Boy Meets Girl
「side TACT」

2.前夜
 
 僕はかつての人類が月を見上げたように、天井のガラス越しに青白い旧地球(オリジナル)を 見上げていた。
 新地球(レプリカ)での生活しか知らない僕。
「ねぇ、お父さん。おじいちゃん、昔"オリジナル"に いたんだよね?」
 父さんは何も答えなかった。

 卒業試験は無事通過したらしい。 合格した希望者だけが付与される、"旧地球(オリジナル)滞在一週間"の渡航用の許可メールが画面に映し出される。待ちに待った知らせが飛び込んできたのだ。

「あんまり、あっちでの生活に首を突っ込むなよ。これは観光だってコトを忘れるな。お前は観光客だってコトを」
 判ってる……判ってるって父さん。 僕は"観光"に行くだけだ。

 移住した者と残った者。
 同じ人間なのに「何が僕達を隔てている」のか? 僕の胸は先生に聞けない疑問で膨れ上がってるんだ。

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