ロシアンルーレット

敗 者 復 活 戦

 

10.

 とりかかっていた就職活動は全てパーになり、バイトもクビ、彼女には逃げられ、卒論も教授の呼び出しを無視。これで、なにもかも終わってしまった。麻里絵とすごした約2週間、その間に、やりかけていたことが、全て終わってしまった……。いや、終わったのではなく、単に無くなってしまったというのが正しいかもしれない。

 下宿の床に寝転がって失ったものの数々を考えると、真也は不思議と「惜しい」という気持ちにはならなかった。あれだけ焦って追いかけていたのに、それらが目の前からふっと消えた途端に価値の無いもののように思えてきたのだ。
 真也を包み込むのは喪失感ではなく、開放感であった。
 どういうわけか充実感さえ伴っていた。それは麻里絵のドラッグとの決別に最後まで付き合った、というところから来るのだとわかっていた。

 喉の奥がヒリヒリして真也は目が覚めた。いつのまにかうたた寝をしていたらしい。渇いた喉がひび割れでもしてそうなほど痛い。きっと疲れきって口をあけたまま眠っていたせいだろう。
 真也は起き上がって流し台の蛇口の下に口を寄せた。水道から勢い良く流れ出した水を口の中に直接受ける。あっという間に口腔内が液体で満たされ、唇の端からワサワサと水が溢れ出した。水流は顎から首筋をつたって胸に至り、真也の衣服を徐々に湿らしてゆく。それがなんとも心地よかった。

 どれくらいの時間そうしていただろう。
 真也は次に空腹を覚えた。
 水道を止め、口の周りを腕で拭ってから冷蔵庫の扉を開く。食料はそれなりにあったが、全てが2週間前のものである。
「ダメだろうな……」
 カップ麺があるのを思い出す。とりあえず空腹を満たせばいいのだからと真也はカップ麺をすすることにした。

 お湯を沸かしカップの中に注ぎ、まだ早いかなと思ったがあまり時間をおかずに食べ始めた。最初少し固かった麺も食べ終える頃にはちょうど良くなっていた。食べ初めにちょうど良くて終わり頃に伸びてしまってあまり美味しく無い麺と、はじめは硬くても終わり頃には絶妙の状態になっている麺ではどちらがいいだろうか。やはり最後の一口で「美味しい」と感じて食事を終えた方がよいのではないか。食べ終えて床に寝転がりながらそんなことを考えているうち、真也は再びまどろみに引き込まれていった。

 目を開けると眩しかった。電灯をつけた覚えは無い。床に身体を横たえてそのまま眠ったはずだ。時間とともに日が暮れ、それにともない室内も暗くなってゆく。テレビのリモコンセンサーが「スタンバイ状態」であるのを示す赤いダイオードの光とか、窓の外に光る何かのネオンらしい青い光線など、いずれも心もとない明るさのみが部屋の中にあるはずだった。なのに、天井の明かりが点いている。

「やっと、気がついた?」
 人の声がする。確認するまでも無い、ミコだ。彼女の声を聞き間違うはずが無い。

 真也は目を腕でごしごしとこすった。徐々に焦点があってくる。
「いったい今までどこで何をしてたのよ。連絡ひとつよこさないで」
 間抜け面で床に転がっている真也をミコは見下ろしていた。口調は怒っていたが、ホッとした時に人が見せる柔らかな笑みを唇の端に浮かべている。

「ミコ……」
「なによ。言いたい事があったら、言いなさい」
「あ、いや、戻ってきてくれたんだなと思って……」

 待てど暮らせど連絡の無い自分など、とっくに愛想をつかされているものだとばかり真也は思っていた。

「何言ってるのよ。戻ってきたのは真也の方でしょ。まったく、行方不明になってくれてさ。どれだけ心配したと思ってるのよ」
「心配……してくれてたんだ」
「当たり前でしょ」

 真也は「ごめん」と、言った。全てをなくしたような気持ちになっていたが、そうではなかった。何月何日何時までに顔を出せとか連絡しろなどという「システム」と「人の気持ち」とは全然違うものであったことを真也は思い出した。
「2週間も音信不通で、悪かった」
「そうよ。心配ばっかりかけて。せめてあたしには連絡くれたっていいでしょ?」
 そうだよな、と真也は思った。

 けれど、なぜか自分は麻里絵のことに夢中になってしまったんだ。他の事をまるで考える事が出来なくなっていたんだよ。真也は心の中で言った。そして、全てが終わって下宿に戻り、自分勝手に何もかもが終わってしまったんだと決め付けていた。

 ミコとのことは終わってはいなかった。

「すまなかった。……ありがとう」
「ありがとうって、なによ、それ」
「2週間もほったらかしにしていた俺のこと、見限らずに待っていてくれて、ってことだよ」
「バッカみたい。あたしが2週間くらいでどうこうなるとでも思ってたの? いったいこれまでどれだけ付き合ってるのよ。ま、ダメになるときは一瞬でダメになったりもするんだろうけどさ。それとも、一瞬でダメになるようなことでもしてきたの?」

 真也の脳裏に麻里絵とのめくるめくセックスが蘇った。
 今になってミコに対する罪悪感が湧き上がってくる。
「いや、あれは浮気じゃない。熱病だったんだ」などと自分で言い訳をし、「どんな理屈をこねても別のオンナと寝たことには違いない」と自分を責めた。整理しようのない感情が頭の中をぐるぐる回る。
「ふうーん。答えられないところを見ると、悪いことをしてきたんだ。あたしに内緒で……」

「旅、してきたんだ」と、真也は呟いた。
「旅、ねえ……」
 ミコは胡散臭そうな目で真也を見、腕を組んだ。
 苦しい言い訳かもしれないが、まんざら、嘘ではない。住処を離れ、日常とは異なった暮らしをしていたんだから、旅と言えなくはないだろう。
「まーったく、OLさんが汗して働いているときに、就職も決まっていない学生さんが、のんきなことで」
 ミコは呆れ顔だ。
「でも、ま、いいわ。その方がよっぽど真也らしいもの」
 バイトも就職も卒業もパーにして、何が俺らしいんだよ。そう真也は思ったが、案外ミコの言っていることのほうが正しいのかなとも思えてきた。

「ごはん、食べた?」と、ミコが訊いた。
「いや……」と、真也が答える。
「じゃあ、買い物してくるね。何か作ってあげる」
 真也は嬉しそうに笑った。

 ミコは真也の下宿を出た。真也が空腹なのは確かで、何か食べさせてあげたいと思ったのも事実だが、それ以上にあの場にいたくなかった。口実を作って真也の下宿を離れたかった。真也の姿が痛々しかったから。
 目の下に隈を作り、頬はこけ、肌の色合いも悪い。目が死んでいなかったのは救いだが、かといってギラギラ輝かせているというのでもない。例えて言えば荒行を終えた修行僧のような雰囲気がそこにはあった。目の前にはビル郡が折り重なって立ち並んでいるのに、その遥か向こうの山々の連なりを真也は見ているようだった。

 それがいいことなのかよくないことなのか、ミコには判断がつかない。
(幸い、あたしのことだけは目に入っているようだったけれど……)
 旅に出ていたというが、いったい真也の身になにがあったんだろう?

 もう元には戻らないのだろうか?
 初めて出会った頃の輝いていた真也とも違うし、目の前のことに追われ焦りの色を濃くしていた彼とも違う。
 人は変わってゆくものだし、それに伴ってミコと真也の関係も変化するかもしれない。それは仕方ないとも思う。けれど、今の自分は間違いなく真也を愛していた。彼がどう変わろうとこの気持ちに変わりは無い。

(ああ、あたしってエゴイストだわ)
 真也を取り巻く全てが変貌を遂げようと、そして真也自身がどうなろうとも、自分だけは真也にとっての恋人であり続けたいとミコは思う。彼を失いたくない。
 ついさっき、真也は「見限られていない」ことにホッとしていた。それはとりもなおさずミコのことをこれまでと変わらず愛しているという証ではある。
 そこまでわかっていながらミコは揺らぎを感じていた。静寂の中の水面も、石を投げ込まれたら波紋がそっと広がってゆく。それがたとえホンの小さな石であっても。  ミコは根拠の無い不安を胸の奥に感じていた。

 真也はあたしが戻って来てくれたと喜んでくれた。あたしが何か作ってあげるといえば嬉しそうに笑った。
 ミコは買い物をしながら呪文のように自分に言い聞かせた。

 真也の下宿に戻るとなんとなくその場の雰囲気が和らいでいた。ささいなことだが、部屋の中に変化が見られたからだ。中途半端に積み上げられていた2週間分の新聞は片付けられていたし、生活感がない中にテーブルにポツンとおかれていたカップ麺の食べ殻も処分されていた。掃除機をかけてすっきりしたためだろうか、買い物に出る前の真也の部屋が埃っぽかったことに気がついた。
 そのかわり、湯沸しポットとカップがふたつ、そしてインスタントコーヒーにミルクにシュガーがテーブルに載っていた。ミコと二人でコーヒーを飲もうと真也が用意したのだった。

 相変わらず真也はやつれているが、さっきまでの不安がウソのようにミコの心の曇りは晴れた。
(きっとハードな旅で疲れているのね)
 修行僧が荒行を終えてなどという印象を持ったのは、きっと2週間分の生活感の無さがあったからだわとミコは思った。

 しかしそれはミコの思い違いだ。あるいは、無意識のうちに良い方へ解釈しようとしたためかもしれない。真也が麻里絵と一緒に禁断症状と戦った日々はまさしく荒行であったし、その後に世間と隔絶しセックスに溺れながら過ごした数日は浮世離れしていた。最初にミコが感じとった空気こそが真実に近い。

 ミコが用意したのはハンバーグ定食だった。ハンバーグはもちろん挽肉とみじん切りの玉ねぎをミコ自身がこねたものだ。グリーンアスパラを炒めたものとフライドポテトが付け合せ。同じ皿にキャベツと人参の千切りと、トマトにきゅうりにレタスにと生野菜もタップリ盛られている。オレンジを半分にカットしたものが真也とミコのそれぞれのハンバーグに添えられている。そして味噌汁にご飯に漬物。
「浅漬けぐらい自分で作りたかったんだけどね」
 ハンバーグを手作りしておきながら、出来合いのものを買ってきたのがミコには気に入らなかった。それでも沢庵とキムチの2種類が揃っている。
「どう?」と、ミコが訊いた。
 真也は「涙が出そうだ」と、返事した。
「涙?」
「普通の食事が出来ることに、感動してるんだ」
「おまけに、タップリ愛情がこもってるしね」

 ミコは真也に「自分で言うなよ」とかなんとか突っ込まれると思っていた。突っ込ませるために言った台詞だった。けれども真也はマジにそれを受け取った。
「ほんとに、そうだよね。愛情、こもってるよ」
 涙が出るとは比喩ではなく、本当に今にも泣きそうなくらいの感動を目元に漂わせていた。ミコは「いったいどうしたっていうのよ。いつもはお前の料理なんてまだまだ修業が足らないねとかなんとか憎まれ口を叩くくせに」と言った。いや、言おうとして、言えなかった。

 ミコの手料理を食べる真也は浮世の至福を味わっている。
 真也のそんな様子を見ながら、ミコは思った。心理的に追い込まれていた真也が思い立ったのはまさしく修行僧のような旅だったのだと。

 どこに行ってきたのか、何をしてきたのか。

 食事を終え、真也がゆったりした気持ちなった頃を見計らって是非訊きたいものだとミコは思っていたが、それはやめておこうと決意した。今、ここでこうして、あたしの手料理を食べていてくれる。それだけで十分だ。

 真也の下宿には、筋肉を弛緩させてくつろげる場所はベッドの上しかない。ベッドは片方が壁に密着しており、そこにもたれて真也は座っていた。ミコは真也に缶ビールを渡す。ベッドに腰を下ろしてドリンク片手にぼんやりとテレビを見る真也の姿が、ミコにはとても懐かしく思えた。
 ミコは早々に片づけを済ませ、自分も真也の横に並んで座った。

「あたし達、二人でいるときはいっつも真也の下宿よね」
「え? うん」
「今度、たまには外に出ない?」
「あ、いいけど」
「あたしの友達がさ、彼氏が出来たって喜んで、あたしに会わせたいって。でもあたし1人で行ってあてられるのもナンだし、真也にも来て欲しいかな、なんて」

 本当はそれだけじゃない。「真也はこのまま学校とも縁が切れて、外との接点がまるでなくなってしまうんじゃないか」とミコの予感が語りかけてくる。なんとか外へ引っ張り出してあげたいと思うのだ。
「友達とその恋人に会うのに、自分一人じゃミコでも辛いの?」
「別に辛いってこともないけど」
「ふうーん」
 すぐ横に真也の温もりを感じる。久しぶりだった。

「例えば……。あたしが1人で座っている。テーブルを挟んで向こう側には、友達とその恋人が、ちょうど今のあたしたちのようにこうして寄り添って座っていたりする。なんだか、馬鹿馬鹿しいわよね」
 ミコは「こうして」の所で身体を真也にもたせかける。

「友達なんだろ。馬鹿馬鹿しいってことがあるかよ」
「目の前で、こんなことされても?」と、ミコは真也に口づけをした。

 キスそのものは短いものだった。どれくらい短いものだったかというと……。雲ひとつない晴天の日、眩しく太陽を反射させた地面の上を、鳥が小さな影が落として横切っていく。そんな一瞬の短さだった。
 けれども二人の温かい時間はそれで終わらない。ミコは真也に向かって上体を90度ひねり、真也の肩に顎を乗せた。手は真也の胸へ。
「真也に、触れるの、久しぶり……」

 服はミコから先に脱ぎ、全裸になった。真也もそれに続いた。蛍光灯の白い灯りがミコの肌に反射する。麻里絵よりも若々しく張りと光沢のあるミコ。しかしまだ「固い」印象を受ける。麻里絵はしっとりと貼りつくような粘りと湿り気があった。
 麻里絵の乳房は崩れる直前のいわば一番熟した状態だった。ミコのそれは形良くぴんと盛り上がっている。上半身だけ裸になったところで真也はミコの胸に目を吸い寄せられ、ズボンを脱ぐ動作に取り掛かることを忘れていた。

「どうしたの……?」
 ミコが真也の性器にズボンの布越しに手を触れる。
(う、うそ……)
 真也のって、こんなだったかしら。

 ミコは真也以外に何人かの男を知っている。だがそれほど経験が多いわけではない。その中では真也のペニスが一番大きかったが、常人を逸しているほどではなかった。でも、今日の真也はなぜかこれまでの真也と比べて一回り以上大きくなっている。はちきれんばかりだ。
(欲しい!)
 2週間のインターバルがミコを若干の欲求不満にしていたことは確かだ。セックスそのものよりも、会えなかったことの方がその要因としては大きいのかもしれない。ともあれミコは激しく屹立した真也を自分のものにしたい激情にかられた。

(ああ、早く頂戴)

 ミコは真也のGパンのボタンを外す。歯止めを失ってGパンは前に膨らむ。ミコが次に手を伸ばしたファスナーがおろしにくくなるくらいに。
 ミコは上から真也のペニスを押さえ込んだ。なんて固くて力強いんだろう……。ため息が出そうになる。
 ファスナーを下げると枷を失った獰猛な野獣はトランクスのゴムなどものともせずに先端をぴいんとはみ出させた。

 どろ……。
 ジュースをあふれ出させるミコ。短いキスだけで一切の愛撫を受けていないのに次から次へと粘液を吐き出すヴァギナにミコは戸惑った。トランクスの前の部分に手をかけてひきおろすと、真也のそれは堂々とミコの目の前にさらされた。

(す、ごい・・・、)

 見慣れたはずの真也のペニス。手で触れ、口で咥え、身体で受け止めたその回数は数知れず。にもかかわらず、猛り狂ったそれはおぞましくグロテスクだった。手を触れるとそれはドクドクと脈打っていた。

 ねえ、真也。旅に出ていたって言ったけれど、いったいどこで何をしてきたの?
 あたしのことを想いながらも我慢に我慢を重ねてこんなになっちゃったの?
 ううん、違うよね、きっと。
 誰か別のオンナと寝たんでしょう?
 それで、こんな風にさせられてしまったのね。

 真也の表情を盗み見る。真也の視線は自分のそれに注がれていた。真也自身も驚いているようだった。
 たとえあたし以外の誰かの手によって真也のモノが目覚めさせられたとしても、真也はあたしのもの。決して誰にも渡さない。ミコは真也の膨れ上がった先端部分を掌で包み込んでぐりぐりと愛撫しながら、カリの裏側を指先で執拗にこすりあげた。ここが真也の一番喜ぶ場所。
 真也は見事に反応して粘液をほとばしらせる。溢れ出した粘液をミコの掌が先端部分に塗りつける。滑りが良くなりますます感度を上げてゆく真也。目を細める真也。半開きになった唇からは官能が漏れる。

「気持ちいい?」
「ああ、気持ちいい、気持ちいい。ああ、気持ちいいよお」
 切なげに「気持ちいい」を繰り返す真也にミコの膣はキュウっと締まる。
(男の子の感じてる顔って、セクシー……)
 太腿をラブジュースが伝って流れていく。
 こんなに短時間に、しかも大量に濡れたのは初めてだ。

(欲しい。もう、欲しい。がまんできない……)
 ミコの肉体はもう何時間も愛撫され続けたかのようになっていた。
 ミコは真也のペニスから手を離し、中腰のまま真也に近づいた。ペニスの真上にまたがって、ゆっくりと腰の位置を下げる。ペニスの先端が股の間に触れる。自分が上になっているというのにミコは真也のペニスに重量感を感じた。

 ぬぷり……。
 膣口が押し広げられ先端部分が入ってくる。

 ああ、やっぱりいつもよりも太い。
 穴の中がいっぱいいっぱいになって、なおも引き裂かれる感じ。
 しかも強烈に締め付けてようとしている自分がいる。
 若干の痛みを伴うほどだ。けれど愛液は十分すぎるほど分泌されている。

 にゅぷ、ちゅびゅ……。
 真也の感触をわずかばかりも感じ損なってはなるまいと必死になってペニスにまとわりつく膣壁。それをこじ開けるように奥へと割って入る真也。まるで異物同士が溶け合おうとしているかのようだった。脳天まで駆け抜ける官能にミコは思わずのけぞってしまった。
 そのまま後ろに倒れてしまいそうになるミコの背中に手を回して支える真也。ミコも真也の首と背中に手を巻きつける。

(そうだ……、コンドーム……、危ない日なんだけどな……。……ああ、もういいわ。このままで。……思いっきり出されたい。あたしの中で……)

 いつのまにかミコの腰に添えられた真也の手。それにコントロールされるようにミコは腰を浮かせたり沈めたりする。
 いや、ミコが一方的に真也の求めに応じているのではない。真也もまたミコの腰の動きに呼応していた。
 芯棒がミコの中心を突き上げては引く。
 ずりゅ、ずりゅ、ずりゅ……。

 これまでになく怒張した真也と、やはりこれまでになく裂き広げられたミコ。未経験、未開拓の地へ誘うのは、二人が出す大量のラブジュースだった。
 絡み合い、溶け合い、そして反発しあう性器は、真也とミコをどんどん快感の極地へと引きずり込んだ。

 性器とは肉体の一部のはずなのに、まるで肉体の全てが性器と化したように、細胞の隅々にまで恍惚が染み渡り、二人はほぼ同時にイッた。
 どん!
 身体の奥深いところに熱いものが撒き散らされるのをミコは感じた。
 どん! どん! どん!
 ペニスがミコの中でひきつけるように反る。その都度、真也は精液を放出した。子宮口を叩きつけているに過ぎないザーメンが、身体の中心に注ぎ込まれているかのようだ。
 どん! どん! どん!
 さっきイッたばかりなのに、ミコは潮を吹きながら続けざまに2度3度と昇天した。

 

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