ネットナンパ師“スケベガオ”の
今宵のベッドはキミと共に

【3】 楽しいメール。世間話とシモネタの比率は?


 セックスフレンドの存在は、男にとっては憧れだ。
 海ちゃんと定期的に会うようになって、「俺には、そういう女がいるんだ」と思うと、じんわりと喜びが込み上げて来た。
 最初は「海、28歳、処女、焦ってます」のプロフィールにビビったが、会って良かった。まずは会わないことには始まらない。

 ところで、セフレは一人いれば、十分なのか? ネット上の体験告白を読めば、複数名と愉快に交わっている連中の存在だって確認できる。
 海ちゃんとだって、携帯番号とメアドを交換しているだけで、お互い本名すら知らないわけで、いつ終焉を迎えてもおかしくないのだ。

 もっとイイオンナに出会えるかもしれないし、ここは出会い活動は継続しておくべきだろう。と、冷静に考えたわけでは、決して無い。この頃の僕は、ネット上での交流が楽しくてしかたなかったんだと思う。

 実はネットもリアルも同じで、「女、欲しい〜!」とギラギラしてたら、女性は寄ってこない。
 既に一人ゲットしている僕は、ギラギラしてなかったんだと、今なら分析できる。

 広告があり、サクラも多い無料の出会い掲示板だけど、相手がサクラだとわかっても、「こんちくしょう!」とは思わなくなった。冷静に数少ないホンモノの出会いや交流を求める女を探すことができるようにもなった。

 では、ネット上で女の子たちと何をしていたのかというと、お喋りなのだ。
 食べ物や旅行の話、好きな音楽や本のこと、そして日常生活の話題まで、ネットだと案外、照れずにマジで語り合える。だから、時には、政治や経済の話まで。
 もちろん、シモネタも大有りだ。アベレージにして1/4くらいだろうか。でも、ギラギラしてるわけじゃない。

 経験者ならわかると思うけれど、下心の無い純粋のシモネタって、ホント、楽しいよね。

 海ちゃんと出会う前は、「お相手探し」が目的だったから、下手な鉄砲を撃ちまくったけど、今はそうじゃない。話していて楽しい相手だけと続ければいい。
 自然と相手は絞られて、その絞られた相手とはどんどん仲良くなってゆく。

 そんなわけで、ふるいにかけられて残ったのは、空ちゃんと雪ちゃんの2人。メッセージのやりとりはどちらもシモネタ大爆発だし、僕のエッチにも興味を持ってくれている。
「こりゃあイケルんじゃないか」と誘いをかけてみた。

 もちろんこれで、すんなりコトが運んだら、読者サンにとっては何にも面白いことはない。かといって玉砕した話を書いても、筆者の恥をさらすだけだ。では、どうなったか。

 なんのことはない。まず、空ちゃんは、玉砕。ていうか、あっさり話をはぐらかされた。
 会話ですら、女の子は話をはぐらかすのが上手。
 ましてメールのやりとりなんて、その部分は無視して、そうでない話題にだけ反応してレスすりゃいいんだから、こんな簡単な話はないよね。
 おまけに、「ネットからも去ります」なんてメッセージが届いて、間もなく彼女のプロフィールページは消滅した。

 一方、雪ちゃんとは、どうなったか。
 彼女は人妻で、旦那とはレス、夜に抜け出してセフレと逢瀬を重ね、でも他に本当に好きな人もいるという不埒な子なのだ。その本当に好きな人にも、彼女からおねだりして、たまに抱いてもらっている様子だった。
 言外に、「アナタとも寝てみたい」が滲み出た文面も多かった。定期的にセックスする男が増えることには抵抗がないようだった。でも、決して不特定多数と寝たいと思ってるわけではなく、そういう彼女の心情がメールのあちこちから伝わってきて、むしろ好ましい女に思えた。惚れた、と言ってもいい。

 だから、というわけではないが、「会いたい(やりたい)」と誘いをかけた。もちろんOKしてもらえると思っていたし、断られるにしてもやんわりで、押していけばいずれ……、と思っていた。

 しかし、彼女からの返信は痛烈だった。
「匿名のネットで女を口説くなんて、卑劣。サイテー! 悔しかったら、住所も名前も全部明かしてから、誘いなさいよ」


ぶるう浪漫: なるほど、メールによるネット上のお付き合いっていうのも、リアルと同じなんだ、今回の趣旨はそういうことなんですね。
スケベガオ: そうです。というより、リアルより高度なお付き合いが要求されるかもしれませんね。
ぶるう浪漫: と、いうと?
スケベガオ: リアルでは、直接の会話がなくても、学校や職場、その他いろいろな集まりの中での発言や行動、それから単純にファッションや髪型やら持ち物やらの外見とか、色々なことで、自分を示せるし、相手を見ることができるでしょう? それなら、会話は「あいさつだけ」でも、恋心や、やりたい心が募ってきたりする可能性があるわけです。メールでは、全てを言葉にしないといけません。
ぶるう浪漫: 確かにそうですね。でも、リアルでは外見が重要になりますよね。第一印象だけで、ペケくらっちゃうこともあるわけで。その点、メールでは外見という要素がない。
スケベガオ: もちろんそうですが、私のようにもともと外見に自信が無ければ、いざ会うときだって、会った瞬間に断られたらどうしようとか思うわけです。だから、外見のハンデを乗り越えるほどの魅力を、メールだけで相手に感じさせないといけません。
ぶるう浪漫: かなりハードル、高そうですね。
スケベガオ: 高いですよ。でも、リアルより有利な点もある。
ぶるう浪漫: たとえば?
スケベガオ: リアルタイムの会話と違って、失言が予防できるんです。
ぶるう浪漫: ああ、なるほど。
スケベガオ: こんなこと書いたら(相手が読んだら)、傷つかないだろうかとか、不愉快な思いをしないだろうかとか、自分のことを誤解しないだろうかとか、最大限に注意を払いました。書き終えたら、何度か読み返して、書き直したり、結局、削除したりとか、相当時間をかけました。
ぶるう浪漫: 大変な手間ですね。リアルだったら、ナンパしてお酒のんで、そのままホテルとかもアリだから、リアルの方が簡単なような気がしてきましたよ。
スケベガオ: どうでしょうか。手間のかけどころが違うだけだと思いますけれど。
ぶるう浪漫: そうですか。他にメールで苦労したこととか、注意すべき点なんかは、どんなことがありますか?
スケベガオ: 話題のバランスでしょうね。相手の投げかけに対してちゃんと返事をしなくちゃいけないけれど、それだけじゃ飽きてきますし、ひとつの話題はいずれ終わります。だから、新しい話題も提供しなくちゃいけない。相手が提供してくれればいいですが、自分からも投げかけを常にちょっとずつしていくということです。返事を期待しない「今日の出来事」的な雑談をしたり、相手が重くならない程度の日常の愚痴なんかも混ぜると、相手は親近感を抱いてくれますし、ちょっとした冗談……、それも相手を落としたり、自虐的なものも含めたりして、自分たちをネタにする必要があります。基本的に共通の話題っていうのが、アナタとワタシだけですから。
ぶるう浪漫: 話題を次々ふっていくのは、大変ですね。
スケベガオ: だから、政治や芸能なんかの、ニュースネタを取り入れます。相手が絶対に興味を持っていないだろうなってことも、丁寧に説明します。例えば、自分が好きな歌手のことなんかは、その魅力を語るわけですね。
ぶるう浪漫: エロネタはどうですか?
スケベガオ: 大切ですね〜。エロくなればなるほど、真剣に会話をすることを心がけますよ。どうして妻以外の女とエッチできるのか、するのか、なんてことは、正当化するのではなくて、自分と深く対話をして、ちゃんと自分の納得する答えを出すわけです。すると、相手の子も、どうして旦那以外とするのか、ちゃんと考えてこたえてきます。こういうやりとりを繰り返していると、まだ会ったこともないのに、既に何度も身体を重ねたみたいに、いろんなことが2人で共有できるんです。だから、会えばすぐエッチというか、エッチ前提に会う、ってことになるんですね。
ぶるう浪漫: なるほど。でも、そうやって段階を踏んだはずなのに、空ちゃんは玉砕、雪ちゃんからは「最低」呼ばわり。苦労が報われなかったわけですね。
スケベガオ: いや、雪ちゃんとは、ものすごく仲良しになりましたよ。
ぶるう浪漫: つまり、ヤッタんですね?
スケベガオ: はい
ぶるう浪漫: 最低呼ばわりされて、どうやって挽回したんですか?
スケベガオ: まあ、それは次回以降に。


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