余韻    3

 

◆挿す(さ・す)

 女には夢精などないのかもしれない。
 けれど時々、淫猥な交わりの夢でじんわり濡れることもある。
 足首を祐一の肩にかけると先っぽが奥まで入るから凄く好き。
 ワタシの肩を押さえつけるように圧し掛かったままグサグサと。
 赤紫の肉塊で何度も何度もインサートされる夢に自分の嗚咽で目が醒める。
「どうした?」
「ううん……なんでもない」
「色っぽい声だったな……何、思い出してた?」
 祐一がトロンとなったワタシを背中から抱き起こした。
 振り返りながら口付けると、さっき飲み込んだスペルマの味が広がる気がした。
 四つんばいになったワタシの腰を掴み、ぐっと突き込む。
 愛撫もなく押し込まれたワタシの粘膜は剥がれるような痛みに襲われた。
 上半身をベタッと枕に伏せて腰を突き出す屈辱的なスタイル。
 規則正しいバネ仕掛けみたいに。
 す・される・す・される
 ON……OFF……ON……OFF……

 

◆滴る(したた・る)

 アナタの顔の上に跨ると、まんま文字通りの69。
 ペチャペチャと……ワタシもアナタも目の前の肉を貪る。

 ぷっくりと膨らんだ鈴口から、新しい汁がり落ちる。
 ワタシはしげしげと眺めてから、ちろちろと舌でぬぐって飲み込む。
 いつもはワタシが組み敷かれてるから、こうして馬乗りになると彼を犯してるような優越感で、またおかしくなっちゃいそう……

 フェラチオ……って、なんだか複雑迷路模様。
 これが終われば家に帰る祐一との儀式だから。
 また暫く会えないんだ……なんて思うと舌がとまる。
 唇で含み、舌を巻きつけ、首を激しく振りたてて……
 アナタの舌に時々呻きながら、今宵の名残りを舐りあげる。

 今日も会えてよかった……
 ワタシの舌先に脈打つアナタがこんなに愛しい……

 

◆啜る(すす・る)

 音を立てて吸い込むという行為が苦手だったから。
 祐一にフェラチオを教えられた時も、自分の唇の音がかえって気になり没頭できなかった……

 奥まで咥えて……大丈夫、って……菫子の唾液ごと……
 一緒に……もっときつく……頬をすぼめたまま……

 そうやって、教わった房事を試したくなる好奇心がなかった訳じゃない。
"キヨミズブタイからダイブ" するくらいの決心はあった。
 だけど、そんなの勢いでどうにでもなる……

 眠れない夜は抗おうにも長すぎる。
 ワタシは祐一の亡霊と添い寝する気にもなれず、再びバーへと出かけた。

 そう、いつものカウンターでフローズンダイキリをそっと啜るのだ。
 内臓の熱を抑えるため、そして、優しい眠りを誘うためのおまじない。

 

◆拙(せつ)

 酒の勢いで一夜の契りを交わすなんてよくあること。
 ある程度の年齢になるとそれは特別じゃなくなって。
 寝て起きてご飯を食べるのと似てる。
 眠れない時の最低最後の解決策。

 その夜、珍しく無垢な子犬を拾った。
 この春大学に入ったばかりの彼。
 恥ずかしさを隠すようにワタシのお腹の上で甘えてはしゃいだ。
 時々母性が疼くせいで、日頃しないことに手を染める。
 教える歓びは今のワタシだからできることの一つだと思う。
「菫子さん……ゴメン……おれ……」
「なんで? どうして謝るの? あんまりよくなかった?」
「違います……おれ……うまくできなかった……から……」
 ぼそぼそと呟く彼がいじらしくて、ワタシは胸に抱きしめた。
 交わりの技術はやがて時間が埋め合わせてくれる。
 たとえであっても最後はココロ……ただひとつだと。

 

◆嫉む(そね・む)

 例えば、祐一がこれなくなった夜、見損ねた夢は自分の指で補う。
 インスタントエクスタシー。
 両足を揃えて仰向けになり、お臍の下の茂みに息づく丸い丘。
 布越しに両手で覆い、小刻みに振動させるだけで意識がトブ。
 それでも足りなくて、下着に手を突っ込み、短い叢を掻き分けて。
 コリコリする突起を二本指で挟み、上下にしごく。
 濡れた指から逃げるそのもどかしさは、終わらない宴のようで果てがなかった。
 そんな単純な行為で楽しめたのだ……男とのセックスを知るまでは。

(今頃、祐一は……)
 ワタシは会ったこともない祐一の伴侶をむ。
 彼にはもったいない賢夫人だと打ち上げの席で耳にしたことがある。

 ワタシは濡れた指を口に押し込み舐めとった。
 なんだか、生臭くてしょっぱくて急に悲しくなる。
 早く月曜日にならないかなぁ……なんてぼんやり。

 

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