから1回限りにしたい。
 ウリの相場は知らなかったけれど、コーサンが以前わたしにくれた3万円を思うと、1回で5万円は難しい話だと思っていた。
 「うーん。俺も紹介料を貰わないといけないしな。それを引いて5万円かあ」
 「無理、ですよね」
 「いやあ、全く無理、というんでもないけど、由美ちゃんにこの条件が呑めるかなあ」
 その条件とは、避妊せずに中で出す、というものだった。
 「それでいいです」
 「いいですって、気軽に言うなよ。妊娠とか病気とか、責任もてないぞ。本当にいいのかい?」
 「必ず妊娠するわけじゃないし、2度も3度もウリしたくないんです」
 「しょうがないなあ。じゃあ紹介するよ。ま、いざというときは相談に乗るけどな」

 しかし、客の都合でそれはキャンセルになった。
 「5万円、いるんだろ?」
 コーサンは、旅行から帰ったらここでアルバイトをするという条件で、仕度金という名目で5万円をくれた。
 「由美ちゃんは、どこかガラス細工みたいな危うげな脆さがあるから、やっぱりウリとかしない方がいいよ。客の方からキャンセルしてきたのも何かの導きみたいなものだろう」
 わたしは正直ホッとした。けれど、美由紀への免罪符を手にすることは出来なかった。
 「アルバイトって、何をするんですか?」
 「ウエイトレスだよ」
 売春の斡旋をするようになってから、コーサンはウエイトレスを雇っていないという。秘密が漏れるのを恐れたからだ。しかし、彼女達をウエイトレスがわりにもしたくなかったそうだ。
 「表向きはあくまで普通の喫茶店だからね。でも、ウリやってる子は、独特の雰囲気を客に伝えちまうんだ。表面取り繕ってもね。そういうものさ」
 だから、忙しいときはてんてこ舞いだったという。
 「わかったわ。アルバイト、お願いします」
 「うん。で、たまには夜の相手もね」

 そして、夏休みがやってきた。
 わたしは二人の薦めもあって、黄色いタンクトップのワンピースを新調した。タダでさえ童顔なのに、さらに幼く見えてしまう。二人のたくらみのように思えた。
 ワンピースの裾が膝の上5センチくらいの所でふわふわと風にあおられて揺れた。隠れているはずの太腿があらわになり、どきりとする。
 海へ向かう快速電車は、当時まだ冷房などついていなくて、窓は開け放たれていた。停車の度に汗が湧き出し、いつのまにかワンピースはわたしの身体に貼りついていた。下着がくっきりとうつる。
 乗客は徐々に少なくなってくる。線路は単線になり、快速電車は末端部に近付いて各駅停車になった。窓から海の匂いが漂ってきた。
 空席が目立ってくる。地元の人はほとんどもういないようで、残されているのは海水浴客がほとんどだった。海の匂いに釣られるように、車内が浮き足立って来る。
 いかにも不自然だった黄色いワンピースが、レジャー色の中に溶け込んだ。トイレのために席を立つと、男の子の視線が突き刺さって来るのがわかった。下着もボディーラインもくっきり出ているのはわかっていたけれど、もう恥ずかしくない。それにこの程度のことで顔を赤らめていたらなにも出来ない。わたし達はナンパされるためにやってきたのだ。これから3泊4日の間、わたしは多くの男の視線にさらされ、そして犯される。
 3泊で、少なくとも3人。うまく相手が見つかるだろうか?
 一人はもう決まっている。宿のお兄さん。でも、そんなんじゃなくて、わたしとやりたいって近付いて来る男の子に弄ばれたい。
 3泊4日の間に、5人とか10人とかと相手出来たら凄いだろうなとか思うと、もう濡れて来る。コーサンにすっかり女にさせられて、わたしは疼いた。

 目的地に着いたのは午後だった。私達は水着に着替えて海に出た。
 美由紀は白のビキニ。既に何度か肌を焼いていたみたいで、水着の白が小麦色の肌にまぶしく映えた。
 梓は背中が大きく開いたワンピース。プロポーションが良いので、胸の谷間がクッキリと強調されている。足とお尻の境界線もはっきりしていて、はみだしたお尻がかっこいい。
 わたしは、パレオの付いたビキニ。パレオをめくると前も後ろもシャープに切れこんでいた。当然毛の処理はしてあった。はみだすからだ。後ろなどほとんどお尻が見えていた。
 「わあ、大胆。恥ずかしくない?」と、梓。
 「もう何人にも見せたから、今更恥ずかしくないよ。見られてると思うと、濡れてきそうなぐらい」
 「バカモノ」
 私達ははしゃいだ。海への誘いがあってから、わたしは急速に彼女たちとの距離を縮めていた。今から思うと、彼女たち以外のクラスメイトは女子校という群衆の中に埋もれていて特にわたしを刺激したりはしなかったし、彼女たちは少し浮いているようだったけれどそれだけに結束も固そうで、わたしの入り込む余地がないように感じられた。だから、無意識のうちにわたしはこの新しい世界に馴染まないようにしていたのかもしれないと思った。
 だから美由紀や梓というクラスメイトと、海ではしゃぐと言うことは、当初の目的を忘れてしまいそうなほど楽しかったのだ。
 それはともかく、こんなことばかりをしていたのでは、男の子なんて調達できそうにないのじゃない?
 でも、そんな心配はいらなかった。
 美由紀がちゃんと声をかけられていたのだ。
 「問題は、相手が3人ということよね」と、美由紀が言った。
 「わたし達だって3人よ。何が問題なのよ」と、わたし。
 「宿のお兄さんの相手もしなくちゃいけないのよ」
 「それに、どんな人か分からないと、困るわ」と、梓。
 「大丈夫、みんなそれなりよ。外見はね。中身はどうか知らないけど。ま、もうすぐ飲み物を届けてくれるから」
 缶ジュースを両手に、すぐに彼らはやって来た。ひとり2本、合計6本。外見は確かにそれなりだったけれど、男3人がジュースをそれぞれ両手に持って砂浜をこっちへ向かってくる姿は、何となく滑稽だった。かわいいな、と思った。
 私達は適当に中身のない会話をした。
 中身はないとはいえ、幾ばくかの有効な情報を引き出すことは出来た。
 彼らはナンパを目的としていて、だからツインルームにそれぞれひとりで滞在していることが分かった。
 男の子達のグループの中に禍根を残さないために、こういった段取りをしているグループでないとダメなのだと、美由紀は言っていた。最初からナンパ目的ではないのにたまたまそう言ったシチュエーションになってしまった男の子達は、例えば、和室一部屋しか押さえていなかったりする。だから、結局誰かが誰かに遠慮して、最終的にエッチまで行かなかったり、ルックスの劣る子や話術が下手な子などが混じっていてその子があふれてしまったり、色々と問題があるのだそうだ。
 だから、1人ひと部屋取っている、ナンパ目的だから第一印象で女の子が引くような劣る子は最初から混ぜない、そして目的が目的だからちゃんとアレも用意している、そんな男の子を選ばないとダメなのだそうだ。うーん、たかが一夏のセックスにそこまで考える美由紀はすごい。
 バカ話の後は、打ち合わせ通り美由紀に任せた。
 「もうすぐ夕食だから、私たちは宿に戻るわ。8時にここでね。花火を忘れちゃいやよ」

 「お気に入りの人に、ジュースを渡すように」
 夕食後、美由紀は事前に男の子達にそう伝えてあったのだと言った。
 「気に入らなければ、すっぽかしてもいいのよ」とも言った。「他の人が良ければ、交代もできるし」
 あまり誰がどう、という風に、わたしは印象を強く抱いていなかった。
 もう一度あって、その場の雰囲気で決めるのだと思っていたから。
 わたしにジュースを渡してくれた人って、どんなだったかしら。はっきりと思い出せない。確かに容貌は悪くなかった。その中で、わたしにジュースをくれた子は、線が少し細かった。その程度しか思い出せない。3人とも、嫌だと感じる人はいなかったので、誰とそういう関係になっても悪く無いと思っていた。
 後腐れ無く、一夜限り燃え上がるエッチ。深く考える必要は無い。
 そう言うと、「一夜限りだから最高のエッチをしたいんじゃないの」と、梓がいった。それもそうか。
 さて、残された問題は、宿のお兄さんの相手である。美由紀が頭を抱えた。
 ナンパ男とやった後でよければ、わたしが寝てあげる。
 わたしがそう言うと、美由紀も梓も目を丸くしていた。
 宿の業務はそんなに早く終わらないので、由美がそれで良いのならと、わたしのダブルヘッダーが実現した。
 早くも初日に二人と、そう思うとお股がジュンとしてきた。
 わたしって、やっぱりいやらしい。
 私たちはお風呂で軽く汗を流して、待ち合わせの海岸に向かった。
 相手がその気になってくれないと困るし、こっちはそのつもりで来たのよと伝えるために、それなりの格好をした。
 わたしは素肌にTシャツ。ブラはつけない。夜なので乳首までは見えないけれど、先っぽは確かにTシャツを内側からプクッと盛り上げていた。下はパレオを外したビキニだけを着た。
 男の子達は先に来ていて、手持ちぶさたそうに、火のついていない花火やライターを持っていた。傍らに鉄のバケツが置いて、水まで張ってある。用意万端なのだ。
 花火はそんなにたくさんはなくて、すぐに終わってしまった。
 花火そのものはそんなに楽しいものじゃなかった。誰も花火なんか楽しみにしていないのだ。その後のことが大切なのだ。
 でも、何もすることが無くなってしまうと、手持ち無沙汰になってしまった。
 少し離れたところでいくつもの花火グループがあり、視線をそれらに泳がせていると、やっと花火を見ているという気分になってきた。波の音を聞く余裕も出来た。
 ポツリポツリと自己紹介風な会話が始まる。例えば、学校のこととか、趣味のこととか、どこに住んでいるとか、そんなことを語り合った。
 彼氏とかいるのと訊かれて、美由紀はエッチ友達ならいるけど特定の人はいないと答え、梓は彼はいるけれど彼以外の人と付き合うのも好きで、悪いことしてるようでドキドキすると言い、わたしはいないと返事した。
 それぞれがそれなりに期待を持たせる答え方をしたかな、何て思った。
 ちなみに、梓には今付き合っている人なんかいなくて、わたしには彼氏がいる。
 この旅行に誘われたときはいなかったんだけど、その後出来ちゃったのだ。でも、その彼氏とはまだエッチはしていない。告白されただけだ。コーサンとのことがあったので、少し迷ったけれど、お付き合いすることにオーケーした。
 いつしか私たちは二人ずつ寄り添って座っていて、わたしの隣にいる男の子はキョウタと言った。嘘か本当か分からないけど。
 キョウタはわたしのお尻が気になるらしくて、視線が時々そちらへ行く。
 わたしはTシャツをおへその上くらいまでたくし上げ、裾を束ねてダンゴ結びにした。
 「単に無防備なの? 誘ってるの?」と、キョウタ。
 「どっちだと思う?」と、わたし。
 「誘ってるでしょ?」
 「ためしてみたら?」
 そんなやりとりがあって、わたしはキョウタと唇を重ねた。
 キョウタはいつまで経っても舌を絡めてこないので、わたしは唾液を口の中にため、唾液ごと自分の舌をキョウタの口の中に押し込んだ。
 ごっくん、とキョウタののどが鳴った。
 キョウタは一瞬唇を放した後、今度は首筋にキスをしてくれた。そして、舌先で時々肌を嘗めながら、唇がどんどん下へ下がってくる。
 すぐに、彼の手がわたしの乳房に。
 しばらく軽く揉んだりまさぐったりしていたその手は、Tシャツの裾からじかに胸にはい上がってきた。
 あ、気持ちよくなってきた。
 時々背中がフフッと浮き上がってしまう。
 花火のグループはすっかり数が減ったけれど、目の前には美由紀と梓がいる。あまり露骨になってもなあ、そう思ったけれど、見ればあと二組もすっかりその気になって絡み合っていた。
 梓は胸を揉まれて小さく開いた唇から時々かすかな声を出しているし、美由紀は一番感じるところを触りっこしている。
 女の艶っぽい表情は、それを見ている女も感じさせるのだ。
 わたしはたまらなくなって、彼のペニスに触れた。固くて反り返っている。
 欲しい、とわたしは思った。コーサン以外のそれにはもう何ヶ月もご無沙汰だった。
 彼は海パンにシャツをラフにひっかけていただけだったので、その海パンに手を差し込んだ。
 もう濡れている。かくいうわたしも、びちゃびちゃだけど。
 わたしは彼を握り、カリの部分がわたしの指とこすれ合うように、何度も上下させた。
 あふれてくる彼のラブジュース。
 「慣れてるんだね」と、キョウタ。
 「処女だとでも思った?」
 「そうじゃないけど、いきなりだったから」
 「だって、欲しいんだもの」
 遠慮がちだったキョウタのスイッチを押してやった。ようやく彼の手がわたしのあそこに伸びてきた。
 「もうこんなに濡れてる・・・」
 「だって、キスされてオッパイ触られたら濡れるわよ」
 パンティをずらして、すぐに直に触ってくる。彼が指を動かすと、いやらしい音がした。コーサンのようなテクニシャンじゃないけれど、どこをどんな風に触られても感じてしまう。わたしは自分で思っていた以上に興奮していた。
 あ、ああ、あ、うう、
 穴のまわりを指がスウーと動き、おマメをいじられ、それから指を奥くまで突き刺される。
 ああ、この感覚。自分でやっても気持ちいいけれど、やっぱり何かが違う。
 すぐそばで友達も犯されている。そして、同じように犯されている自分を友達が犯されながら見ている。
 そんなシチュエイションが、わたしをどんどん興奮させていった。
 これまで、外でやったことは何度もある。けれどそれは、人から見えにくい所を選んでいた。もしかしたら、不意に誰かがやってきて覗かれるかも知れない。その程度のスリルだった。それだけでも充分興奮した。
 今は、それ以上。
 だって、友達がすぐ横でやっていて、お互いそれを見ながら、快感に酔いしれてるんだもの。

 「かわいい顔して、むちゃくちゃかんじやがって」と、嬉しそうにキョウタが言った。
 「もっと、感じさせて」
 「じゃあ、嘗めっこしよう。フェラ、できるんだろ?」
 「うん」
 私たちは下半身丸出しになって、それからキョウタに下になってもらった。
 わたしの顔の下に、キョウタのオチンチン。
 わたしのアソコの下に、キョウタのお口。
 この固くなったオチンチンが、やがてわたしの身体を貫くのだ、そう思うとついむしゃぶりついてしまう。
 キョウタはしばらく首だけをあげるという苦しい姿勢で嘗めていてくれたけれど、しばらくして「四つん這いになれよ」と言った。
 入れてくれるの? それとももっと嘗めるの?
 わたしはいやらしい妄想にワクワクしながら、言われたとおりにした。
 キョウタはお尻の穴に舌を滑らせた。
 あ、ダメ、そこも感じるの。
 わたしはコーサンにすっかり開発されていた。
 エッチな気分が盛り上がって、そしてそれぞれの部屋へ。そんなつもりだったけれど、盛り上がりすぎて砂浜セックスになってしまった。
 わたしは後ろから突き崩されるようにして、果てた。
 キョウタはまだ達しなかったようだけれど、力の抜けてしまったわたしは四つん這いスタイルを維持することが出来なくて、仰向けに寝転がった。
 背中の砂がわたしの汗を吸い取ってゆく。
 キョウタが上から覆い被さってきて、再びわたしの中に入ってくる。
 一生懸命な彼の姿を見ると、会話の時は少し気取っていたくせに今は没頭しているのね、なんて思えて、少しかわいくなってくる。
 とりあえず一回イッたわたしは、早く終わらないかなあなんて思っていたのだけれど、再び身体が熱くなり始めた。
 2度目は感度曲線がぐんぐん上昇していく。
 彼の腰の動きが急に小刻みになり、そして止まった。
 あ、こいつ、生で中出ししやがって。
 それでもわたしは雰囲気を壊さないようにさりげなく、そして素早く、おどけたフリもしながら、海に入った。「身体、火照りすぎちゃった」とか言い訳しながら。
 身体にくっついた砂を波に洗わせながら、指で彼の樹液を掻き出した。
 美由紀と梓が軽くわたしに声をかけて去ってゆく。
 梓は彼の部屋にこれから行くといい、美由紀はなんと別の約束があるらしい。よくやるよ。
 わたしも宿のお兄ちゃんの相手をしてあげなくちゃ。
 熱くなった身体は海に入ったくらいではおさまらず、これから別の人とエッチするんだと思うと、またワクワクしてくる。
 キョウタは砂浜に足を伸ばして座り、後ろに手をついて上半身を支えるようにして、わたしを視線で追っていた。
 わたしが「バイバイ」と声をかけると、彼は「またあって欲しいんだけど」と言って、小さくたたんだメモを差し出した。
 「いつの間にこんなもの用意したのよ」
 「別れ際に渡そうと思って」
 私たちに会いに来る前に作っていたらしい。
 ふうん、それなら逢ってあげてもいいかな?
 簡単にやらせてくれる女だと思って、いま慌ててメモを作ったんなら、もう一度逢ってもいいかな、なんて気にはならなかっただろう。
 「今度はちゃんと避妊してよね」と言って、わたしはメモを受け取った。