少 年

第3章 秘め事 その3

 受験勉強をして、普通の高校生として暮らしていくことをわたしは選んだ。
 よく考えた結果である。
 中学生のくせに、一人前に自分の身体を武器にして男をたぶらかし、あろうことかお小遣いまでせしめる。結局、そこのところに、わたしは気持ちよさを感じていたのだった。
 性と身体を売り物にして、生計を立てたいと思っているのではなかったということに気がついたからだ。
 売春行為をして同級生に対しての優越感を得る。変かもしれないけれど、これが今のわたしだった。
 わたしは少女売春組織の元締めである来島に正直に言った。
「普通の高校生? 笑わせるよなあ。受験勉強? 勉強すれば合格するってもんじゃないだろう?」
「来島さんには関係ないことだわ」
「ふうん? ま、いいけどね。キミごとき中学生にいったい何が出来るかやってみたらいい。女であることを武器にして楽してお金を手に入れることを覚えた君に、ね」

 脅迫・・・。
 それに近いと思った。
「トーコちゃん。お願いだよ。うん、受験勉強が大切だって言うのはわかるよ。だけど、どうしてもトーコちゃんにお願いしたいんだ。ね、今日の、放課後」
 昼休み、食事を終えたころあいを見計らって、来島から携帯に連絡があった。
「ごめんなさい。わたし、その『エンジョイライフ』には入らないって決めたから」
「それはわかってるよ。でもね、今日のお願いは個人的なもの。今日の依頼は本当にキミにぴったりなんだよ」
「ごめんなさい。わたしは、もう・・・」
 断ろうと思った。今さら、一人や二人援助の相手が増えたところでどうということはない。というか、やめようとも思っていなかった。
 けれど、組織に取り込まれることに恐怖を覚える。
 第一、わたしが援助交際をしているのはちょっとした遊び心であって、身体を売ってこの先、稼いで行こうとか思ってるわけじゃない。普通の高校生に憧れる受験生だ。
「トーコちゃんは断れないよ。だって、バラされたらこまること、いっぱいあるでしょ? よく考えて、返事して。時間はまだあるから」
 わたしは返事が出来なかった。

 午後の授業は身が入らなかった。大切な科目なのに。
 5時間目が終わるとすぐわたしは裏庭に出た。気分転換のためである。
 そして、来島に電話をした。断りの電話だ。
「そんなこと言わないでさあ。5万円出すよ、5万円。仲介料なしだよ。ね、お願いだから」
「わたしでなくたって、ウリしたい子はいくらでもいるでしょ?」
「トーコちゃんでないとだめなんだ。アナルもフェラもありで、中出しオッケーの中学生なんて、そうそういないんだよ」
 わたしはボタンを押して通話を終えた。
 来島にとってわたしはただの商品なのだ。思い知らされた。実際に買ってくれるおじさんの方がよほど優しく接してくれる。
 組織売春なんてこんなものなのだ。

 放課後になった。来島は学校のスケジュールを良く心得ている。学校ごとに微妙に違う時間も5分単位で憶えている。登録している女の子をタイミングよく捕まえるためだ。
 だからわたしは、ヒヤヒヤしながら放課後を迎えた。最後の授業を終えた途端に電話がかかってくる、というのはよくある。
 でも、電話はかかってこなかった。どうやら諦めてくれたらしかった。

 ほっとしたところで、弓場君に声をかけられた。
「なんか、今日は様子が変だったね」
「え? あ、そう?」
 言われるまでもなく、今日のわたしはそわそわしていた。でも、まさか、弓場君に見られているなんて。
 教室の席の加減もある。彼はわたしの斜め後ろなのだ。黒板を眺めながらわたしをチラチラ見ることは出来る。ううん、チラチラじゃないわね、きっと。黒板を眺めるふりをしながら、じっと見ていたに違いない。
 その視線は決して不愉快なものではなかった。
 中学生らしい純な恋愛をしているみたいで、心地よいくらいだ。いまさら「らしい」も「純」もないけどね。
 でも、そうなのだ。やらせるのが当たり前のように思って近寄ってくる男の子と、それに何の抵抗もなく股を開くわたし。それが、わたしにとっての普通。けれど、「なかなか言えない想い」「やっとのことで勇気を振り絞っての告白」なんてのも悪くない。その方が本物の思いのような気がする。
 じゃあ、マッキーとの恋はなんだったのだろう?
 ただ、セックスにおぼれていただけかもしれない。あんなのは恋でもなんでもなかったのかもしれない。
「ほら、島崎さん、またボーっとしてる」
「あ、うん、ごめん」
 思わず誤ってしまった。
「いや、あの、そうじゃなくて・・・・」と、弓場君は少し口ごもってから、「ほら、僕が告白なんかしたものだから、変に気を使わせちゃったのかなとか、結局迷惑でしかなかったのかなとか思って」
 かわいいやつ!
 わたしはそう感じた。
 思わず、ギューって、抱きしめてやりたくなった。
 わたしはブルンブルン首を振りながら、「そんなことない、そんなことないよ」と言った。
「あの、その・・・」
「なあに?」
 わたしは彼の発する言葉のひとつひとつを聞き逃すまいとしている自分に気がつく。
「ほ、本当に迷惑なんじゃなかったら、付き合ってください。お願いします」
 わたしは頷いていた。
 今すぐにでも抱きついて唇にむしゃぶりつきたい衝動に駆られたけれど、そんなことはしなかった。
 衝動だけで十分だ。
 彼だってきっと本心ではわたしとヤリタイと思ってるだろう。健康な男の子だもの、それが当たり前だ。
 けれど、急がない。
 心と心を確かめ合いながら、ゆっくりと。
 ムードを盛り上げながら、しっとりとした言葉をつむぎながら、相手の目をしっかりとみつめて。
 ほんとうにゆっくりでいい。

 これまでのわたしなら、クラブハウスとかトイレとか人目につかない木陰でとか、すぐにやってたに違いない。そんな自分に反吐が出そうになった。同時に、そんな自分がいとおしくも思えた。それもこれも自分だ。それに、そういうことがあったからこそ、弓場君の思いを受け止められるようになったんだと思う。
 ちょっといいカッコしいの理屈かな。
 でも、ま、いいや。

 ひとつ気がかりなことがあるとすれば、色々な人とセックスしまくっていたことだ。わたしが処女じゃないことは彼だってなんとなく感ずいているだろう。実際の中身はばれていなくても「女子ソフトボール部員はヤリマンだ」っていう影の噂は流れている。でも、彼はそれを承知で告白してくれた。
 けれど、いくらある程度の覚悟はあったとはいえ、自分が告白した相手が「恋愛感情なく色々な男とやりまくっていて、時には複数に輪姦されてそのことにうち震えながら身もだえするほど悦び、あげくに援助交際までしていると知ったら、さすがに真剣な想いでも冷めてしまうだろう。しかも、わたしは2度も堕ろしているし。
 だから、「過去があって今の自分がある」なんていいカッコしいの理屈なんてこねていられない。
 過去を消すことは出来ないけれど、それを打ち消すほどの熱い想いで彼の気持ちを受け止めなくちゃいけないと思った。

 ま、なんでもいいや。
 わかってるのは、最初に告白されたときにはなんとも思っていなかったのに、今は彼のことが好きになり始めている、ということだけだ。

 二人で並んで校門を出ると、来島が待っていた。
「あ」
 わたしは自分の耳にすら届かないほどの小さな悲鳴をあげ、その場で固まってしまった。
 電話がかかってこないから、すっかり油断していた。おまけに、弓場君とのことが上手く行きそうなことで有頂天になっていた。
 その目の前に、売春組織元締めの男が現れた。
 幸せに浮かれていた気分が、一気にしぼんだ。底なし沼に放り込まれたようだ。首筋がスーッと冷たくなる。
 まともな神経の人ではないとは思っていたけれど、まさか学校までやってくるとは思わなかった。
 男はわたしの前を塞ぐように立った。
「トーコちゃん。携帯の電源を切ったらだめだって言っといたじゃないか。こんな大変なときに」
 わたしは気持ちがどんどんふさいでいくのを感じつつも、弓場君の表情を盗み見ていた。彼はこの男にどんな印象をもったろう。変に思わなければいいんだけど。
 そんな感情がわたしの中にあるということは、ある種の絶望感を感じながらも、弓場君を失いたくないからなんだと、あらためて自分の気持ちに気付かされた。
 男の「こんな大変なときに」という台詞を聞いて、弓場君も神妙な顔つきになった。
「危ないらしい。一緒においで。制服のままで構わないから」
 これではまるで親戚の誰かが危篤にでもなったみたいだ。
 校門から少し離れた電柱の横に、車が止めてある。
 来島はそちらの方を顎でしゃくりながら、「さあ」と言った。
 ここで妙な言い争いをしたら、せっかく「親戚の危篤」と勘違いしてくれているであろう弓場君に、「そうではないなんらかの揉め事」と悟られてしまう。
 もしわたしと来島の会話の中に、援助交際に関わる単語が出てきたりしたら、最後だ。
 来島の車におとなしく乗るしかなかった。
「ごめんなさい。授業中に携帯がなるといけないので、電源を切っていたんです」
「しょうがないな。急ごう」
「はあい」
 わたしは来島に導かれるままに早歩きで車に向かう。途中、振り返ると、弓場君はひじを曲げたまま手を上げた。掌がちょうど彼の頬あたりにある。彼の手が左右にわずかにぶれた。
 バイバイ。
 彼の表情は少し曇っていた。けれどそれは「一緒に帰れると思っていたのに残念」という感情表現であって、何らかの妙な疑いを持ったというのではなさそうだった。
 とりあえず、一安心。
 けれど、車に乗ってしまったわたし。
 車に乗ったら、どうなるか。
 わたしはそれくらいのことはわかっている。

 その日の相手は、中年のサラリーマン風だった。といっても、スーツを着ているだけなんだけどね。実際は何をしている人なのかさっぱり想像がつかない。
 目がぎらぎらして少し不気味なのは、少女を目の前にしたと言うスケベ心のせいなのか、それとももともとそういうタチなのか?
 不気味でも何でもいいや。さっさと済ませてお金をもらったらそれでいい。

 そう考えて、自分がぞっとした。わたしはどうしてこんなことを始めたんだろうと思う。でも、もうわからない。わかっているのは、確かに今お金が欲しくてやってるってことだ。

「オナニーしてみせて」
「え?」
「さあ、早く」

 相手の男はソファーに座ってじっとこちらを見たままだった。服も脱がない。
 わたしはベッドの上に座り制服のスカートをたくし上げて、足を大きく開いた。
 男に言われるままにパンティーを脱ぐ。
 靴下は履いたまま。パンティーは右足の足首に引っかかっている。男に言われて腰を前に大きく突き出した。背中を壁に預ける。ちょうど照明の真下にわたしの腰があり、ライトにさらけ出される。
「もっと、よく、見せてご覧。ほら、指でアソコを開くんだよ。うん、そうそう。ふうーん。見た目は中学生のくせに、使い込んだマンコしてるね。ひだひだが精液焼けしてる。ひっひ、いやらしいマンコから、もう汁が流れ始めてるね」
 見せろと言いながら、男は決してソファーから立ち上がったり身を乗り出したりなどはしなかった。
 指示されるままにわたしは指を動かす。左手の人差し指と中指をアソコの左右にあてがって穴を広げ、右手の指先でクリを摩擦する。
「あ、はう・・・」
 見知らぬ男の前でオナニーをしていると言うのに感じてしまう。
 腰の中心からゾクゾクした感覚が同心円状に広がっている。

 目を閉じるとここがどこで、わたしが何をしているのか忘れてしまいそうだ。オナニーは日課だ。勉強の気分転換とか、寝る前とか、一日に数回・・・。
 援助交際で相手の男に命令されてやっているのか、自らの快感に浸るためにやっているのかわからなくなり、わたしは指を穴の淵に進めた。クリトリスを十分愛撫してたっぷり汁が出たところで穴の周囲へ、そして、穴の中に指を勧めるのがいつものやり方だ。
 穴を広げている左手がだるい。いつもなら乳首をいじっているところだ。

 パン!
 穴に指を薦めようとして手を払われた。男はいったいいつの間に私の傍にやってきていたんだろう。
「そこはダーメ。そこはボクのものだからね」
 男はわたしの両足を押し割るようにして頭を突っ込み、べろべろと舐め始めた。
 男の手はわたしの膝を掴んでいる。
 スーツを着たどこにでもいるまじめな風体をした男が、ネクタイの結び目すらゆるめず、一心不乱にわたしのオメコを舐めている。
 ピチャ、ピチャ、ピチャ、ピチャ。
「ああん、そこ、いや、いい、ああー」
「ふん。商売女のくせに、自分ばっかり感じやがって。サービスしろよな」

 結局、男はスーツを着たまま1時間にも渡ってわたしを責め続けた。何度も気が遠くなりそうになった。お願いだからもう入れてください、何度かそう叫んだような気がする。
 でも、男は全くマイペースだった。
 ラブジュースがとめどなく流れ続け、わたしのアソコはドロドロに解けていく。
「う、わああああーー」
 わたしは叫び声をあげた。全身が痙攣している。
 今までにもこんなことは何度もあったけれど、同級生や少し年上の男のコだと、それだけでびびってしまう。放心状態でイキまくっているわたしに、「おい、トーコ、だいじょうぶか? どうしたんだ?」なんていう声が遠くの世界から聞こえてたっけ。

 男の攻めが一段落すると、わたしはハアハアと息を切らしている自分に気がついた。

 男は私に服を脱ぐようにいい、自分も脱いだ。ボディービルでもやっているのか、気持ちの悪いくらいの肉付きだった。スポーツマンのそれじゃなく、作られた筋肉だった。
 頭を掴まれ、美しすぎる形状をした大腿部に引き寄せられる。
 フェラチオをしろということだ。
 わたしは男のそれをくわえて念入りに舐めた。
「中学生とは思えないなー」と、男は言った。
 ぱっくりとくわえてバキュームしながら先端からカリにかけて舌を往復させる。カリの周囲を念入りに舌を這わせる。
 うっ、うっ、と男がうめく。
 いったん口をペニスから離し、軸をしっかりと握って、何度も何度も丁寧にペニスの表面を舌先と葉を使ってこそげてやる。
「あう。おお、ううーん」
 玉をやんわりと揉んだ後、口に含みながら舐める、舐める、舐める。
 股の下を潜り抜けるようにして、わたしの舌は肛門に至る。
 わたしのことを好きだと言ってくれた弓場くんにこんなことをしてあげたらどんな顔をするだろうか。
 わたしは足を広げて立つ男の足の下で上半身を起こし、男のお尻のすぼまりに舌先をあてがいながら、片手で玉を揉み、もう片方の手でペニスをしごいた。あっというまに男を射精に導くことが出来た。

「きみは大変なことをしてくれたね。このザーメンはキミの身体の中にぶちまけるためにとっておいたのに・・・」
 男の表情が急に凶暴になり、わたしは身を固くした。
 実用的ではないとはいえ、鍛え上げられた筋肉だ。わたしは軽々と持ち上げられ、ベッドの上にボンと落とされた。
 わたしはそのまま上にのしかかられた。
 両手をガッツとベッドに押し付けられ、わたしの手はぴくりとも動かすことが出来ない。
 開いた両足の間に男は正座をし、お尻の下に膝を突っ込んでわたしの腰を浮かす。そのまま男はずんずん前に進み、わたしの中に入ってきた。
 わたしはタップリと濡れていて、男のものをスルリと受け入れてしまう。
 にっちゃ、にっちゃ、にっちゃ。
 男がピストンをするといやらしい音が部屋中に響く。
 男はわたしの腕を押さえていた手を離し、わたしの背中にその手を差し込んで持ち上げた。
 鍛え上げられた筋肉に軽々と持ち上げられたわたしはあっというまに対面座位の体勢に持ち込まれる。
 男はわたしの腰に両手を添えて、わたしを身体ごと上下させた。
 座位なのに、主導権を握らせてもらえない。
 ぎっし、ぎっし、ぎっし。
 ベッドのスプリングがきしむ。
 男が私の身体を持ち上げると、ズルズルとペニスが抜ける。完全に抜け切るまで男はわたしを持ち上げる。男の先端とわたしの身体は完全に離れ、粘着質の液体が糸を引いている。そそり立ち膨れ上がったそのペニスの真っ黒な先端がわたしの視界に入り、これがグイーっと穴の奥に突っ込まれるところを想像すると、それだけでうっとりしてしまう。
 男はわたしの身体を下ろし、先端部分がかろうじて穴に差し掛かると、すっと手の力を抜く。わたしの身体はドスンと男の上に落ちる。ガン! と、男のモノがわたしの中に突っ込まれる。ギシッと身体がきしむほどの異物感。子宮のおくまで突き上げられ、お腹全体が震える。
「あ、ひいいいー!」
 一瞬の痛みと、そのあとに襲ってくるめくるめく快感。
 脳髄がふらりと揺れる。
 完全にはまり込むと、男はふんふんと腰を振り上げて、揺らぎかけた意識をぐいっと快感の海に引き戻してくる。
 あ、はあ、はあ、ああ、はあ、はあ、ああん、ああああん・・・・
 大輪の花が太陽に向かって大きく花びらを広げるようにわたしは男を受け入れた。
 大きく吸った息を吐くことが出来ないほどに、男は執拗にわたしを攻め立てた。
 ギッシ、ギッシ、ギッシ。
 ベッドが悲鳴を上げる。
 わたしの性器は徐々に感覚を失っていた。意識の遠くの方で細胞の一つ一つが快感の渦に巻き込まれてゆく。
 とっても、気持ちよくて、幸せ。
 こんな誰ともわからない男に抱かれるだけで、それがただ気持ちいいというだけで、幸福感を感じる自分が、嫌いだ。

 男は起き上がってわたしを抱きかかえた。
 そのままゆっくりと押し倒す。
 わたしが下、男が、上。
 男はわたしの脇の下あたりに手をついて、身体を前後にローリングしながら腕立て伏せを始めた。
 男は思いきり腕を曲げる。わたしと男の肉体は密着する。その状態で男はわたしの中を突き上げる。性器と性器がねっちょりと絡み合い、同時に胸と胸、お腹とお腹が擦れ合う。男の肌に触れた乳首の先端が下から上へと摩擦する。
「うわ、あ、ひいー!」
 思わず悲鳴を上げるわたし。
 腹の奥までペニスに突き刺された圧迫感がわたしの神経を狂わせる。這い上がってきた男の唇がわたしの唇を塞ぎ、まもなく舌がわたしの口の中を這い回る。
 大量の唾液をお互いに分泌させながら、にちゃりねちゃりと絡み合う。
 腰が、ひくひくとぶれる。小刻みな痙攣。そのつどわたしは、「ああ、いっちゃう。いきそう」と叫ぶ。
 深く差し入れたままぐいんぐいんと腰を回していた男は、わたしの締め付け具合からまもなくイクことを察知したのだろう。それまでの激しい突きとは裏腹に、ふっと腰を引いた。その瞬間、曲げていた肘を伸ばし、密着していた肉体と肉体の間にも空間が出来る。
 けれど、性器は結びついたままだ。
 抜けない・・・。男は十分抜けるだけの腰の引き方をしているが、わたしの膣口がすぼまって抜けない。
 ほんのわずかだが、わたしはズズっと身体が引き下げられた。
「あ、痛い!」
 全体重が男のカリとわたしのすぼまった膣口にかかった。
 わたしの叫びに男は腰を引くのをやめた。けれど、攻めをやめたわけじゃない。また腕を曲げ、身体を密着させてながら這い上がるように突き上げてくる。
 十分すぎるほど濡れまくっているはずのアソコがきつい。きついからまた感じる。感じるからさらに締まる。締まった穴の中をこじ開けるようにして男がピストンしてくる。
 頭の中がしびれて脳細胞の中心がとろりととけてきそうだ。
 きっとわたしは、これ以上ないというくらいだらしない表情でうっとりしていただろう。そして、時々苦悶に顔をゆがめながら眉間に皺を寄せ、のけぞりながら官能の声を吐き出していたに違いない。
 男の激しいピストン。全身を駆け抜ける電流。
 宙に浮くような感覚。奈落の底に舞うように落ちていく錯覚。
 絶大な現実感を伴って耳の奥に粘液をまとわりつかせながら性器と性器がこすれあう音。
 何度イッたことだろう。
 強烈な違和感は、わたしが締め付けているからではなくて、男のソレがフェラチオしていたときのものよりもわたしの中に入ってさらに大きくなっているのだとようやくわかった。

 ずりゅ、ずりゅ、ずりゅ。
 あ、ひいー、ひああー、イイイイクウウウゥゥゥゥ!!!

 男は中出ししたあともちっとも衰えず、腰を振り続けた。もう同じ体制でどれくらい時間がたっただろう。
 わたしはたまらなくなって男の腰に両足を巻きつけていた。
 わたしの中はお互いのラブジュースと男の出したザーメンで満たされ、そこへ何度も何度もペニスが押し込まれては、ペニスでぎっちりと蓋をされた膣口のわずかな隙間から、握りつぶされたホースの先端から勢いよく水が出るように、ピュピュッと液体が溢れ出る。
 タップリとわたしの中で出したザーメンを子宮の中へ押し込むように男はぐんぐんついてくる。
 えずきそうになるくらいの、激しい圧力。
 お腹の中が男のおちんちんで満たされてゆく。
 遠くへいってしまいそうな意識が、快感の嵐で呼び戻される。
 わたしも男もタップリと液体を漏らし、お尻の下がぬるぬるした液体で満たされている。
 今にもパアンとはじけてしまいそうな光が満ち溢れて、わたしの意識が混濁してゆく・・・

 トーコちゃん頼むよ。とにかくとんでもない男なんだ。普通の女の子だったら壊れちゃうんだよ。大きくて強いんだ。ね、そう言われると、普通の女の子だったら試してみたくなるよね。でも、だめなんだ。本当に壊しちゃうんだよ、女の子を。だから、きみのような本当のスキモノにしか頼めない。ね、お願い。

 わたしは車の中で来島に言われたことを思い出していた。
 普通の女の子だったら、壊れちゃう。
 壊れちゃう。
 壊れちゃう・・・・。

 わたしも、とっくに壊れているわ。
 もう何度イッただろう?
 とっくにわけがわからなくなってる。
 腰はだるいし、アソコは痛い。けれど、やめられない。この恍惚がいつまでも続けばいいと思う。

 弓場君、弓場君。
 ねえ、・・・・

 わたし、どうしたらいいの?

 こんなの、はじめて。
 もう何時間も入れられっぱなし。
 イキっぱなし。

 すごいでしょ?
 ねえ、すごいでしょ?
 本物のおたまじゃくしみたいな大きさのヌルヌルした精子が脳みその中をぐるぐる泳いでるの。
 それがね、すっごく気持ちいいのよ。
 あ! いま! 乳首に何かが触れた。
 ああああ〜〜〜〜ん!
 おっぱいの先がクリトリスみたいに感じちゃう。
 おっぱいだけじゃないわ。もう、どこを触られても。
 ううん、触られなくても。
 ああー、どうしよう。身も心も性器そのものになっちゃった。

 ねえ、弓場君。
 わたし、どうすればいい?

 ねえ。
 ねえってばあ。
 なんとか言ってよ・・・・
 

 

「少年」おわり

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