メール

 

 

 玩具を挿入したまま会社へ向かった。お腹の中心部に差し込まれた太い棒は、歩いたり電車の座席に座ったりすると、思わぬ方向と力であたしを責める。
 昨夜、クスリの力を借りずに、はっきりとした意識のままで性を楽しんだせいか、今朝の目覚めは爽やかだった。身体に疲れは残っていたけれど、エロスの余韻の一切は存在しなかった。
 そんなあたしをあたし自身が面白がって、玩具装着の通勤へと駆り立てたのだが、昨夜のエロスの残り香とは全く異なった新たな快感にあたしは包まれつつあった。

 珍しくあたしはまともな服装をしていた。
 Kさんに「エッチな格好で通勤しているのを見られた」という事実が、あたしにまともな服装で外出するように命じたのだった。
 でも、それが急に物足りなくなった。

 あたしはデパートが開くまで喫茶店で時間を潰すことにした。
 出勤時間の少し前に、Kさんにメールをする。昨夜、あんなことがあったので、会社に行きづらいと文字を打つ。
 言い訳がましい返事に、「どんな顔をして会えばいいのかわからない」「恐怖で足が止まってしまう」「大勢の前でKさんを罵ってしまう妄想にとらわれる」などなど、適当なフレーズを作って何度も送信する。
 その実、あたしは優雅にお茶を飲んでいる。
 もちろんKさんはそんなこととは知らず、焦りまくって返事をよこす。

 ついに、気が乗らなければ今日は休んではどうか、との提案が戻ってきた。
「先日無断欠勤したばかりだから、遅刻してでも行く。でも、心が微妙に乱れている。あなたにレイプされたっていつ口走ってしまうかもわからない」
 あたしはニヤニヤしながらメールを送信する。
「ペナルティにならないような理由を考えて報告しておくから、とにかく今日は休んだ方がいい」
 悲壮感漂うKさんからのレスポンス。
 そりゃあそうだろう。あたしが「Kさんにレイプされました」なんて口走ろうものなら、破滅だもの。

「お言葉に甘えさせてもらいます」
 あたしは欠勤することにして、そのメールを最後に電源を切った。


 10時。デパートの開店。あたしの財布には10万円入っている。昨日、Rさんがくれたものだ。「寂しかったら、クスリなんかに頼らずに、これで友達と食事デモするといいよ」
 欠勤してまで友人と遊ぶのは気が引けた。その友達を呼び出せば、やはり会社をサボらせることになってしまうから。

 シースルーの白いTシャツを買って、さっそく着替える。その下には、普通のランジェリー。見せブラじゃない。恥ずかしいし、それ以上に格好悪い。
 どうせならと、やはりシースルーの黒いブラジャーを買う。
 シースルーどうしで組み合わせれば、透け具合も少し落ち着く。しかも微妙に乳首が見えてたりするのが色っぽい。見せてしまえば、格好悪くはない。

 携帯の電源を入れて、「どこの温泉? あたしも行っていい?」とRさんにメール。
 返事を待つのは虚しいので、また電源を切る。午前中いっぱい、そのあたりをウロウロしようか?
 誰か男の人があたしを見かけで判断して「こいつは誘えばついてくる」とばかりに声をかけてくれないかなあ。きっとついていくよ。
 でも、平日のこんな時間にナンパするような男はロクなヤツじゃないかもね。

 歩きつかれて喫茶店に座る。12時まで待つ。電源を入れてメールチェック。Rさんから返信は届いているだろうか?

 

もどろっか

それとも、先に進む?