語り部は由美
中学2年生 処女喪失(1)





 由美です。これまでのわたしのエッチ体験物語、どうでした?
 刺激的だった? それとも、「なあんだ、結局処女のまんまじゃないか」って、がっかりした?
 福島クンとは、夏休み前に別れてしまいました。遊びのようなキス、遊びのようなフェラ、そしてクンニ。なんといってもこの前まで小学生だったんですからね。そうそう先へ進めません。いや、今の子だったら、やっちゃうかな?
 わたし達もやろうとしたんですよ。でも、うまくいかなかったの。彼はどうしていいかわからなかったし、わたしも恐くて腰を引いちゃってたし。そういうことが2〜3回もあれば、気まずいし、白けるし。
 それに、既に書いているけれど、「まだ中学一年生なのに」って思いが強かったんですね。
 けど、彼と別れてからも、相変わらずオナニーはしていました。いざとなったら恐いくせに、それでもセックスへの興味はますます増していっていたし、オナニーの気持ち良さからも離れられなかったから。
 で、いよいよロストバージンです。
 だけど、ちょっとショッキングなタイトルでしょ?
 そう、輪姦されちゃったんです。
 ひどい出来事と言えばひどいんだけど、実は今でもそんなに悪い思い出ではないんです。こんなバージンの失い方をしたせいで、きっと淫乱なわたしが出来あがったのかもしれないなって思います。セックスが大好きで、たくさんのおちんちんを突っ込まれて、イッてイッてイキまくって・・・。
 おっと、先のネタをバラしたらダメですね。では、お楽しみ下さい。

 山之内君と初めてのキスを交わしたのは2カ月前だった。夏休みを数日後に控えていた。
「結局、おまえ、彼女できなかったなあ」
「彼女無しの夏休みなんてきっとつまらないぞ」
 たたみかけるようにクラスメイトたちは彼をからかった。
「お前らだっていないじゃないか」と、彼は反論した。
「ああ、だからつまらない夏休みだなって言ってるんだよ。別に、お前のことだけを言ってるんじゃない」
「だけど、山之内は、好きな子いるんだろう?」
「そうそう、告白してしまえ。断られて気まずくなったって、どうせすぐ夏休みだろ。2学期にはほとぼりも冷めてるって」
 なんて会話でその気になってしまった、とあとでわたしは教えられた。
 ともあれわたしは告白され、わたしは「付き合ってもいいわよ」と返事していた。
 それまでわたしは彼のことを特に意識はしていなかった。目立たない男の子だった。いつも何人かで一緒にいる、その中の一人だった。女の子達からは「増田がいるグループ」という呼ばれ方をしていた。
 増田は明るく、グループをひっぱっていくリーダーみたいな存在だった。性格のためなのか、ちょこまかと動き回るその姿は、みんなをぐいぐい引っ張っていくタイプのリーダーではなく、自ら動くその姿にまわりが引っ張りまわされているという感じだった。女のこたちがわざわざ「増田がいるグループ」と呼ぶのは、彼に注目していたからに他ならない。あまり男くさくなく、どちらかというと「ボーイッシュな女の子」という雰囲気が率いるグループは異色だったのだ。
 山之内君と個人的に接したのは、だから告白されてからのことだ。けれど、付き合ってみると、わたしは彼にどんどん惹かれていった。真面目でもなく不真面目でもない、成績はそこそこ、スポーツは何でも出来るけれどとりたてて上手いというわけでもない。ただ、彼のわたしを真っ直ぐ見つめる視線に、彼の気持ちが思いきり込められているようで、フラフラとなってしまうのだ。
 優しい笑顔の山之内君。けれど、その視線には突き刺さるほどのわたしへの感情が宿っていた。
 キスは、わたしが誘った。
 山之内君がわたしに告白をして、わたしがオッケーしたことは、あっという間にクラス中に知れ渡った。冷やかされもしたが、増田のグループの連中には、祝福された。
 下校時には、決まって誰かが「がんばれよ」とか「仲良くしろよ−」などと言いながらわたし達を送り出してくれた。
 外からは、さぞ仲睦まじいカップルに見えたろう。けれど、ただそれだけだった。一緒に学校を出ても、途中まで並んで歩くだけ。校門から真っ直ぐに続く古い住宅街の道。2車線ギリギリの車道の両側に、あまり広くない歩道。住宅に混じって小さな本屋や文房具や、そしてパン屋。話す内容といえば、学校のことやテレビの話題ぐらいだ。やがて道は行き止まりになり、両サイドに分かれる三叉路につく。すぐに二人の通学路は別れてしまう。わたしは左へ、彼は右へ。立ち話ぐらいはするけれど、「じゃあ、また明日」「バイバイ」てな具合に、あっさりと左右に分かれた。左へ行けばすぐに田園風景。右は駅へ続く道で、すこしづつ賑やかになる。
 こんな状態で夏休みになったらどうするの?
 わたしは不安になった。付き合い始めたばかりで、帰宅後に電話のやり取りをすることも無ければ、デートだってしたことが無い。告白から今日まで、日曜日が一回も無かったのだから仕方ないけれど、だからって夏の予定も決めないままで夏休みに突入してしまったら、そのままになるんじゃないの?
 プールへ行く約束とか、映画を見に行こうとか、それくらいの予定があってもいい。いや、あるべきなのだ。夏のデートを二人であれこれ計画する。それって、恋人同士として当り前のことじゃないの?
 夏休みの前日になっても、山之内君はそういう話題をしなかった。
 もしかしたら、わたし達の間には決定的な出来事が必要なんじゃないかと思った。
 だから1学期最後の日、右と左に分かれるいつもの場所で、わたしは「ねえ、キスしてよ」と言ったのだ。
 彼は一瞬困ったような表情になり、きょろきょろと回りを見まわした。人通りはある。その中にはわたし達の通う学校の制服も混じっていた。
 こんな場所では山之内君には無理かもしれないな、そう思った途端、彼の顔がぐんぐん迫ってきて、わたしは唇を奪われた。
 山之内君の小刻みに震える振動が、唇からわたしに伝わってきた。
 わたしも初めての時はそうだったな、なんて思ったりした。
 彼のキスは、不器用だけど、とても丁寧なキス。触れるか、触れないか、というようなかすかな接触のあと、ふんわりと押し付けてきた。そっと背中に手を回された。その手に、ゆっくりと力がこもる。どれくらいそうしていただろうか。唇を離す直前には、わたし達はきつく抱き合い、唇もベッチョリとぶつかりあっていた。彼の性格そのままのキスのような気がした。
 彼になら抱かれてもいいと思えた。抱かれたいと思った。
 福島クンとうまくいかなくなってから、わたしは何人かの男の子から告白された。断る理由がなかったので付き合ったりもしたけれど、それほど心はときめかなかった。デートを繰り返すうちにキスされたりもした。好きだと言われ、求められることは嬉しかったけれど、ときめかなかった。
 唇を許したら、みんなその先を求めてきたけれど、わたしは応じなかった。福島クンにフェラチオをしたときのような激しい感情が沸かなかったからだ。
 スカートの中に手を入れられたことはある。毎日のオナニーで身体の悦びを十分知っていたわたしは、濡れた。感じた。でも、声を出すのだけは我慢した。バージンを上げるのはキミじゃないの。わたしの中のわたしがそう告げたからだ。
 でも、今。わたしは思いっきり感じている。キスしただけなのに。わたしのアソコはジンジン痺れていて、触られてもいないのにびしょびしょになっていた。

 2学期になった。
 夏休みは終わったけれど、昼の熱気はまだまだ夏だ。教室はまだ夏休みの延長線上で、わたしたちは浮かれていた。
 わたしと山之内君の間には特に進展はない。デートはしたけれど、あの情熱的なキスの再現すらなかった。奥手? シャイ? 色んな言葉を思い浮かべながら、けれど、夏休みが終わって毎日顔をあわすようになれば、わたし達は一歩進んだ関係になると、わたしはなんとなく感じていた。
 その「なんとなく」は間違っていなかった。
 相変わらず短い下校デートを繰り返していたわたしと山之内君だったが、彼の誕生日を一週間後に控えたその日、「家でパーティーをするから」と、誘われた。そして、キミさえよければ、キミが欲しいと彼は言った。
 その時わたしは痛いほど彼がわたしを欲していたことに気がついた。わたしの中のどこかでずっとそれを察知していたのだろう。それが「なんとなく」というあやふやな意識となってわたしを支配していたのだ。
 わたしは黙ってうなずいた。
 それは、恥ずかしくて顔を伏せたのか、うなずいたのか、区別が付かないほど小さな動作だったと思う。動作は小さくても感情は大きく波打った。
(わたしを、あなたのものにして)
「ずっと由美のことを欲しいと思っていた、けれどもどうやって求めていいか分からなかった。求めて嫌われたらどうしようと思うと何も言えなかったしできなかった。誕生日にかこつけて「キミが欲しい」なんて言うのは変だと思う。けれど、キミを求めるきっかけが必要だったんだ」と、彼は言った。
「いつでも、あげたのに」と、わたしは言った。彼の目を見ることが出来なかった。
 そして、こんなわたしでいいの? と、声に出さずに彼に問いかけた。
 あなたのことを想うと濡れ、そして自分でしてしまうような女の子なのよ。
 そう思いながらも、期待感で鼓動が早くなっていった。
「出来れば、泊まっていって欲しいんだけど」
 出来れば、と山之内君は遠慮がちに言った。
 それはわたしの思い及ばない言葉だった。ただエッチするだけじゃない。朝まで一緒にいる。なんてロマンチックなんだろう。一晩中、ずっとずっと一緒にいるのだ。
 だけど今までわたしは外泊なんてしたことがなかった。どうやったらそんなことが出来るだろうか。そう思いながらも、気持ちは傾いていく。朝までふたりでいたい。
「わたしもそうしたいんだけど、男の子の家に泊まるなんて。親がいいって言うわけないよ。それに、山之内君だって、家にパパとママがいるでしょ?」
 それに対して、彼はこんな計画を提案した。
 彼の両親は午後10時くらいには寝るらしい。だから、パーティーの開始を午後9時くらいにする。盛り上がるのは彼の両親が眠ってからだ。現実問題として、塾に行っている友達とかもいるから、それくらいの時間でないと集まれない。パーティーそのものが2時間程度としても、クラスメイトばかりだから全員自転車で帰れる距離であり、問題は全くないだろう。
 パーティーには女の子も呼ぶ。わたしと親しい子がいい。わたしはその子のうちに泊まっての、学校の共同研究課題の追い込みをするとか理由を付けて、泊まることにする。
「うまくいくかしら」
「さあ」と、山之内君は、計画を発案しておきながら不安げだ。
「いいわ、そのとおりにする」
要するに、わたしの演技力次第だ。彼が心配したところで、わたしの両親を説得できるかどうかはわたしにかかっている。
 友達がたくさん集まったパーティーで二人きりになる算段も、彼がぼそぼそと提案してくれた。
 パーティーがお開きになったら、わたしはかたずけを手伝ってから帰るから、とみんなが帰ったあとも残る。
 山之内君とわたしの仲は公認だし、額面通り彼女が彼のパーティーのかたずけを手伝うのだと受け取られても不自然じゃないし、少し勘が良ければ、このあと二人だけで過ごすんだなとピンとくるだろう。
 「ね。このセンで行こう」
 「うん」
 良くできた筋書のようでもあり、そうそう上手くいくだろうかという不安もあった。けれど、ふたりでずっと朝までいられるというのはすごく魅力的だった。彼とセックスしたいという思いも強くあったけれど、それだけじゃなかった。外泊をしたことのないわたしにとって、ひとつの夜をふたりで過ごすというのは、とてつもなく長い時間のように思えた。明るい空の下でのデートはとても短く感じられた。それが、はじめて長い夜を一緒に過ごすのだ。
「由美ちゃんと仲が良くて、しかも僕に呼ばれても不自然じゃない女の子って、いるだろうか」と、山之内君はさっそく招待者を物色し始めた。
 幸いそれに合致する人がいた。
「咲ちゃんと増田を呼ぼう」
 「あ、それがいい」
 わたしと咲チャンは小学校から一緒で、何でも話せる仲である。しかも彼女は増田と付き合っていた。わたしの気持ちも分かってくれるはずだ。彼女の家に泊まると言えば、親もウンと言わざるを得ないだろう。
 一方増田は、山之内君と小学校が一緒。わたしと山之内が付き合うようになって、わたしは増田と知り合った。彼は恋人にしたいタイプではないけれど、男女間の友情が存在すると断言できるような、そういう友達になった。
 限りなくボーイッシュな女の子というのがわたしのイメージで、実は繊細なんだけれど、ポンポン遠慮のない事を言ったり、こうと思うとすぐ行動する。これで根ががさつだったら取り返しが付かないけれど、もとが繊細なのだ。
 山之内君を通じて知り合った増田のことを、男女の壁を越えた友人だと感じていた。だから、山之内君は山之内「君」なのだけど、増田は増田「君」ではないのだ。おい増田、なんだよ、って呼び合える仲。
 わたしのこうした繋がりのせいで、いつしか増田と咲チャンがひっついてしまった。
 それにしても、わたしも山之内君も、よくまあこんな事になると一生懸命考えるよなあ。数学の問題をこれくらい真剣に考えれば、もっと成績も上がったかも知れない。でも、そうじゃない。エッチのためなのだ。...ちょっと、恥ずかしい、かな?
 でも、好きな人とするために、ここまであれこれ考えられるなんて、私たちって純粋なのねと想い、同時にスケベなのね、と思ったのだった。

 パーティー当日。
 それは彼の部屋で行われた。山之内君は一人っ子で、そこそこの大きさの部屋を与えてもらっている。
 それでも男女各3人というのは、少し狭い。
 部屋はカーペット敷きで直に座れるのだが、3分の1位をベッドが占めていた。
 私たちは長方形の座卓を取り囲んだ。ベッドの縁にもたれかかっているのが増田と咲ちゃん。その向かいに、金田君と直子。わたしと彼は部屋の奥、座卓の短い方の辺を二人で共有しながら、ぴったりと寄り添っていた。わたしは、彼の隣で密着感を楽しんでいた。必要以上にくっついていたかも知れない。彼のためのパーティーなのに、わたしはまるで自分が祝福されているように、浮き足立っていた。
 山之内君が言ったとおり、10時前に彼のママが挨拶にやってきた。先に休ましてもらいますが、あまり遅くならないように帰りなさい、わたしたちはうるさくても平気で寝られるけれど、ご近所のこともあるから、ほどほどにして大騒ぎしないように。そう言って彼のママは眠りに行ってしまった。
 山之内君と増田がニヤリと笑い、アルコールが登場した。
 幼稚園のお誕生日会じゃないから、ハッピーバースデーの合唱も何もなく、本人の希望でプレゼントなども不要とのことで、お茶とお菓子でビデオを見たりトランプをしたりと、少しばかり盛り上がりに欠けていたけれど、アルコールの登場が場を一変させた。
 11時を過ぎて、咲チャンと直子が帰ることになった。
 わたしは玄関まで見送り、咲チャンに「頼むね」と、ささやいた。
 彼女は「まかせて。がんばってね」と、言った。
 わたしは彼女の家に泊まっていることになっている。もし親から電話がかかったら、「風呂に入っている」とかなんとか電話に出られない言い訳をしてもらうことになっていた。
 パーティー会場である山之内君の部屋は2階で、その部屋への階段を上がりながら、少しふらつき、息が切れることにきが付いた。酔っているんだ。ふらつくのが心地よかった。
 そして、このわずかの時間、わたしが玄関まで往復している間に、部屋の様相が一変していた。
 男3人が残された部屋で、山之内君はソファーの上で眠ってしまっていて、同じクラスメイトながらさほど親しくない金田君は、地べたに座り座卓にもたれながら、ほとんど閉じかけの瞳でさっき付けたばかりらしい新しいビデオを見ていた。
 「陥落」と言って増田は、両手をオーバーにあげて見せた。
 「わたしも、ちょっと酔ったみたい」
 さっきまで増田の隣には咲ちゃんがいた。今は空席。ベッドの縁にもたれるのがラクチンそうで、わたしは手招きされるまま彼の横に座った。
 「どうするの?」と、増田は山之内君を指さした。「今夜、約束してたんだろ?」
 ズバリ指摘された。酔っていなかったら赤面していたところだ。
 でも、酔っていることもあり、親友感覚でもあった増田が相手だから、油断していた。
 「まあ、ね。」と、わたし。
 「起きるまで、待つ?」
 「うん、少しぐらいは」
 「じゃあ、それまで一緒にいてあげる。」
 「ありがと」
 「ちょっと、呑もうか」
 増田は身を乗り出して、わたしのグラスにウイスキーを注ぎ、小さくなった氷をグラスに放り込んだ。水は氷が溶けたのを使う。
 「でも、わたしも陥落しちゃったら、まずいし」
 「ゆっくりしたペースで飲めばいいんだよ。ちょっと酔って、気持ちいいだろ? それが冷めない程度に」
 「そうだね」
 「少し酔ってる方が、痛くなくて感じるんだって」
 「わあ、エッチ」
 「お前もエッチだよ」
 「まあね」
 会話が途切れると、もはやだれも見ていないビデオの台詞や音楽がやけに大きく聞こえる。時折、間の抜けたように、寝息が混じった。金田君の寝息だった。それでも彼は主観的にはビデオを鑑賞しているらしく、お、とか、ああ、とか声を立てる。でも、次の瞬間にはまた目を閉じていた。
 「キスとか、もうした?」
 「うん」
 「その先は?」
 「少し」
 充血しはじめた目をこちらに向けて、興味深そうに増田は顔を近づけてきた。少し息がアルコール臭い。
 「少しって?」
 「いいじゃない、そんなの」
 「教えてくれても、いいじゃない」
 「えっと、」と、わたしは少し考えるフリをしてから、ゆっくりと言った。
 「胸を触られて。。。」
 考えるフリ、ではなくて、実際考えていた。思考が随分鈍っていた。
 「こんな風に?」と、増田はわたしの右の乳房に手を添えて、ぎゅっと握った。
 「あん、違う。山之内君はもっとそうっと、最初は下から持ち上げるようにして」
 わたしは夏休みのデートを思い出しながら言った。
 恋人でも何でもない増田に、胸を揉まれているという実感があまりなかった。再現ビデオのように、わたしは山之内君に胸を触られていた。
 「こんな感じ?」
 「そう、そんな感じ。あん、やめてよ。変な気持ちになるじゃない」
 ここで増田はいったん手の動きを止めた。でも胸から手を離さない。あとで思えば、偶然かも知れないけれど、上手いやり方だった。手を離してしまえば、そこから先に進まなかっただろう。
 「それから? それで終わり?」
 「それから、服の中に手を入れて、直に触ろうとするの」
 「許したの?」
 「許したときもあるし、そうでないときもある」
 増田はわたしのシャツのボタンをひとつ外し、ふたつめも外そうとした。
 「ボタンはひとつだけ。それで胸元から手を入れてくるの」
 「ひとつだと、触りにくいだろ?」
 「それくらいでいいの。それ以上だと、エスカレートしそうだから」
 「でも、本当はちゃんと触ってもらいたかったんだろ?」
 「...うん」
 気が付いたらボタン全部を外されていた。増田は背中に手を回してブラのホックも外し、拘束をとかれたブラは簡単にまくり上げられた。
 「乳首、立ってる」
 「だって、思い出しちゃったんだもの」
 「いつもこんなの? それとも、ちょっと興奮してきた?」
 「バカ!」
 正直言って、ちょっと興奮してきた。増田は山之内君。山之内君は増田。わたしの中の記憶と現実が交錯した。
 もちろんこの手が山之内君ではなく増田なのはわかっているけれど、山之内君のことを思いながら触られていると、何故か違和感がない。
 「ねえ、咲ちゃんともこんなことしてるの?」
 「してるよ。....こんなことも」
 増田はスカートの中に手を入れてきた。
 「うそ。咲ちゃんが許すわけないよ」
 「うん。めったに許してくれない」
 「ときどきなら許してくれるの?」
 「今までに3回だけ」
 3回だけ、というのが妙にリアリティーがあって、わたしはクスクスと笑った。
 「おかしい?」
 「ごめんごめん。おかしくなんかないけど」
 「でも、笑ってる」
 「あは、ごめんごめん」
 酔っているせいなのか、妙におかしかった。けれど、何がおかしいのかわからなかった。現実感がどんどん消失していった。
 「おしおき」
 増田はパンティーの上から、わたしの感じるところを掌で包んだ。
 「ちょっと、それはやりすぎよ、ねえ」
 「でも、濡れてる」
 「エッチなことばかり言うからよ、言わせるからよ」
 「違うよ。お前がエッチだからだよ。最初からその気になってるんだよ」
 その通りかも知れない。だって、気持ちいいもの。わたしはオナニーに習熟してしまったことを後悔した。感じることを知らなければ、きっと恐くて気持ちが悪くて、増田の手を拒否しただろう。
 わたしは山之内君にあげるつもりだった。けれど、彼は眠り込んでいて、増田の指にもてあそばれている。それは悪い気分ではなかった。
 「咲チャンと、はじめてしたのはいつ?」
 わたしは話の方に彼の意識をそらそうとしたんだけど、効果はなかった。
 「ファーストキスの時、そのまま」
 「ウソ!?」
 「ホント。俺って咲が初めてだったから、キスしたあとどうしていいか分からなくて、やめられなくなったんだ。咲も嫌がらなかったし。」
 「へえぇ....あ、感じる」
 突然、増田がパンティーの横から指を入れてきた。
 「すごい。無茶苦茶濡れてる」
 「だって」
 増田が指でかき回すと、クチュクチュと音がした。
 「ぶわあ!」と、大きな声を出して、眠っていたはずの金田がこっちを見た。
 ギクッ!
 でもすぐに金田はまた眠った。顔だけビデオの方を見ていたのが、身体ごと床に崩れた。
 ドキドキ!
 「ばれなかったかな?」と、わたし。
 「大丈夫だよ」
 そうだろうか。見られたかも知れない。気づかれたかも知れない。
 そう思うと、余計に興奮してきた。
 「咲ちゃんは触ってくれる?」
 わたしは膨れ上がっている彼のものに、手を添えた。
 「あんまり。2回目の時触らせたら、俺が極度に興奮しまくって、止まらなくなったから」
 「わたしは触ってあげるよ」
 「もう、されてもいい、そう思うわけ?」
 「そんなこと考えもしなかった。ただ、触ってみたかっただけ」
 「生で?」
 「ううん。ズボンの上から」
 「じゃあ、まだ見たこと無いんだ」
 「うん」
 わたしは嘘をついた。見たことないどころか、フェラの経験だってある。
 「見せてあげるよ」
 彼はファスナーをおろし、器用にそれを引っぱり出した。
 わたしはちょっと感動した。
 「おっき。こんなの入らないよ」
 「触って」
 「うん。なんか、ぬるぬるしたのが出てきたよ」
 「お前も濡れてるだろ。だから、入るんだよ」
 「知ってる」
 「入れてもいい?」
 何よ、それ。どうして増田がわたしの中に入ってくるのよ。そんな風に思ったけれど、わたしは「いいよ」と、答えていた。
 「本当に、いいの?」
 「良くないと思うけど、なんか、入れて欲しい。」
 ばか、わたしったら何を言ってるの?
 わたしは山之内君にあげるの。
 誰かが叫んでいたけれど、別に増田でもいいやという気にもなっていた。
 というか、増田なら嫌じゃない、そう思ったのだ。
 増田はわたしに覆い被さってきた。唇を吸われながら、ゆっくり倒されてゆく。
 わたしはだんだん息が荒くなってきた。
 頭の中で、山之内君に抱かれている想像シーンや、山之内君を想いながら自分でしたことなんかがぐるぐる回っている。
 変な感じ。
 「咲はこういうことさせてくれないんだ」
 そう言いながら、増田は乳首を吸ったり嘗めたり噛んだりした。
 わたしは、ここがどこかということを忘れたように、声を出した。
 「気持ちいいの? 感じる?」
 「うん」
 ふと我に返り、山之内君を見る。良かった、寝てる。
 山之内君の寝姿を確認して、わたしはまた感じてきた。
 増田はわたしの足を開いて、アソコを嘗めはじめた。
 「いや、そんなとこ」
 「いやなの? いやだったらやめるけど」
 「いやじゃないけど、汚いから」
 「汚くなんか無いよ。綺麗だよ。女の子のいちばん綺麗なところだよ」
 ウソ。綺麗なんかじゃない。
 増田が嘗めてるの、アソコだけじゃないのよ。そこはおしっこが出るとこ、あ、そこはウンチが出るとこ。
 どうして?
 そんなとこまで愛してくれるの?
 でも、増田ならそういうことにこだわらないのかも知れない。事実、こだわっていない。
 だけど、山之内君には無理だろうな。
 やだ、何でこんな時に比較するのよ。
 「ねえ。もういいから、もういいから、入れてよ」
 気持ちが良くなって、どんどん良くなって、気持ちいいと思えるのを越えるぐらい気持ちが良くなって、わたしはもう入れて欲しいと思った。
 「本当にいいの?」
 「はやく」
 「でも、俺、何も持ってないから、まずいかも知れない。」
 「避妊のこと?」
 「そう」
 「今日は大丈夫だから。だから、あげるつもりでいたんだから。初めてだから、そのまま入れて欲しい」
 これは事実だった。避妊をしてまでエッチをするなんて、なんだかやれればいつだっていいみたいで、ただやりたいだけの男と女みたいで、抵抗があったのだ。
 もちろん、大事なことだって知っている。
 でも、初めての時は。
 安全日なら問題ない。安全日でなければ我慢すればいい。
 増田は、わたしの中に入ってきた。
 さほど痛くはなかった。ちょっとした異物感があった。
 ああ、やっちゃった。本当は山之内君にあげるつもりだったのにな。まあ、いいか、増田なら。
 異物感を和らげてくれたのは、行き所のない快感だった。
 「もう、出るよ」
 「出して、出して」
 そして増田はわたしの中で精液を出した。
 男の子がわたしの中で出してくれた。そのことがわたしを妙にホッとさせたし、いい気分にもなれた。
 へっへ、増田はわたし。わたしは増田。
 嬉しかった。
 でも、この時から、増田は「限りなくボーイッシュな女の子」でも「いちばん近い親友」でもなくなったような気がした。
 彼はわたしの中で「男」を宣言したのだ。
 嬉しかったけれど、ひとつの友情が終わったような気がして、少し寂しかった。
 おまけに、この夜はこれで終わらなかった。