ささやかな反抗

 

==11==


 高校生になったあたしは、ますます美貌に磨きが掛かってきた。幼くかわいい女の子から脱皮した。芽生えたばかりの「女」の中にあどけなさを同居させながら。木々の葉から雨上がりに雫がこぼれるような危うさを持った美少女に変身していた。
 容姿に悩む女の子にこんな話は嫌味でしかないかも知れないけれど、「綺麗な子なのに、おしいわね、愛嬌がない、冷たい印象を受ける」と言われるのも辛い。ううん、どう言われたってこの美しさは生まれながらのもの、ただ感謝すればいい。そう思ってあたしは堂々とすることにしていた。ただ、美しさを鼻にかけているなどと言われるのは嫌なので、挨拶や礼儀などには気を使った。でも、逆効果だったかも知れない。育ちの良い良家の清楚なお嬢さんなんてイメージが固まってしまったからだ。下品にガハハと笑い、多少失礼なところがあっても気さくな女子高生と言われる方が良かったかも知れない。
 イメージ先行で友達と笑いあう機会がどんどん減り、そのために感情の少ない人と受け取られ、イメージだけがどんどん高貴な方向へ向かっていった。

 

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 こんなあたしでも、高校3年間の間に3人の男と付き合い、3人の男とセックスをした。けれど、長続きしなかった。
 一人目は高2の春。クラス替えではじめて一緒になった男の子だけれど、彼は1年の時からあたしのことを見ていたらしい。毛並みのいい家系のお坊ちゃんで、お似合いだなどとうわさされたけれど、つまらなかった。デートはクラシックのコンサートやフランス料理、美術館や博物館、時には彼の家族も同行した。手なども繋いだことがない。はじめてのデートの時はハイキングだったので、TシャツとGパン、そしてスニーカーでも救われたが、彼はスーツだった。ハイキングと言っても山開きされたばかりの高山のふもとの高原で、彼の親が社長を務める上品でちいさなホテルへロープウエイで一気に上がって、派手ではないが高価そうな装飾品がさりげなく配置されたレストランで食事をした。そして、周囲を散歩したに過ぎない。散歩に際して彼は着替えを行うという念の入れようだ。
 手も握ってくれないし、ましてキスなんてしてくれない。あまりにも優等生的で退屈なので、あたしは処女でもなければフェラチオの経験だってあるのよと言ってやりたかったが、どうせ別れるんならそんなことを言って彼を傷つけることはないだろう。彼はきっと童貞のまま処女の女性と結婚するのだ。

 

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 二人目は冷やかしだった。成績などにとんちゃくせず派手に遊んでいる男の子で、彼らの仲間内で「俺たちのような男は水上になど相手にされないに決まっている」とか言いあいながら、そのうちの一人に遊びで告白されてしまったのだ。けれど、あたしは本気になってしまった。
 「やらせろ、とか言ってみろよ。殴られるぜ。なんせ良家のお嬢さんだ」
 彼らの間でそんなことがささやかれていると教えられたのは、彼と寝た後だ。「抱きたい」と言われて、あたしは有頂天になったのだ。外見やイメージにとらわれずに、身体を求めてくれる人がいる。そう思うと嬉しかった。もちろん、あたしは彼のことがいつしかとても好きになっていた。
 彼にはちゃんと付き合っている人がいて、あたしとは遊びだったのだが、あたしが喜んで彼に抱かれたせいで、これ以上のめり込まれては困ると不安になったらしい。全てをあたしに打ち明けてくれて、そして彼は涙を流しながら謝った。純粋な人だった。あたしは本当に彼のことが好きだった。けど、同じ謝るにしても、する事だけはやっちゃうんだから、ちょっと呆れたけれど、まあ、それが男の子よね。
 「処女じゃなくて安心した」だって、余計なこと言わなくてもいいんだよ。

 

==14==


 あたしはもうその頃には、セックスに対して特別な何かを期待したり、妄想を抱いたりはしていなかった。
 レイプされたときのことを思い出しながらオナニーをしていたし、イクことも憶えたし、痴漢にも抵抗しなかった。身体だけでも求められたかったのだ。
 痴漢に逢いたいなんて感情は歪んでいるとは思う。人と触れあいたかったらまず自分が心を開くことだ。けれど、あたしはそれが下手だった。特定の女性の友達しかできなかったし、作らなかった。彼女たちは地味で処女だった。シモネタが嫌いだった。だから、あたしは安心して友達になれた。性体験のことを話題にされるのをやはりどこかで恐れていたのだ。
 肌の触れ合いを痴漢に求めてしまった。まっさらな女の子という仮面の下で、スカートの中に入れられた手に感じながら電車の揺れにあわせて腰を振り、おまんこを濡らしていた。一度手をつかまれて電車をおろされ、そのままホテルに連れて行かれた。あたしはされるがままだった。以来、その痴漢とは電車であってそのままホテルへ、なんてことが何度かあったけれど、一度も避妊してくれないし、平気で中に出すから、通学時間をずらして会わないようにした。

 

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 お付き合いした人の3人目は、友達のお兄さんだった。
 付き合いと言っても恋人ではなく、彼はあたしの身体が最初から目当てだった。痴漢に悦びを感じていた真っ最中で、痴漢を喜ばそうと刺激的な下着をつけるようにしていた。そして、友達の家で無防備になったあたしは、彼にその下着を見られてしまっていたのだった。
 彼は欲情して、あたしが友達の家を出た後を追いかけてきた。誘われるままに近くの公園のベンチに座って他愛もない話をするうちに、あたしは変な気分になってきた。彼がなれなれしくあたしの肩や膝に触るからだ。家庭教師とのことを嫌でも思いだしてしまい、あたしは濡れていた。
 胸に手を入れられたときは恥ずかしかった。乳首が固くなっていることに気付かれるからだ。でも、拒否できなかった。彼はあたしの胸を十分感じさせてくれた。オナニーではあんまり胸は触らないし、これまでの男の胸の愛撫がそれほど上手ではなかったせいもあるだろう。オッパイを揉まれて乳首をつままれ、あたしは官能の声を出した。
 お互い「好きです」とか「付き合って下さい」などの告白もなく、あたし達は身体が目的で会うようになった。
 彼と付き合ってはじめて、とろけるようなキスを経験した。

 

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 あたしの男性経験は、高校時代で終わってしまった。それから結婚までの間、あたしは男に縁がなかった。あたしには大学のキャンパスという空気があっていたのだと思う。いつしか外見から来るイメージに縛られることなく、自然に振る舞えるようになっていた。あたしも成長したのだろう。普通に友達が出来るようになると、それほど彼氏が欲しいとか、セックスがしたいとは思わなくなった。仲の良い男友達もできた。でも、あたしは相変わらず超美貌の持ち主で、男達は手が出しづらいと感じていることはわかっていた。相変わらずオナニーは続けていた。ほとんど毎日。でも、何かを突っ込んだりはしなくなっていた。指だけで感じたから。
 結婚相手は4年生の時に付き合い始めた同じ学部の人。これといって特筆するような長所はないが、あたしが惚れてあたしが告白した。人柄や雰囲気が良かったのだ。彼はあたしのような綺麗な女性に告白されるなんて思ってもみなかったといった。あたしは「外見で人を判断するなよ。惚れるって言うのは心の問題なんだ」と言った。彼は「そうだね、君はそれを実践して、僕に惚れてくれたんだね」と言った。彼の容貌は10点満点で4点。平均以下。面食いには相手にされない。けれど、彼はそのことをちっともコンプレックスに思っていなかった。
 唯一の誤算は、あたしが処女になってしまっていたことだ。オナニーはしていたけれど、物を入れるなんてことはしなくなっていたし、ずっとセックスなんてしていなかったから、痛かったし出血した。濡れ具合もイマイチだった。オナニーの時はドロドロになるのに、自分流のやり方になれてしまっていたせいで、彼の愛撫ではなかなか濡れなかった。普通のラブホテルでとりたてて刺激的なシチュエーションでもなく、あたしが時々強烈に感じた「恥ずかしさ」と裏腹にやってくる興奮もなかった。愛する人とホテルで普通にセックスするのに、恥ずかしいわけがない。痴漢にあって周りの人にきがつかれるかもと思いながら腰を振っているのとは訳が違う。
 久しぶりのセックスだったので緊張した。その緊張もあたしの処女化に拍車をかけたのだろう。
 とにかく、夫の主観では、あたしは処女で、貞淑な妻なのだ。

 

==17==


 夫があたしを処女だと思ったことには何の不都合もない。まして、過去の性歴を語る必要などてあるとは思えない。だから、そのままで結婚生活は続いた。あたしはすぐに淫乱になって激しいセックスを求めるようになったが、それは自分がそうしたのだと夫は思いこんでいて、満足していた。
 あたしもそれでいと思っていた。
 でも、高校の同窓会であたしのその価値観は崩れてしまった。

 

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 同窓会で昔の仲間と会うということは、昔の自分とも正面から対面するということだ。清廉潔白、清楚で純潔。そんなイメージで見られていたあたし。でも、中学2年の時に処女を失っていたあたし。クラスメイトは誰一人として、毎日オナニーをして、痴漢とホテルに行き、身体だけが目的とわかっている女友達の兄とセックスにふけっていたことなどしらない。彼らは当時のイメージであたしを見るだろう。
 それが何となく悔しい。
 高校時代のことはともかく、今は結婚もして、性生活も人並みに送っている。
 けれど、服装の趣味が変わったわけでもなく、化粧もロクにしていない。相変わらず同世代の女と比較すれば若いし、妖艶さなどとは無縁であることは自覚していた。
 夫はありのままのあたしを愛してくれていたから、妖艶になることなど全く必要としなかったのだ。
 だからといって、小学校の時のスカートがはける自分が悔しい。ちょっとおしゃれしようとあたしは決意した。何軒かのお店をまわって、あたしはキャミソールを買った。白のシルクのキャミソールだ。素肌に身につけると乳首が透ける。結婚もした女がわざわざこんなカッコウをするのは下品に思えて、上から紺のカーディガンを羽織ることにした。スカートはライム色のタイト。丈は膝上5センチぐらい。スリットは前に入っていて椅子に座るとちょっと色っぽい。お尻を鏡に映して身体をひねって見ると、下着のラインが浮いている。Tバックパンティをはくしかなさそうだった。夫と一緒に遊びでふざけて買ったものだ。横が紐で頼りない。でも、Tバックはこれしか持っていない。
 誰かに見せる訳じゃないけれど、下着におしゃれをしてドキドキするのは女の子の特権だと思う。そう思うと、今までそうしてこなかった自分が悔しかった。

 

==19==


 同窓会はそれほど愉快なものではなかった。気合いを入れた自分が馬鹿馬鹿しい。大学時代の友人とは今でも付き合いがあるけれど、高校時代のクラスメイトと会うなんていうのは絶えてなかったことで、なかなか共通の話題が見つからず、懐かしがってひとしきり近況報告をすると手持ちぶさたになった。第一、近況報告をしあう相手がそれほどいるわけじゃない。一方で、高校時代から今までずっと仲良くしているグループもあって、彼ら彼女らにとっては同窓会ではなく、いつもの仲良しグループの集まりで、そこだけ妙に盛り上がっていて、話題もいつも通りの雑談、他の人が入っていける雰囲気じゃない。そんなことは気にせず適当な相手とのんびり喋っていればいいのにとは思うものの、彼らのバカ騒ぎが妙に目立って、あたしはしらけていた。
 そのうちお酒も回ってきた。けだるくなってポツンと座っていると、隣に男が腰掛けた。
 「覚えてる?」と、彼は言った。
 しばらく考えて、あたしは、「あ、土屋君?」と訊いた。
 「そう」
 「ふうん、土屋君とはほとんど喋ったことがなかったと思うけど、よくわかったわね」
 「そりゃあ、ずっと見ていたからね。喋ったことがなかったのは、水上さんが近寄りがたかったからだよ」
 今更そんなことを言われてもあたしはどう返答してよいかわからない。あの頃の自分を悔やんでいるあたしに、そんなことは言わないで欲しかった。けれど、これは同窓会なのだから当時のことが蒸し返されるのは仕方ない。我慢しようと決意して話を合わせた。
 「あたしは普通にしていたんだけど、どう近寄りがたかったのよ」
 「そうだよなあ。俺がガキだったんだよ。水上さんが特別なわけじゃなかったんだよ、今から思えば。結婚もして普通に暮らしてるんだろう? でも、あの頃は水上さんは特別だったからなあ」
 あたしはしみじみと回想する土屋君に、クスリと笑ってしまった。「どう特別だったのよ」
 久しぶりに「清楚」だの「高貴」だの「良家のお嬢さん」だのという単語を耳にすることになるのかなと身構えたけれど、土屋君はそんなことは言わなかった。ただ、あたしの肩に手を添えただけだ。
 「例えば、こんなことをしたらはり倒されそうだった」
 「あら、そんなことないよ。むしろ、あたしは気軽に友達同士肩や手を触れあえる人達を羨ましく思っていたもの。どうしてあたしには誰も触ってくれないんだろうって?」
 告白してしまうと、心が軽くなった。
 「うわあ、そうだったのか。もったいないことをした。水上さんにはみんな憧れてたんだ。水上さんの肩に触れたなんて言ったらヒーローになれたのに」
 「バカねえ。肩ぐらい触らせてあげたのに。なんだかソンしたな」
 あの頃の時間を取り戻そうとしているのか、あたしは雄弁になる。酔いも手伝っていただろう。
 「じゃあ、こんなことは?」
 彼も酔っていた。スリットの隙間からあたしの太股に手を入れた。右と左の太股の間に。「でも、人妻にこれはやばいか」
 彼はすぐに手を引っ込めようとした。あたしは足に力を入れて彼の掌を挟んでやった。冗談めかしていた彼から笑いが消えて、意外な表情になる。
 「だから、それぐらい平気なんだって。みんながあたしに対して間違ったイメージを持っていたの」
 「まさか。この歳になったから平気なんだろう?」
 そう言いながら彼はあたしにキスをしてきた。高校時代のクラスメイト達がいるこの空間で。あたしは目を閉じた。見られたくないと思ったとき、あたしは目を閉じる。自分の視界を閉ざすことで、まわりからも自分が見えていないような錯覚に身を置くためだ。確かな意味を持って耳に届いていたまわりのお喋りがただのざわめきに変わってくる。
 高校時代のイメージのまま、あたしを見ているであろうみんな。一切の汚れを寄せ付けなかったはずのあたしが、平気でキスをしている。ちょっとした悪戯心だったに違いない土屋君も、本気になったみたい。舌を絡めてくる。
 「こらこらあ。そこ! 何を盛り上がってるのよ、二人だけで」
 声だけでわかる。高校時代の数少ない友人。地味な処女代表選手の真由美があたしを我に返らせた。
 「夕貴、変わったね」と、真由美。
 「そお?」
 「ま、私も変わったけれど」
 あたしは何も変わってはいなかったけれど、真由美は確かに変わっていた。彼女は旦那以外に二人のボーイフレンドがいるのだと告白してくれた。ふうーん、地味処女だった真由美がねえ。あたしは感心した。
 「女は2種類いるらしいのよ。結婚して貞淑になる女と、結婚して男遊びが激しくなる女。どうやら夕貴もそうみたいね」
 土屋君とキスしているあたしを見て、真由美は勝手な判断をしてしまった。違うのよ、あたしは中学2年の時に処女をなくして、高校でも3人の男と経験し、そして大学生で処女に戻って、それから結婚した。なんて今更説明するのは面倒だった。第一信じてもらえないだろう。
 土屋君はつまらなそうに席を立った。ちょっと惜しいなと思った。エッチをしてもいいような気分になっていたからだ。真由美の男遊びの話を聞いているうちにあたしもおまんこが疼いてきた。結婚したら、どうして一人の男に縛られなくちゃいけないのかわからなくなってきた。これまではそんなことを疑問にすら思わなかったけれど。
 「ねえ、どうしたら新しいボーイフレンドと出逢えるの?」
 「仕事はしてるの?」
 「子作りに専念したかったから半年前に辞めた。でも、仕事をしてたって一緒よ。あたしが結婚していることはみんな知っているし、そんな女に公然と手を出すのは、それなりの覚悟がいるでしょう? あたしだって、妙なうわさがたつのはゴメンだし」
 「そうじゃないの。仕事をしていないなら時間はあるってことよね」
 「まあね」
 「子供がいないのも好都合。出かけるのに、どこかに預けるとか、そんなことしなくていいから」
 「じゃあ、どうすればいいの?」
 「テレクラ、よ」

 

==20==


 子作りに専念しようと夫と話し合ってから、あたし達はほぼ毎日セックスをしている。妊娠しやすい日、しにくい日というのがあるのはわかっているし、闇雲に毎日するというのはナンセンスだったが、あたしも夫もセックスは好きなので、理屈はどうでも良かった。だから、昼間に別の男と付き合うというのは、魅力的ではあったが、一日2回は大変だ、そんな話を真由美にした。
 でも真由美は「一日2回」には反応せず、「半年間毎日していて妊娠しないのはおかしいかも知れない。検査してみたら」と言った。
 なるほど、そうかも知れない。避妊せずにセックスしたときもあたしは妊娠しなかった。偶然そういうタイミングだっただけかも知れないが、不妊じゃないのかと指摘されれば気になる。
 産婦人科に相談をすると、検査にはご主人と一緒に来て下さい、と言われた。不妊の原因が女性にあるとは限らないそうである。
 検査の当日、夫は困り果てたような顔をした。「こんなところで精子なんて出ない」と言うのだ。「あたしがいたら自分で出来ない? 馬鹿なこと考えてるんじゃないの。もちろん出て行くわよ。夫のオナニーなんて見たくもない」
 ところがそうではないと夫は言った。結婚このかた、オナニーなんてしたことがないので、やり方を忘れたという。あたしは思わず大笑いした。
 「笑ってる場合じゃないよ」と、夫は情けない顔になる。
 仕方がないので、あたしが口と手で手伝ってあげた。
 「ああ、外に出すなんてもったいない」
 検査の結果、夫の精子は異常なしだった。数も標準だし、元気だという。不妊の原因はあたしだった。
 「妊娠の可能性はそれほど期待できないでしょう。もちろんゼロではありませんが。人工授精などで解決する方法もありますが、個人的にはお薦めできません。多くの夫婦はそれでうまくいっていますが、あとで問題を抱える夫婦だっています。通常の夫婦生活で子供が生まれた家庭に比べて、問題を抱える割合は数倍、もしくは数十倍ですから。非常にメンタルな要素を含んでいますのでね」
 あたしもそう思う。夫と話し合った結果、一生懸命セックスして、それでも妊娠しなければ子供は諦めようということになった。全ては天の配剤だ。

 でも、きわめて妊娠しにくいのなら、男遊びには好都合だな。あたしの中の悪魔がささやいた。


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