副作用

 

 

 Rさんはあたしを見て驚いた。
「すっかりクスリに侵されてしまって……」

 友人の薬剤師が作ったという妖しげな薬。朦朧とした意識の中で性感だけがやたらと冴えわたり、時間の観念が無くなる。
 幻覚と実際のセックスの区別が付かなくなる。
 細胞がバラバラになるほどの快感に酔いしれることが出来る。

「頭痛とか、吐き気とか、食欲不振とか、ない?」
 心配そうに覗き込むRさん。
「なんともないよ」と答えるあたし。

「それより、クスリ頂戴」
 あたしは手を出した。
 ここへ来れば、ここへ来てクスリを飲めば、何もかも忘れてセックスに堕ちることが出来る。
 ここには、セックスを求めて男女がやってくる。何の遠慮もなく、ひたすら快感をむさぼることが出来る。

 Rさんは、教えてくれた。
 キミのそういう格好そのものが、クスリの副作用なのだと。
 このクスリには、代謝されない物質が含まれている。クスリを飲むごとにそれは体内に蓄積される。それによって、淫乱の度合いがどんどん高くなってゆく。

 体調も体力も目に見えて落ちてゆくらしい。


 あたしは今のところ、平気。だから、早く……
「いやらしい目つきして、はしたない。鏡、見てご覧」

 手鏡を渡される。鏡の中のあたしは、いままさに絶頂を迎えんばかりの女の顔だ。
「いいわ、とても、いい」
 呟くあたしに、Rさんは口移しでクスリを与えてくれた。舌の上に載せられたカプセルは3錠。前回の3倍だ。
 ああ、これで、この前以上に狂うことが出来る。
「明日の朝では、まだ覚めないよ。ゆっくり楽しんでおゆき」
 Rさんの手がスカートの中に伸びる。
「バカだなあ。こんなところにピアスして。そうせずにはいられなかったんだね」
 そうよ。
 頷こうとして、がくがくと頭が震えた。もうクスリが効き始めたらしい。
 あたしの中に差し込まれたRさんのたった一本の指が、まるで100枚もの舌のようにすら感じる。


 ゆっくりと抱きかかえられるようにして、奥の部屋へ……。
 女性の姿が、ない。
 うつろな目をした男が3人。そして、Rさん。
 あたしは部屋の中央に横たえさせられた。
 ゆっくりと近づいてくる、男達。
 最初の男の指があたしの肌に触れた途端、電流が走った。

 快感・痙攣・失神・覚醒・快感・喪失・失禁・絶頂・痙攣・失神・嘔吐・絶頂・痙攣・絶頂・痙攣・失神・覚醒・悲鳴・悦声・朦朧・快感・痙攣・脱糞・痙攣・快感・愉悦・痙攣・恍惚・快感・失神・恍惚・快感・痙攣……。


 どこまでも、どこまでも、どこまでも。

 

もどろっか

それとも、先に進む?